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Date: Fri, 7 Jan 2000 19:18:57 +0900 (JST)
From: D16 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 17368] [HA06][EP] 『明けない夜・紘一郎、花澄サイド』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200001071018.TAA55980@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 17368
2000年01月07日:19時18分57秒
Sub:[HA06][EP]『明けない夜・紘一郎、花澄サイド』:
From:D16
ども、D16です。
『明けない夜』で、紘一郎君と花澄さん、すーが呪いのビデオを作成したと
思しき所を探索するシーンです。
彼らが赴くスタジオには十一(つなし・はじめ)が、自分の写し身を式でつ
くり来る者にメッセージまたは警告を与えるはずです。
十一の写し身は基本的な技能をすべて十と同様に持ちますが、常に不利な特
徴として、
紙なので火に弱い:3、遠隔操作による反応の遅さ:2
がつくものとします。
では、紘一郎君のアパートでの作戦会議からです。
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> 紘一郎は地図を見つめたまま微動だにしなかった。ただ奥歯を擦る鈍い音
>が、しんとした室内に響いた。
> 紘一郎が人前で始めてみせる表情だった。
>
> 紘一郎 :「花澄さん、お願いします」
紘一郎 :「花澄さんが、その一さんに似た人を見つけたのは……」
花澄 :「あの、氷雨が降った日だから、三日前。場所は……、大
:通りの交差点だったと思うのだけど……」
すー :「似てたっていうのは?」
花澄はすーと目をあわせると、少し困ったような表情をした。
花澄 :「ええとね、背格好がそっくりだったの。それに、多分顔
:も」
紘一郎 :「一さんじゃないって言う根拠は?」
花澄 :「……スーツを着てて、プレスの効いたロングコートを着
:てたの。似合ってるんだけど……、その、似合ってるもん
:だから……」
紘一郎 :「別人ですね」
すー :「(^^;;;」
紘一郎は花澄の言葉に従い、地図をにらむ。やがて顔を上げてプリントアウ
トしたビデオ製作会社のリストからいくつかの候補を選び出した。
紘一郎 :「多分、このあたりです。行きましょう」
花澄 :「はい」
ゆず :「じぃ……(かすみぃ)」
花澄 :「ゆずは、お留守番ね」
紘一郎 :「すー、ゆずちゃんを花澄さんの家まで送ってってくれそ
:れから合流だ」
すー :「りょーかい!行くよ、ゆずちゃん」
すーはぽふっとゆずの頭に手をやると、抱き上げた。
○侵入、邂逅
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そのビルは、表通りから一本裏に入った路地裏に面していた。
花澄 :「ここね」
紘一郎 :「特に、呪詛のような気配は感じないですけどね」
すー :「うー、よく見えないよう(;_;)」
紘一郎 :「すーは、後ろからこい」
歩み出そうとした花澄の鼻先を風が掠めた。
花澄 :「何?」
風 :『行くな、澱んでいる』
紘一郎 :「花澄さん?」
花澄 :『何があるか、告げなさい』
花澄は問い掛ける紘一郎を目で制し、取り巻く風に告げた。
風 :『男が一人。他には風を起こす物は無い』
花澄 :『身にまとう風は』
風 :『冥く、冷たく、斬りつける風。微かに怨嗟を響かせなが
:ら嶺を越えて木々の枝の間を抜ける風。谷間から湧き上が
:る硫黄を乗せて新芽を落とし、若枝を枯らす風』
花澄 :「私たちの探している人のようです。中に、」
花澄は紘一郎に告げた。
花澄 :「男の人が居ます」
入り口は既に閉められていた。
紘一郎 :「スタジオは三階だな……」
すー :「外から見てみようか?」
紘一郎 :「すーの鳥目じゃ無理だ。中から行こう」
すー :「でも……」
紘一郎 :「大丈夫だ、俺と、すーなら」
すー :「……うん。まかせといてっ!」
紘一郎 :「霊視ができた方がいいな。すー、乗ってくれ」
すー :「りょーかい」
そういうとすーは紘一郎に後ろから抱きつくとそのまま溶け込むように紘一
郎の中に消えた。
紘一郎 :「花澄さんは、ここで待っていてください」
花澄 :「お気使いは無用」
紘一郎 :「尊さんや一さんたちのようにはいかないんです。僕たち
:は僕たちだけで精一杯で」
花澄 :「大丈夫ですよ。紘一郎さんとすーちゃんは自分たちの為
:すべきことをなさってください。自分の身は自分で守りま
:すし、それに」
すー :『それに?』
花澄 :「逃げる時には逃げます」
紘一郎 :「その言葉、信じます」
そう言うと紘一郎は鉄の戸を開けた。
中は、暗かった。
明かりを探して、中に踏み込む。手元に電燈のスイッチを見つけ明かりを灯
す。灰色の無機質なリノリウムが蛍光灯の明かりに照らされた。目の前には上
に上がる階段があり、その隣の廊下は奥のオフィスに続いているようだった。
幾つか並んだ鉄の戸が沈黙したまま、硬質の光を返していた。
紘一郎は階段に足をかけて上り始めた。かつり、かつりと足音が響く。後か
らほとんど足音を立てないで花澄が続く。
踊り場に上がり、さらに階上を目指した時、紘一郎の脳裏ですーが叫んだ。
すー :『こーちゃん、足下!』
紘一郎は足を止めた。まるで紘一郎に気がつかないように花澄が上ってくる。
目をすがめ、周囲を見直した。
いつのまにか、向く方向が変わっていた。つい今しがた上って来たばかりの
階段に向かい、足を踏み出そうとしていたのだ。
紘一郎 :「遁甲陣……」
目の前で、花澄が目をつぶり頭を振った。
花澄 :「……ああ、紘一郎さん」
紘一郎 :「花澄さん、大丈夫ですか?」
花澄 :「ええ、大丈夫です。少し、眩暈が……。待って下さい」
紘一郎は踊り場の四隅に盛り上げられた土塊を、靴で払った。
紘一郎 :「気付かずに、階段を降り来た道を返すか。それとも、転
:がり落ちるか……。ってとこですね。確かに、人を寄せた
:くなかったみたいだ」
すー :『この先も?』
紘一郎 :「多分ね。こんなものは無駄な詮索を防ぐためのものだ。
:この先からが、本気だ』
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ひとまずこんな所で、切ります。異能とかがよくわからずに適当にやってる
ので、チェック、修正その他よろしくお願いします。
D16