[KATARIBE 17415] [HA06][EP]: 『棲めば都』

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Date: Mon, 10 Jan 2000 02:26:47 -0000
From: "matsuyama satoshi" <caw-system@mtg.biglobe.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 17415] [HA06][EP]: 『棲めば都』
To: "kataribe" <kataribe-ml@trpg.net>
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こにちわ。灰枝です。
ぼちぼちメイルを書いてます。

(ぼちぼち)

では初EPと行きます。

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エピソード「棲めば都」
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登場人物
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末夜  雅俊(まつや  まさとし)
         :吹利に引っ越してきた大学研究員。大学時代は
         :一十のサークルの先輩だった。
一  十(にのまえ  みつる)
         :(補完よろしく)


○1999年十二月。事前の電話
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   末夜雅俊が公衆電話にとりついて、話し込んでいる。
   テレカの減り具合からして、相手は遠方らしい。

  末夜       :「・・・ということで、先に見繕ってほしいのだ」
  末夜       :「・・・ああ、いいよ。安ければいい。任せる」
  末夜       :「・・・すこし広めの方がいいだろうな、うん」
  末夜       :「・・・敷金?  そりゃ無いにこしたことはないな」
  末夜       :「・・・適当にやっちゃってくれ」

  数回うなずき、電話をきる。
  しばらく立ち止まり、ふと考えてみる。
  何だかすこしだけ間違った気がしたものである。
  東京の空は、よく晴れていた。


○2000年一月。引越し当日
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   吹利の空はくもっていた。
   灰色の空を横目に眺めながら、どうしてこの男はこんなに、お天 気な顔をしてい
るのだろう、と末夜はふと考えた。
   東京土産のひよこ饅頭を抱えこんで、一十はえらく幸せそうだった。

  一         :「バイト代も出るって、言いましたよねえ?」
  末夜      :「言ったぞ。ちゃんと手伝えば、晩飯もつけよう」
  一         :「ふふふふ、言質はとりましたよ。ごはんごはん、タダごはん〜
☆」
末夜        :「何やら日ごろの生活がしのばれるな」

  傍らの車に乗りこむ。当座のレンタカーだ。末夜は免許をとって以来、ほとんど運
転はしていない。
  坂道を五メートル後方に下ったあと、車はアクセルを空回し気味に急発進した。
  冬なかばの街並は、いささか彩りに欠けて寂しげだ。
  流れる景色を横目に見やって、末夜はふと気づく。
  坂が多い。山もおおい。
  都内では山なぞ見えなかった、と思い当たったものだった。

  一         :「・・・ところで、何でこんな曲がかかってんです?」
  末夜      :「グランプリの鷹は嫌いか?」
  一         :「もう少し安全な曲をお願いしたいんですっ」
  末夜      :「安心したまえ。次はイデオンのエンディングだ」


○物件にて
-----------
  末夜      :「・・・・これか?」
  一         :「というか、ほかに家がありませんねぇ」
  末夜      :「ちなみに下見は?」
  一         :「してませんよ。だって遠いじゃないですか」
  末夜      :「ううむ、三万円。大穴物件としても、安すぎるな」

  吹利市内から車で四十分。
  付近にゃ商店なし。というか人家なし。
  高速道路わき。
  ここまではまだいい。安くなる条件だ。
  しかし・・・田舎家とはいえ、これは一戸建てだ。

  末夜      :「ところで君なら何とする?」
  一         :「安いことは善です」
  末夜      :「・・・ふうむ、0.7理くらいはある」

  いまさら考えたところで、引越し屋は到着しているのだった。
  到着していなければ困る。
  ついでに働いてもらわねば困るのだ。
  ・・・・というのに、なぜこんな場所で、荷物を放り出して寝こけておるのか、末
夜には理解できなかった。

  一        :「先輩。なんで寝てるのか判りましたよ」
  末夜     :「なんでだ?」
  一        :「重たい段ボールが飛んでくるからです」

  振り向いた頭を段ボールがかすめる。
  ハヤカワの絶版本が地べたにバラバラと投げ出された。

  ??     :「出てけぇ〜」
  末夜     :「ああっ、僕のコレクションがっ(叫び)!」
  一        :「何と、幽霊屋敷でしたねえ」
  末夜     :「きみ人ごとだと思っているだろう」
  ??     :「ここから立ち去れ〜」

