[KATARIBE 17466] [HA06N] 『妖狐の帰還』

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Date: Thu, 13 Jan 2000 03:30:27 +0900
From: Paladin <paladin@asuka.net>
Subject: [KATARIBE 17466] [HA06N] 『妖狐の帰還』
To: kataribe-ml@trpg.net
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 ぱらでぃんです。

 ごんべさんのネタにあてられて、なぜか環の登場シーンを小説風味で書いて
しまいました。


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小説『妖狐の帰還』
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本編
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 鈍色に空が曇った冬のある昼下がり、近鉄吹利駅に一人の少年が帰ってきた。
一人で持つには大きいサイズの箱を持った少年の名は、宇多環という。
 少年は近くの電話ボックスに入ると、胸のポケットから携帯電話を取り出し、
かけ馴れた番号をダイヤルする。
「姉さん?うん、今着いたから」
 実家に連絡を入れた後、駅を出て家へと向かう。心なしか旅だった頃よりも
妖かしの気が濃くなっているようにも感じるが、昔はこれよりも更に濃かった。
どうしたものか。
 まあ、別にそんな事はどうでもいいのだ。早く家に帰って『これ』を試して
みなければ。
 結構かさばるものなので、宅急便にすれば良かったなどと今更後悔しながら、
実家へと続く春日の丘へと向かって行く。
「……?」
 うんうん言いながらもゆっくりと歩を進めて来た環だが、先ほどから何かを
感じていた。記憶の迷宮に封印したはずのあの忌まわしい臭いがかなり近くに
感じられる。間違いない。
「犬」
 口の中で小さく呟くと、倍の速さで歩き始める。
 しかし後ろに続く気配も同じだけ速度を上昇させて、こちらを追ってきてい
る。
『後方に敵影、全速離脱!』
 頭の中では何故か意味不明のセリフがリフレインし、鼓動もどんどん速度を
上げてきている。しかし、全速離脱などしようものなら敵の思うつぼなので、
ぐっと堪えて早歩きの状態を保ち、敵の興味が他に移るのを待つ。
 そして、無限とも思われる時間が過ぎた。
「おや、シロ。久しぶりだねぇ」
 救世主の降臨である。ただの愛犬家の老人でも犬を止めてくれれば救世主な
のである。老人が犬を引き留めてくれている間に、できるだけ犬との距離を引
き離し、一気に走る。荷物がつっかえて走りづらいが、とにかく走る。
 大きく曲がる生け垣の道が見える。もうすぐだ。
 生け垣を曲がりきった所でスピードを落とし、よたよたと門を開いてその中
に入り、閂を下ろしたところで環はようやく息を吐いた。暫くあえいでいると、
戸ががらがらと開き、中から一人の女性が出てきた。環より少し背が高いが、
体格はいい感じである。
「おかえり。またアレ?」
「……とにかく……それ、運んどいて……」
 環はそのまま、よろよろとおぼつかない足取りで家の中に入って行った。
「……っと」
 女性は環が大切に持っていた箱を無造作に持ち上げ、家に入る。
 がらがらと戸が閉まる音を最後にまた、辺りを静寂が覆った。

(了)


登場人物
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   白い犬(本名未詳):並外れた巨躯と美しい毛並みを持った白い犬。
             妖怪や魑魅魍魎の類を捕食するらしい。

 宇多 環(うだ たまき):犬が過剰な程苦手な妖狐。
             怯えようが尋常ではないので家族からも呆れられ
             ている。

 宇多 楓(うだ かえで):環の姉。詳細不明。


解説
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 宇多環が吹利市へ帰還して、家に帰り着くまでの大冒険です。


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 まあ、ようするに環はこれだけ犬が怖いって感じをパニックに陥っている
さまから見てもらえれば幸いです。

 楓は、とりあえず家の人ということで出してみました。力はあるみたいです。
その他は、全然設定していません。

 そんな感じです。

 それでは、また。


Mail:<paladin@asuka.net>                ・.
 Web:<http://www.asuka.net/~paladin/>   ●・  ぱらでぃん
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