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Date: Wed, 2 Feb 2000 15:59:47 +0900 (JST)
From: ソード <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 17823] [WP01P]: 『司るもの』暫定まとめ
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200002020659.PAA60369@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 17823
2000年02月02日:15時59分46秒
Sub:[WP01P]:『司るもの』暫定まとめ:
From:ソード
こんにちは、ソードです。
WPの更新も滞っておりますが……ぼちぼち、動きたいなぁ……という
欲求だけはあります。
初の本編(笑)の『司るもの』ですが、まとめましたので、思い出す意
味も含めて流します。
なお、
http://www.trpg.net/user/so_do/file/tukamono.txt
に、まとめ版をアップしておきますので、参照ください。
(今回まとめ分は明日になれば更新できます)
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エピソード 『司るもの』
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登場人物
月島直人(つきしま・なおと)
喫茶店・月影の店長にして、終末の住人組織『月影』のマスター。
物体の再生と崩壊を操る物体操者だが、結界の能力を重視し、そちら
の方が専門。
高藤 一明
葛城水稚
東風吹子(こち・ふうこ)
「音」による異能を使う少女。コクシチョウなど、堕とし子を嫌っている。
何故か結界に入る事が出来ない(それ以外は可能)。
夕暮れ
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夕暮れは、奇麗だと思った。
よく、“都会の夕日は色が無い”といわれるが、ここからの夕日は、そんな
事はない。
ビルの影が生き物のように伸び、徐々に東京を夜へと塗りつぶして行く。
それを見ている多数の人。この展望台は、日没が過ぎてからも人が絶える事
はない。閉館時間まで、まだまだあるのだ。
意識の集中……形状の形成……拡散。
展望台には、私のほかに人がいなくなる。
『結界』と、呼んでいる能力。私が、普通でない存在の証し。そして、私の
周囲を不幸にする忌まわしき力。
時間は、数分。目の前の夕日は沈む事を止めているが、少し集中すれば、本
当の夕日が沈んで行くのが分かる。
私は、どちらを見ていたのか。沈み行く夕日か、動きを止めた夕日か……。
少年 :「もういいんじゃない?」
その声に、振り替える。私の弟だ。私は、さっきのこもった目で弟を見つめ、
いわれるままに結界を解いた。
少年 :「さ、今日はもう帰ろうよ」
言われた通りに、弟のあとをついて展望台を降りる。
一日目は、終わった。あと……。
発見=月影にて=
----------------
月影から、東京タワーが見える事はない。
しかし、直人は夕暮れ時に結界を感知する事ができた。
視覚よりも、嗅覚や触覚に訴えるような感覚。結界の感知方法は、人によっ
てさまざまである。直人の結界の感知は、五感全てが反応するように訓練され
ていた。
優 :「マスター。今のはっ」
優は、コーヒーカップを洗う手を止めて振り返り、カウンターの客に聞こえ
ないように声を掛ける。
直人 :「ええ。ちょっとここ任せます」
優に一言告げる。優は戸棚の引出から地図を取り出し、直人に渡す。裏口か
ら出て、方向と距離を確認した後、大体の地図と照らし合わせる。
直人 :「(東京タワーか……)」
場所が確定できたところで、結界は消えたようで、直人の感覚では感知でき
なくなる。
直人 :「(消えた……今からじゃ、術者に会う事はできない
:か……)」
それでも、調査を依頼するため、電話を手に取る。
住人の組織『月影』のメンバーに連絡を取るのだ。
何人かに同じ依頼をする。生活、職業、能力が違えば、見るところも違って
くる。
直人 :「はい、お願いでします。報告は店まで……はい。お待ち
:しています」
最後のメンバーへの電話を切り、カウンターに戻る。
あとは待つだけ。仲間を信じて、待つだけである。
屋外リング
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音の割れたスピーカーから安っぽいテーマ曲が流れる。
リングアナ兼マネージャの太刀光がライトバンのエンジンを切ると、ようや
く音が途絶えた。
太刀光 :「久しぶりの東京興業が青空興業かぁ」
高藤 :「……一回りしおわったのか?」
太刀光 :「終わったッスけど。練習いいんスか」
高藤 :「リング設営手伝ったろうがよ。だいたい練習なんてもん
