[KATARIBE 17206] [HA06N] 『過ぎ去ろうとする年に』(仮)

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Wed, 29 Dec 1999 21:18:00 +0900 (JST)
From: Ginka <una-yuya@mb.kcom.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 17206] [HA06N] 『過ぎ去ろうとする年に』(仮)
To: 語り部ML <kataribe-ml@trpg.net>
Message-Id: <946469880.4294156249@tokyo51.kcom.ne.jp>
X-Mail-Count: 17206

 こんばんわ、銀佳です。
 本体の体験より、雑記をひとつ。

 コードにN……つけたくないい……(滅)


**********************************************************************

『過ぎ去ろうとする年に』(仮)
=============================

年末年始
--------

 年末年始は、師走という名の通り、忙しい。
 大掃除やお正月の支度が、その主なもの。

 お正月を迎える上で、普通の人は年末になると、
 必死で年賀状を書きはじめる。
 しかし、必死になって年賀状を書く人が多ければ多いほど……
 それは、届ける人も多く必要ということになって。

 かくして、郵便局は年末になると、
 年末年始臨時郵便局員「ゆうメイト」を雇うのだ。

 大部分は高校生。
 働く理由は、人によってさまざま。
 悠のように、必要な経費を稼ぐために働く人もいれば、
 休みを有効に使うという目的で働く人もいる。
 働く場所も、希望によりさまざま。
 冷たい風の吹く中を、自転車で回って郵便物を届ける外務。
 郵便物を配達しやすいように区分する内務。


今年の干支は
------------

「おはよーございますっ☆」
「あ、おはよーっ」
「おっはよ〜♪」

 八時十五分に郵便局について。
 半に勤務が始まる。

 当面の今日の仕事は……第九区の大区分。

「三の十六、三の……十九っ、三の……」

 県、市までは郵便局に運ばれてきた時点で、すでに区分されていて。
 その後配達のエリアごとに、郵便課内務の人が、区分する。
 この配達のエリアが、第九区とか第十区と呼ばれるもので、
 県、市、町、丁までで分けられている。
 その後の番地で分けるのが、大区分。
 
「三の五、三の七、三の……六」

 左手に五十枚ほどをまとめて持ち、親指で一枚ずつずらして。
 表に書かれた住所、その部分を、間違えないように読み上げながら。
 右手で区分棚のブロックに放りこむ。

 ときには、裏に書かれたイラストのカラーインクが、
 表に染み出していたりするものもあって。
 興味半分に、裏返してみたりもする。
 今年……今度の干支は、龍。


空の糸
------

「あ……」
 手に取った年賀状の宛名を眺めて。
 ふと、くすっと微かに笑う。

 吹利県吹利市……水瀬璃慧。

「璃慧宛てだ……」

 吹利県吹利市……狭淵美樹。

(見覚えはあるんだけど……誰だっけ……)

 つい、と考えこんで。
 数瞬後に、気付く。

(神酒さんじゃない……)

 普段、ネットでしか会わないから。
 なかなか本名がでてこない。

 他にも。
 平塚花澄。一十。小滝ユラ。雪丘望。如月刹那。兼沢圭人……
 瑞鶴。ベーカリー楠。マリカ。グリーングラス……

 こうしてみると……
 見えない不思議な力で繋がっているのかな……と。
 何となく、実感。

 ふと顔を上げると。
 年賀状の一枚一枚を彩っている、きらきらと輝く、糸が。

 送る人と。
 受け取る人と。
 通い合う、暖かい心。
 ……繊い、貴い、絆が。
 見えた……そんな気が、した。

(今年は……いろいろなことが、あった年だったなぁ……)

 視界の隅で儚く消えた輝きに、思いを馳せて。
 記憶の紗がかかった光景を、蘇らせて。
 過ぎようとしている年に向かって、ひとこと。

(ありがとう)

 心の中で、そっと、囁いた。


解説
----

 郵便局のアルバイトをしている悠の、とある時間の断片。
 年賀状を見て、思うこと……

時系列
------

 一九九九年の年末、十二月の二十九、三十日ころ。

$$
**********************************************************************


 十二月の二十三日から、近くの郵便局で、アルバイトを始めました。
 いままで知らなかったことを毎日のように見ることができて、
 毎日が忙しいけれど、とても楽しいです。

 特にフリー班に配属されたからでしょうか、
 毎日のようにやることが違って、いっしょに働く人が違って。
 いろいろな人と仕事を通して触れ合えて、
 いろいろな仕事を覚えることができて。
 貴重な体験をしていると思っています。

 ERさんの書かれた小説の「空の糸」、
 とても好きなので、糸をお借りしました。
 仕事をしているときにふと、
「これだけの年賀状を、わたしたちは物として扱っているけれど、
 書いている人は、送る相手のことを考えて心をこめて書いているんだろう」
 そう思ったら、その年賀状が、途端にとても尊く見えました。

 本編の表現そのままですけれど。
 送る人と、受け取る人と。
 その間の気持ちが、年賀状には込められているんじゃないか……
 そう思って、ざーっと書きました。

 ERさん……花澄さんにならきっと、
 年賀状を彩る、無数の輝く空の糸が、見えるのでしょうね。

 #……んな偉そうなことを言っているならとっとと年賀状を書け自分っ


--------------------------------------------
 銀佳
 una-yuya@mb.kcom.ne.jp
 http://www.geocities.co.jp/Bookend/4229/
--------------------------------------------
    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage