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Date: Fri, 21 Jan 2000 13:13:05 +0900 (JST)
From: 勇魚 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 17611] [HA06P]: 「ほろ酔い月夜」
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200001210413.NAA85015@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 17611
2000年01月21日:13時13分05秒
Sub:[HA06P]:「ほろ酔い月夜」:
From:勇魚
こんにちは、勇魚です。
踊って、へれぷうになって、帰る途中に考え付いた話。
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「ほろ酔い月夜」
ひとかげ、ふたつ。
足取りが、軽い。
軽いというより、ふわふわと浮いている。
直紀 :「ユラさんでも、酔うんだね(^ ^;;;」
ユラ :「酔うつもりで、飲んでるから」
アルコール、ってよりは、場酔いかなぁ、と、ちょいと上向き加減に
ユラは付け足した。
ユラ :「それにしても、久しぶりだよねぇ、スタジオで会うの」
直紀 :「で、久しぶりにまともなお稽古の時間に来たと思ったら
しっかり飲みにまで参加してるし」
ユラ :「え、だって久しぶりなんだもの」
そのまま、笑い崩れる。
…会話になっていない。
白々と風が吹き抜けて、遅い夜道、二人して首を竦めた。
直紀 :「それにしてもみんな、よく飲んだね」
ユラ :「なんとか照明下見まで漕ぎつけたもんねぇ。本番まで、
あと十日少しでしょ。ずーっと張り詰めてきてたから、
ここらでゆるめないと」
直紀 :「公演、かぁ。大変そうだけど、いいなぁ」
ユラ :「だいじょぶだいじょぶ。続けてればそのうち回ってくるっ
て…とりあえず、夏の発表会からだね」
直紀 :「うんっ…初舞台、だねっ」
ユラ :「そうそう、で、初共演、だよねっ」
ほら、あそこの組んで回るとこ。
そう云いながら、ユラはついと道の真ん中に滑り出した。
体重を背中に預け、傾けた肩先を軸に、くるりと回る。
身体が描く渦の中から、のびる花の茎のように。
腕。手首。指先。その先に、月。
一瞬。
笑い声と一緒に、しなって張り詰めた線をくしゃっと崩した。
直紀 :「………きれいなんだけど」
そこ道のど真ん中で。
昼間なら車道なんだけど。
ユラ :「だって直紀さんだって誰も見てないとこで三拍子で飛んで
るでしょ」
きっぱり。
指を突き付けて、ユラはにぃ、と笑う。
直紀 :「…何故それをっ…さては…」
ユラ :「甘い甘い、そのうち電車待ちのホームで足が踊り出すから」
直紀 :「…そんなこと…」
ユラ :「さては、図星だな」
直紀 :「でもあたし会社の屋上で踊ったことないもんっ」
ユラ :「それは夜中に会社にいたことがないからだよ」
身をよじって笑いながら、
車の途切れた道の真ん中にもう一度滑り出そう…として。
ユラ :「あれ」
指差した先を。
直紀 :「犬…にしちゃぁ…」
白い軌跡が。
ゆったりとしなやかな弧を描いて。
角のむこうに、消えた。
ユラ :「見た、よね」
直紀 :「うん」
ユラ :「…ふむ。それにしても」
きれいだった。
ふんわりとした手触りの、強さ。
ユラ :「あんなふうに…動きたいよなぁ」
遠吠えの形に喉を反らせて、いきなり、跳んだ。
ユラ :「…っと…」
直紀 :「…だから…酔ってるって(^ ^;;」
立ち上がった膝を払って、ユラは苦笑いした。
ユラ :「跳べるつもりになりたくて、飲んでたかなぁ」
直紀 :「それ、悪いお酒だよ」
ユラ :「…そうかも(苦笑)」
仰いだ月はほろ酔いの目にやわらかく揺れて。
直紀 :「帰ろ」
ユラ :「…そだね」
遠離る影は、くっきりと落ちて。
それぞれに、どこかで繰り返されているはずの、白い、柔らかい、強い弧を
思っている。
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…というわけで。
ごんべさん、白雲さん、一瞬お借りしました。
なおなみさん、一応OKいただきましたんで、
こんなふうに同じスタジオにしてみました。
修正などありましたら、よろしくお願いいたします。
ではまた。