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Date: Thu, 27 Jan 2000 18:05:43 +0900
From: Masaki Yanagida <yanagida@gaia.fr.a.u-tokyo.ac.jp>
Subject: [KATARIBE 17753] [HA06][EP] 『座敷たぬき』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <10001270905.AA01330@avalanche.gaia.fr.a.u-tokyo.ac.jp>
X-Mail-Count: 17753
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EP:『座敷たぬき』
登場人物
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末夜雅俊(まつや・まさとし)
:一十の先輩。たぬき屋敷に引っ越してきた、仙道士。
一十(にのまえ・みつる)
:大学院生兼修験者。末夜の後輩。たぬき屋敷を斡旋した張本人
たぬき :たぬき屋敷の主。今回のEPで子供と発覚した。
研究室の電話から
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SE :「てるるるるる、てるるる」
一十 :「あ、末夜先輩。後輩一です」
末夜 :「うむ?なんの用だ、荒廃し切った一」
一十 :「いま、お金が無いんです」
末夜 :「お前から金があったと聞いた試しが無いぞ」
一十 :「引越し蕎麦が食べたいです」
末夜 :「……で?」
一十 :「贅沢は言いません、盛りでもかけでもどっちもOK。き
:つね、たぬきならもう一回くらい引越しの相談に乗ります
:よ」
末夜 :「きつねはだせんがたぬきは出せるな……」
電話の向うでかすかに悲鳴が聞こえた。
一十 :「じゃ、今から行きますね」
末夜 :「あ、おい、こっちの都合も……。切れたか。全く」
たぬきの手も借りたい
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SE :「ピンポーン」
一十 :「ども、忠実なる後輩、一ただいま参上です」
末夜 :「来たな、荒廃一」
一十 :「はい、後輩一です」
末夜 :「そうか、荒廃一。たのみもせんのに良く来てくれた荒廃
:一、嬉しいよ荒廃一」
一十 :「なんか、歓迎されてる気がしないんですけど……」
末夜 :「気のせいだ、荒廃一。それはそれとして、しばらく待て」
一十 :「はぁ、ご飯が今日中に食べられるならいくらでも待ちま
:す」
末夜 :「実は、餃子を作って居ったのだ。包む手がたりんでな」
そう言いながら、綺麗に片付いた廊下を台所に向かって歩く。
あちこちにダンボールに詰められた古本があるのは以前通りだ。
一十 :「たぬきの手を借りるわけには?」
末夜 :「ニラの匂いが嫌だとか言ってる。化け難くなるとか」
一十 :「はぁ、そんなもんですか。包むぐらいなら手伝いますけ
:ど」
末夜 :「じゃぁ、台所は狭いから居間で包んでくれ。先に行って
:おけ。玄関から入って右手にある」
一十 :「うーす」
子供だから四畳半
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一十 :「餃子、餃子、ただ飯餃子(るんるん)」
いい年をした男子が餃子でここまではしゃげると言うのも情けないものがあ
る。
案内された部屋は四畳半の和室だった。
一十 :「なんだ、あの不動産屋敷金取ってるなら畳ぐらい変えて
:もよさそうな物なのに」
踏み入れる。ふわふわとした感触がする。畳が古いせいか根太が腐っている
のかしているのだろう。
一十 :「それでも、床暖房とは気が利いてるな」
確かにそこはかとなく暖かい、ただし、少し湿気ている様な気もする。
座る。
ふわり、というかふにゃり、と言うか。頼りなげな感触。
一はお茶の入った湯のみに手を伸ばし、その手を止めた。
しばらく、辺りを見まわす。
日焼けて、茶色く変色し毛羽立った畳、古ぼけた座卓。特に何も変わった所
は無い様に見える。が、
一十 :「なにか、違和感が……」
指を伸ばして畳の毛羽を何気なくちぎる。
SE :「ぶつっ」
部屋(?) :「ぶるっ(汗)」
SE :「ぶつっ」
部屋(?) :「ぶるぶるっ(汗)」
一十 :「せんぱーい!、この家四畳半間ありましたっけ?」
末夜 :「いや、ないぞ」
餃子の餡と皮を盆に載せて末夜が入ってくる。
一十 :「そうですか」
含みのある表情で一は、わざと大きく畳の毛羽をむしった。そして座卓の上
の湯呑を示す。
部屋(?) :「ぶるぶるぶるっ(汗)」
末夜 :「ふむ」
うなずくと末夜は、廊下に盆を置いて言った。
末夜 :「やぁ、一君。わざわざ来てくれてありがとう。ところで、
:そのお茶は冷えてしまっているね(にやり)」
一十 :「そうですね、末夜先輩(にたり)」
末夜 :「御代りを淹れてあげよう」
一十 :「思いっきり熱いのを下さい」
末夜 :「待っていたまえ」
数分後、悪魔的な笑みを浮かべた末夜がしゅんしゅんと湯気を立てる薬缶を
持って来た。
末夜 :「一君、鍋敷きは無いかね?」
一十 :「ないですけど、そのへんの畳の上なんかどうです?」
末夜 :「底が焼けてるからねぇ、畳に焦げがつくかも知れない」
一十 :「でも、どうせこんだけ変色した畳ですから(にやり)」
末夜 :「そうだね、じゅっと(にやり)」
部屋(?) :「(冷汗、滝涙)」
末夜 :「一君、僕の気のせいかな、座卓がいやいやをしてる様に
:見えるんだが」
一十 :「先輩、床の間の軸が涙ながしてますね」
末夜 :「五つ数えるうちに出てきたまえ」
一十 :「さもないと、じゅっ。だよ」
笑う二人。
と、部屋がひっくり返り、二人は縁側に投げ出された。
薬缶がひっくり返り、こぼれた湯が湯気を立てている。
二人の前には土下座をするたぬきが一匹。肩が震えているのは泣いているか
らのようだ。
たぬき :「(……すん、……すん)親からもらったこの八畳敷き。
:薬缶の焦げあとつけてやるだなんて。(ずずぅっ)……。
:こんなたぬき使いのひどい人は初めてです。
: 御暇をいただきたく……」
末夜 :「うむ、少し悪ふざけが過ぎたか」
一十 :「向うが先でしょう」
末夜 :「こっちもいじめすぎた。幸いにこっち二人も小便呑まさ
:れた訳でもない。これに懲りたら、そういう風に人をだま
:すのは相手を見てからにするんだな」
たぬき :「(……すん、……すん)それにしたって、こっちは大事
:な八畳敷きの毛までむしられて、痛いのなんのって」
一十 :「八畳敷きとは大げさな?四畳半じゃないか」
たぬき :「いやそれは……」
末夜 :「子供だから、大きさが足りなかったんだろう」
一十 :「ああ、なるほど」
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うぅっ、オチが弱いかも。
チェックよろしく。
D16
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