:は人に見せるためにやるんじゃねぇんだ」
太刀光 :「はぁ、それはそうッスけど……ここで怪我されると困る
:んすよ。次期シリーズのカードが」
高藤 :「次期シリーズなんて組めんのかよ」
太刀光 :「社長はその気ッスよ。最終戦のデスマッチは四面松明地
:獄ピラニア五寸釘ボードノーロープ有刺鉄線電撃地雷デス
:マッチだそうです」
高藤 :「あのサド社長……。自分も上がるからってトンでもねぇ
:もん考えやがる」
ぼやいたその時、高藤は額の辺りにピリピリと何かを感じた。
見上げたその上には高くそびえる東京タワーの姿があった。
高藤 :「どれ、ちょっと体あっためてくら」
太刀光 :「二時間したら、売店の方頼んますよ」
高藤は応えなかった。
目を眇めて、何かを見ている様だった。
マンションのテラス
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日が暮れ出すと、都会の鳥達も塒へと帰り始める。
公園や街路樹……
ビルの屋上や駅を寝床にする鳥達も多い。
そんな野鳥の一群が、夕暮れの光の中を飛んで行く。
水稚 :「気を付けてお帰り…」
手すりに頬杖をつきながらつぶやく。
夜と昼の間…
纏っていた上着を脱ぐような、夜の街への移り変わり。
沈む夕日と共に顔を変えてゆくこの時間は、お気に入りの時間だ。
水稚 :「……ん…?」
幽かな違和感。
方角は……
水稚 :「…タワー…?」
電話 =吹子=
-------------
SE :ぷるるる……ぷるるる……。がちゃ。
吹子 :「はい、東風です」
直人 :「あ、吹子さんですか? 月島です」
吹子 :「あ、はい」
直人 :「東京タワーにかなり強力な結界が発生したのですが、何
:かしりませんか?」
吹子 :「東京タワーに? いえ、気付きもしませんでした……」
直人 :「そうですか」
吹子 :「その結界、そんなに強かったんですか?」
直人 :「はい、かなりのものでした。私よりも上かもしれません」
吹子 :「なら……、コクシチョウが集まってるかもしれませんね」
直人 :「そうですね」
吹子 :「今から東京タワーに行って調べてみます」
直人 :「お願いします。私は月影で連絡を待つ事にしますので。
:他の仲間にも、話してみるので“月影”の名前を出してみ
:てください」
吹子 :「はい。何かわかったらまた電話します」
直人 :「はい。……気をつけて」
吹子 :「では」
身支度をして家を出る。他に人はいないので遠慮はない。
吹子 :「東京タワー、か」
夜空を舞う小鳥
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電話を切った吹子はまず近くの公園へ向かっていた。この辺りでは一番緑が
多い所だ。公園に着くと奥の木陰に身を隠し、「翼が欲しい」を歌い出す。
彼女の能力は本来万物が持つ「波動」を感じ操るだけだが、あらゆる相互作
用の源である「波動」を操る事が出来れば原理的には不可能は無い。もっとも
彼女一人の出力などタカが知れているのだが、自分の「波動」を、他の生命の
「波動」と共鳴させれば、飛躍的に増大させる事が出来る。そのために木々の
多い公園に来たのだ。
吹子は歌いながら空に手を差し伸べ、ついで、ゆっくりと手を振り下ろし、
背を丸めた。丁度、手を背中側に伸ばして伸びをした姿勢のまま背中を丸めた
ような感じだ。その長袖に包まれた手がゆっくりと形を変える。袖に重なり合
う木の葉のような模様が浮かび、徐々に溝が深くなって遂には分かれ、羽毛に
なる。足の方も爪先立ちになり踵が上がり、蹴爪が生えてきた……。
やがて歌が終わった時、そこに居たのは一羽の小鳥だった。鳥は羽音をさせ
て空に舞い上がると、東京タワーめがけて飛び立っていった。
一夜
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東京タワーに、最初にたどり着いたのは高藤であった。
高藤 :「ちっ、いねぇかよ」
あたりを見回すが、夜景を見ているカップルぐらいしか目に入らない。
自分と同じ能力を持つ能力者。
みただけで、それと分かるならよいのだが……。
高藤 :「もう一回りしてみるか」
今度は、逆周りに回ってみる。タワーの展望台は、全周でどの方向でもみれ
るようになっている。通常は、経路を示す矢印のほうに歩くように指示される
が、この時間になると逆周りをしてくらいで咎めるものはいない。
高藤 :「やっぱな、気のせいの筈もないが」
子供 :「おじちゃん。なにかさがしてるの?」
突然、背後から話し掛けられる。慌てて振り向いたが姿は見えない。
考え直し、視線を下に向けると、小学生くらいの男の子が話し掛けていた。
高藤 :「あ、ああ……」
良いよどむ。「結界」を張れる能力者を探している……とは、言えない。言っ
ても信じてもらえないだろう。いや、この年齢なら信じてしまうかもしれない。
そうなったらなおさら質が悪い。
子供 :「なに探しているの?」
高藤 :「いや、ちょっと落とし物を……な」
子供 :「そうなんだ。僕も手伝ってあげよっか?」
高藤 :「いや……かまわねえよ。それより、一人できたのか?
