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Date: Wed, 29 Dec 1999 21:18:00 +0900 (JST)
From: Ginka <una-yuya@mb.kcom.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 17206] [HA06N] 『過ぎ去ろうとする年に』(仮)
To: 語り部ML <kataribe-ml@trpg.net>
Message-Id: <946469880.4294156249@tokyo51.kcom.ne.jp>
X-Mail-Count: 17206
こんばんわ、銀佳です。
本体の体験より、雑記をひとつ。
コードにN……つけたくないい……(滅)
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『過ぎ去ろうとする年に』(仮)
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年末年始
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年末年始は、師走という名の通り、忙しい。
大掃除やお正月の支度が、その主なもの。
お正月を迎える上で、普通の人は年末になると、
必死で年賀状を書きはじめる。
しかし、必死になって年賀状を書く人が多ければ多いほど……
それは、届ける人も多く必要ということになって。
かくして、郵便局は年末になると、
年末年始臨時郵便局員「ゆうメイト」を雇うのだ。
大部分は高校生。
働く理由は、人によってさまざま。
悠のように、必要な経費を稼ぐために働く人もいれば、
休みを有効に使うという目的で働く人もいる。
働く場所も、希望によりさまざま。
冷たい風の吹く中を、自転車で回って郵便物を届ける外務。
郵便物を配達しやすいように区分する内務。
今年の干支は
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「おはよーございますっ☆」
「あ、おはよーっ」
「おっはよ〜♪」
八時十五分に郵便局について。
半に勤務が始まる。
当面の今日の仕事は……第九区の大区分。
「三の十六、三の……十九っ、三の……」
県、市までは郵便局に運ばれてきた時点で、すでに区分されていて。
その後配達のエリアごとに、郵便課内務の人が、区分する。
この配達のエリアが、第九区とか第十区と呼ばれるもので、
県、市、町、丁までで分けられている。
その後の番地で分けるのが、大区分。
「三の五、三の七、三の……六」
左手に五十枚ほどをまとめて持ち、親指で一枚ずつずらして。
表に書かれた住所、その部分を、間違えないように読み上げながら。
右手で区分棚のブロックに放りこむ。
ときには、裏に書かれたイラストのカラーインクが、
表に染み出していたりするものもあって。
興味半分に、裏返してみたりもする。
今年……今度の干支は、龍。
空の糸
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「あ……」
手に取った年賀状の宛名を眺めて。
ふと、くすっと微かに笑う。
吹利県吹利市……水瀬璃慧。
「璃慧宛てだ……」
吹利県吹利市……狭淵美樹。
(見覚えはあるんだけど……誰だっけ……)
つい、と考えこんで。
数瞬後に、気付く。
(神酒さんじゃない……)
普段、ネットでしか会わないから。
なかなか本名がでてこない。
他にも。
平塚花澄。一十。小滝ユラ。雪丘望。如月刹那。兼沢圭人……
瑞鶴。ベーカリー楠。マリカ。グリーングラス……
こうしてみると……
見えない不思議な力で繋がっているのかな……と。
何となく、実感。
ふと顔を上げると。
年賀状の一枚一枚を彩っている、きらきらと輝く、糸が。
送る人と。
受け取る人と。
通い合う、暖かい心。
……繊い、貴い、絆が。
見えた……そんな気が、した。
(今年は……いろいろなことが、あった年だったなぁ……)
視界の隅で儚く消えた輝きに、思いを馳せて。
記憶の紗がかかった光景を、蘇らせて。
過ぎようとしている年に向かって、ひとこと。
(ありがとう)
心の中で、そっと、囁いた。
解説
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郵便局のアルバイトをしている悠の、とある時間の断片。
年賀状を見て、思うこと……
時系列
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一九九九年の年末、十二月の二十九、三十日ころ。
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十二月の二十三日から、近くの郵便局で、アルバイトを始めました。
いままで知らなかったことを毎日のように見ることができて、
毎日が忙しいけれど、とても楽しいです。
特にフリー班に配属されたからでしょうか、
毎日のようにやることが違って、いっしょに働く人が違って。
いろいろな人と仕事を通して触れ合えて、
いろいろな仕事を覚えることができて。
貴重な体験をしていると思っています。
ERさんの書かれた小説の「空の糸」、
とても好きなので、糸をお借りしました。
仕事をしているときにふと、
「これだけの年賀状を、わたしたちは物として扱っているけれど、
書いている人は、送る相手のことを考えて心をこめて書いているんだろう」
そう思ったら、その年賀状が、途端にとても尊く見えました。
本編の表現そのままですけれど。
送る人と、受け取る人と。
その間の気持ちが、年賀状には込められているんじゃないか……
そう思って、ざーっと書きました。
ERさん……花澄さんにならきっと、
年賀状を彩る、無数の輝く空の糸が、見えるのでしょうね。
#……んな偉そうなことを言っているならとっとと年賀状を書け自分っ
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銀佳
una-yuya@mb.kcom.ne.jp
http://www.geocities.co.jp/Bookend/4229/
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