  つづいて、CDラック。テレビ。パソコン。
  容赦は全くない。全然無い。
  どん。がしゃん。ぱりん。
  何とか物品をよけながら。

  末夜     :「・・・・・・・・・・・・・あああっ(かそけき悲鳴)」
  一        :「災難ですねえ」
  末夜     :「呑気にしてないでどうにかせんかあっ。この手のは君の専門だろ
う」
  一        :「先輩だって人のこと言えんでしょうに」
  末夜     :「現場仕事は苦手なのだ。・・・操ってる本体はどこにいるかな?」
  一        :「屋根の上っぽい感じですが、でも何かちょっと」

  末夜、最後まで聞かず、コートの中から何やらつかみ出した。それはどう見ても単
なる湯飲みで、

  末夜    :「しばけ宝貝ッ!  疾!」

  命令一下、びゅんと飛びさった。続いて屋根の上で、ガシャーンと音が響く。
 と、乱舞していた引越し荷物が、一斉に落ちる。

  一       :「へえ、湯飲み宝貝ですか?」
  末夜    :「飛んでいって後頭部にぶち当たる日用品は、宝貝の基本だな。刃物や
武器にしないのが良識というものだ」
  一       :「(ぶちあたりゃ同じでは・・・)砕けちゃいましたね」
  末夜    :「改良の余地があるな。で、あれは何だ?」

  何かが屋根の上をころころ転がってきて、ぽてんと玄関先の植え込みに落ちる。茶
色い毛玉のようなそれは・・・。

  一       :「タヌキ」
  末夜    :「・・・タヌキ?」

 末夜は眉をひそめる。
 後頭部に小さなコブをつくって、タヌキがのびていた。


 ○引越し、夜。
---------------
 日は沈んで、時は夜。
 がらんとした部屋に、鍋の匂いが立ち込める。
 大きな中華包丁を握り締め、末夜は呟いた。

 末夜     :「ふむ。狸はイヌ科だ。美味かろうな」
 タヌキ   :「あぁああっ、ごめんなさい、ゆるしてぇ!」
 一        :「可哀相ですよ、せんぱい。許してあげましょう」
 末夜     :「君は晩飯が出たからそれでいいんだろう」
 一        :「僕は晩飯が出たからそれでいいんです(断言)」
 タヌキ   :「悪気はなかったんですぅ。よよよよよ」
 一        :「ほら、こう言ってる。(もぐもぐ)」

   どうやらこの辺りも高速道路が通って以来、自然破壊が進み、タヌキの住み場所
もずいぶん減ったとか。
  ということで頭に来たこのタヌキ、以前は建設事務所だったここに陣取って、やっ
てくる人間を追い返していたのであった。
  もちろん末夜には、高速道路を建設する趣味などない。
  しかしこのタヌキを黙って許してやる理由もない。

 タヌキ   :「許してくれればお礼はいたしますです」
 末夜     :「では茶釜に化けて金かせいでこい」
 タヌキ   :「・・・・・・・・・・」
 末夜     :「あっちの部屋で反物を織ってもいいぞ」
 タヌキ   :「・・・・・・・むりですう」
 末夜     :「ならとりあえず荷物整理からだ。それがすんだら、本のブックカバー
を全部付け直す。その後に、窓ふきと、便所掃除。裏庭の草むしりは明日やってもら
う」
 タヌキ   :「ひぃ」
 末夜     :「逃げようとした場合、頭にはめた金輪が締まるから、それなりに覚悟
をするように」
 一        :「鬼ですか・・・あなたは(もぐもぐ)」

 こうしてお手伝いつき借家を手に入れた、末夜でありました。
 みなさん遊びにきてください。
 ・・・・タヌキがお茶をお入れします。

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てことで。

ようやく吹利に引っ越してきた、末夜雅俊です。
ソバは配れませんが、どうぞよろしく。

D16くん、勝手にでました。修正よろしくね。








    

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