[KATARIBE 17451] [MMN] 「二番窓口」

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Date: Wed, 12 Jan 2000 14:00:17 +0900 (JST)
From: 勇魚  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 17451] [MMN] 「二番窓口」 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200001120500.OAA69169@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 17451

2000年01月12日:14時00分17秒
Sub:[MMN]「二番窓口」:
From:勇魚


ども…参戦早々大勘違いを露呈した勇魚です。
なんかもー、こっぱずかしくって逃げちゃいたいんですが、
そうするのも悔しいんで。

今度こそ、一般人の、話、です。たぶん。

******************************

「二番窓口」

 新垣観光、の字を青く抜いた看板が、ばたんと風に煽られた。台風一過、
磨き上げられた空を吹き残された風がごうごうと渡っていく。

「あああ、ひっどい風だった」
「樹、ずいぶんだめになっちゃったねぇ」

一晩にして吹き上げられた潮で茶色く変色したフェニックスの葉先を眺め
ながら、ぼんやりと海面を見ている。港の中だというのに目の前の船は上
下に大きく揺られている。

 また、看板が煽られ、ついでにきしむような音をたてた。

「おかあさん、あの看板、もう駄目だよ。はずそうよ」
「だめだめ、あたしたちはちょっとでもかわりたくないんだよ」

 看板を変えたらさぁ、ついでに会社の名前も変えたほうがいいような感じ
になるじゃないか。今さらあたらしく、「観光」なんてくっつけた看板、
どこがつくるもんかね。

「…そか。新垣観光、の…」

 護岸の脇の小さな船会社の受け付けに、ぼんやりと座っている。
 退屈そうに。こともなし、という顔で。
 うちから出る船は一日四便。西表に一本。竹富に二本。小浜に一本。
 それくらいで、用が足りるようになってしまった。もちろん、観光で乗る
人なんか…いない。
 昔に比べれば、全然、いない。

「本島…どんな感じなんだろね」
「…たっいへん、さぁ」
「大学、行きたかったな」
「行ってたら、生きてないさ」
「えー、うち琉大に行くはずだったもん」

 繰り言。
 なまぬるい潮の中に溶けて、消えて行く。
 こうやって、繰り言を言っているのが、あたしの仕事。

「さと子ねえさん」
「あ、」
「二番窓口、お願いします」

 ドアの向こうから、声だけよこして、また足音は消える。
 はい、と返事をして、カウンターの下に無造作に積み上げられたノートの中から、
一冊の帳簿を抜き出す。
 きっちりと並べられた数字。今日のぶん…は。

 目の前で、西表からの便が入港してくる。
 やがて、人が少しだけ降りて。
 離島からの便にしては多すぎるくらいな量の荷物が積み降ろされて。

 うち、一人が、まっすぐ事務所に入ってくる。

「二番で」
「…はい」

ちゃんと、二番窓口で、受ける。
窓口の名前を指定する客が…「そういう客」。
ふつうのやりとり。ふつうの受け渡し。何気なく受け渡される小さな紙片や鍵。

「お疲れさまでした」
「西表は…台風の被害がひどくて」
「ここよりも?」
「港が、ねぇ」

かりかり、と日に焼けた指の爪が神経質そうに鍵をこする。

「ええ。明日の便は…大丈夫かしらねぇ」

ちいさく欠伸を噛み殺した顔で、笑う。

「でもまぁ、石垣のほうはずいぶんいいから」

 客が、帰って行く。如雨露片手に、見送りに出る。ついでに、入り口の植木鉢に
水をやる。

 …だれも、いない。
 …だれも、見ていない。

 眠い顔で席に戻る。
 
 今日も、こともなし。
 荷物は無事、倉庫に収まったらしい。

*******************************

場所は、離島のほう。というか、石垣島。時期的には…96年以降。
密輸やってる人々の何事も起こらないワンシーン、ってかんじです。

ずっとここで書くかどうかはわかりません。
キャラクターはまだ作っていません。
…だって、今朝失地回復のためにってんで考えてたんだものー、これ<をい

そんなわけで、ではまた。


    

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