:坊主」
子供 :「ううん。お姉ちゃんと。もう帰るんだ」
高藤 :「そうか、姉ちゃんが待ってるなら、早く行ったほうが良
:いぜ」
子供 :「うん、おじちゃん、またね」
そういうと、子供は手を振ってからエレベーターのほうに向かう。
エレベーターから出てくる人がいなくなってから、エレベーターに乗り込む
のが見えた。
高藤 :「ん?」
違和感。
タワーの展望台へのエレベーターには、あがっている間解説している添乗員
がいる。
その添乗員が、乗り込んできた子供を空気のように無視し、乗り込む客を待っ
ているのだ。
しばらくしてあきらめたか、添乗員はエレベーターを閉め、下に向かってい
た。
高藤 :「……きのせい……か?」
口に出してみても、違和感は消えなかった。
気になった。
高藤は下りのエレベーターが来ると飛び乗った。数人の観光客がいぶかしげ
に高藤を見る。無理も無い、くたびれたジャージ姿、ついさっきまでランニン
グをしていたような格好で東京タワーに上るような人間は普通いない。
高藤 :「(ちっ、早くつかねえかな)」
ドアが開くなり外に飛び出す。数人をはねのけたかもしれなかったが、気に
はしなかった。
周囲を見まわす。
少年が降りてから数分がたっている。姿は見えなかった。
高藤 :「見失っちまったか」
と、その時、一群の鳥が飛び立った。
振りかえる高藤の目に、増上寺の屋根が映った。
「鳥の歌」
---------
吹子 :「コクシチョウ!」
東京タワーについた吹子は案の定、数羽のコクシチョウを見つけた。
コクシチョウは彼女一人の起こした風にさえ脆くも砕かれ、光の粒子となっ
て行く。歌に惹かれて集まってきた鳥達と、『心の歌』を歌い出す吹子。
吹子 : 冬の空に白い羽を見つけた
: 夏の旅人の忘れ物
: 凍れる青空に漂うばかり
: 落とした人が取りに来るまで
:借りておこうか
:優しい思い出 楽しい日々を
:皆が取り戻すその日まで
: 私の身を飾っておくれ
: 必ずいつか貴方のもとへ
: きっと届けて見せるから
:(お願い。こっちへ来て。絶対に還して見せるから)
願いを込めて空に響かせる吹子。光が、白い羽となって降り注ぎ、彼女の羽
となっていく。吹子は、新たな羽を眼下の者達へ示すように大きく翼を広げて
しばらく滑空し、東京タワーの周りを一巡するとそのまま人目の無い所へ降り
立った……。
(題未定)
----------
東京タワーから増上寺までは僅か。
高藤は息を切らせない程度のランニングで増上寺の境内に入った。
夕暮れの境内には、巨大な山門が暗く影を落していた。
見まわす。鳥の姿は見失っていた。見当をつけた所はこの広い境内のどのあ
たりだったか。
高藤 :「ちぃ?」
何か。自分の中に響く何か。
腹の底に黒く澱となって沈んだ、あの「未来」。
失ってからずっと感じていた、今の自分と、それをとりまく世界への「違和
感」。
高藤 :「どこだ、どこだよ!」
見つけ出せば、取り戻せるかもしれない。
めぐり合えば、目が覚めるかもしれない。
失意と諦めの中で投げやりになって生きる日々は覚めない悪夢の様だったか
ら。
高藤は走った。あては無い。とにかくこの境内の中をくまなく探すほか無か
った。もう一度、あの感覚を感じたかった。
歌が聞こえた。
高藤 :「女?」
○遭遇−美女と野獣の場合−
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そこにいたのは一人の女性だった。美しい髪を頭の後ろで結ってまとめてい
る。少女と呼ぶのが相応しく思えた。
高藤は構わず声をかけた。
高藤 :「唄ってたのは、アンタかい?」
吹子 :「え!?」
驚いて振りかえる。人が居るとは思わなかった。いや、確かにさっきまでは
誰も居なかったはずだ。
吹子 :「あ……、すみません。うるさかったですか?」
高橋 :「いや、良い歌だと思ってね。何て歌だい?」
吹子 :「私が自分で作った歌なんです(全部聞けたはずないよね)
:ちょっと、歌ってみたくなって、人の居ない所で……」
高橋 :「そうかい?」
吹子 :「え?」
「この子は何かを隠している」そう感じた高橋は、とっさにそう言っていた。
高橋 :「いくらなんでも、こんな時間に一人で来ようなんて思う
:場所じゃないぞ、ここは」
吹子 :「…………(うつむく)」
高橋 :「(やっぱり……何か隠してるな)例えば、東京タワーで
:起きた事に関係ある、とか」
吹子 :「!」
かまをかける高橋に、そうと気付かず動揺を見せてしまう吹子。
高橋 :「やっぱりそうか」
どう切り出したものか、少々悩みながらも、それを気付かせないよう苦労し
ながら高橋は話しはじめた。
******************
では……また。