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Date: Fri, 28 Jan 2000 11:46:09 +0900 (JST)
From: 久志 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 17763] [MMN] 「弱者」
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200001280246.LAA68548@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 17763
2000年01月28日:11時46分09秒
Sub:[MMN]「弱者」:
From:久志
久志＠弱者です(おい)
てれっと霙の街をかいてみました。
昨日流した奴の続きです。
名無しだったお姉さんの名前と弟の名前が明らかに！
(たいしたこっちゃないです、弟出番なしだし)
[MMN]「弱者」
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「陽ちゃん…」
叔母さんの声がやけに遠くから聞こえているような気がした。
傾きかけた日が長い長い影を作って、あたしを頭からどっぷりと浸し
ている。
融が消えた。
その数日前に徴兵の命がきたばかりのことだった。
使い古されたテーブルの上に一枚の手紙が残されていた。ぽつぽつと
簡潔に書かれた手紙の一番最後。
『父さん、姉さん、ごめん』
あいつらしい、口下手でどうしようもないあいつらしい一言だった。
ああ、あいつは男なんだなとまるで他人事のように思った。
融を恨むことは……できなかった。
融には融の人生があって、想いがあって、あたしも知らない恋人がい
て、兵役から逃げてでも家族をすべて捨て去ってでも一緒に生きていた
い恋人がいて…
融は去った。
本当にどうしようもない時は……ただ呆けるだけだと。誰かが言って
いた記憶がある。あの日のように……悪夢が降り注いだ日の時のように。
すべてを融のせいにすれば、どんなに楽だろう。
すべての不運を融に押しつけていれば、どんなに楽だろう。
でも、あたしにはできなかった。
もし、あの人が生きていたら？
あの人と一緒だったら？
あの人が逃げようと言ったなら？
あの人と一緒だったなら、あたしもきっと融と同じくあの人を取った
だろうから。
否定なんてできはしないだろうから……
「陽ちゃん、冷えるからお家にお入りよ」
土に汚れて冷え切った手はもう感覚がなくなってる。
「陽ちゃん」
父さんが人一倍弱い人間だったとは思わない。
東京に落とされた爆弾、慣れ親しんだ地元の壊滅、知人達の死、追い
立てられるような日々の生活。
……そして、母の死、融の……逃亡。
そのすべての事に耐えるのに、すべての事を抱えて生きていくのに。
父さんは……ほんの少しだけ弱かっただけなのだ、あたしはそう思っ
ている。
融が逃亡して三日、日が昇ってきても父さんは起きだしてこなかった。
不審に思った叔母さんが気づいた時には、もう既に何もかもが手後れ
だった。
「陽ちゃん……」
目の前の土まんじゅうを眺めながら、ふと、一度だけ、父が泣いた時
のことを思い出していた。
まだあたしが中学に通っていた頃、父さんの職場の友人で家にも何度
か遊びにきたことのある人がいた。職人気質な人で、父さんと気があっ
てよく一緒に飲んでいたという。
あたしが高校に入った頃、その人は家庭の悩みを苦に自殺した。
父さんはただ黙っていた、連絡を聞いた時も葬式にいった時も。
あたしが気づいたのは、夜中トイレに立った時のことだった。
台所で一人、声を殺して父さんは泣いていた。
あたしは気づかれぬように、耳を押さえてその場から立ち去った。
父には父の友人がいて、
融には融の恋人がいて、
あたしにはあたしの大切な人がいて……
「陽ちゃん、家にお入り、ね、凍えてしまうから」
「……はい」
それでもあたしは生きていて、それでも生きている限りは立ち止まる
こともできなくて。
あたしは強くなりたい。
ほんの少しの弱さにも負けないほどに。
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きる
あーなんかめちゃくちゃだよぅ
とりあえず不幸てんこもりだねぇ(--;)
＃おねーさんの名前は「陽子」さんです(それしか決まってない)