Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage
Date: Mon, 20 Dec 1999 02:53:43 +0900
From: edamatsu <edamatsu@gold.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 17038] [WP01] エピソード:敵
To: "語り部ML" <kataribe-ml@trpg.net>
Message-Id: <385D1BA5.66430926@gold.ocn.ne.jp>
X-Mail-Count: 17038
くすのきです。
終末の住人、海堂のエピソードです。
**********
俺の周りにいる人間はおよそ4種類に分類される。
ひとつは「無害」な奴。
ひとつは「イヤ」な奴。
ひとつは「嫌い」な奴。
最後の一つは、「敵」。
イヤな奴も嫌いな奴も、ちょっと脅しをかけてやれば大抵無害
になるが、たまにいる馬鹿な奴は自ら進んで「敵」になる。
敵。
敵は、その存在を許しておくと後々まで自分に悪影響を及ぼす
可能性がある。
自分から進んで障害を得ようなんてのは、「試練」やら「逆境」と
いう言葉に置き換えて自己陶酔している馬鹿のやることで。
排除できる手段があるなら、さっさとした方がお互いの為だ。
その「敵」になりさがったヤツが、今俺の後ろにいる。
コイツは、同じ仕事場に勤めてるフリーター。
話によると、社長の息子だかなんだからしいが、そんな奴が
なんでこんな家電店でバイトしてるのかは知った事じゃない。
ただ、コイツは
・与えられた仕事ができない
・自分から仕事をしない
・そのくせ遊びだけはちゃっかり参加する
この程度なら今までは「嫌いな奴」だったんだが。
こいつは自分から俺の敵に回った。
つまり、俺を侮辱する発言をほんの数分の間に繰り返したのだ。
新宿。
24時間眠らない街、と言われても街が明るいだけでちょっと夜の
隅に目をやれば、働く義務を放棄したホームレスやいなくていい
ガイジン共がごろごろしている。
同じ職場の、比較的仲の良い女の子(まだ未成年だ)は、時間の
都合もあって、そんな遅い時間帯の新宿を歩かねばならない。
早く帰っても特にすることも無いので、仕事の時間が同じになったり
した時や気が向いた時などは彼女を駅まで送ってやる事にしている。
弁解するわけではないが、俺は別に彼女に好意を抱いていると
いうわけではない。
それは多分、彼女もそうだろうし、仲の良い同僚ならそれくらいは
当然だと、俺は思っていたのだ。
が。
敵 :「今帰りか?」
俺 :「あ?」
敵 :「彼女、送ってくんか?」
俺 :「あぁ」
敵 :「自分、『逆方向』やろ?」
俺 :「あん?」
敵 :「駅まで結構あるし、『歩く距離長い』なあ」
俺 :「別に」
敵 :「なんで?『誰かに言われた』んか?」
俺 :「……お前」
敵 :「……」
俺 :「俺に言いたいことあんなら、ハッキリ言え」
敵 :「いや、『別に』……」
それだけでもう充分だった。
彼女を無事に送ってその後。
俺は敵を駅の隅へ連れて行き、その胸座をつかんだ。
俺 :「お前……死にたいらしいな」
敵 :「え?」
わけがわからない様子の、敵。
俺 :「てめえはもういらねえ」
敵 :「?(汗)」
俺 :「……糞野郎が」
言い放つと同時に俺の『力』を解放、使い慣れた銃が現れる。
俺 :「随分安っぽく見られたもんだ」
敵 :「な、なに言って……」
どごんっ
俺 :「俺はてめえとは違う」
どごんっ
俺 :「打算と下心で動くような奴に」
どごんっ
俺 :「馬鹿にされる覚えはねえよ」
どごんっ
俺 :「お前はいらねえ。だから今すぐ死ね」
どごんどごん
合計6発。
灰色だった壁が、そこだけ血に染まる。
見慣れた光景。
だが、爽快感は無い。
時間と力を浪費した、そんな感じとなんとなく悪い後味のような。
まあ、帰って寝ちまえばなんともなくなるだろう。
俺の周りの敵。
自分勝手な、そのくせハッキリを意志表示せず、立ち回りだけが
上手い奴。
そんな奴は目の前から消すに限る。
……本当に。
俺は俺の為に。
それでいいと、思っている。
**********
以上です。
今回のは……また半分くらいは実話だったり(苦笑)
……まあ、海堂もいちお、人間ですから、ちょっとくらいは
良心の呵責があるのかな、ということで。
……弱いよ、やっぱり。
悪党を気取りたい、ってとこですかね>海堂
くすのきでした
edamatsu@gold.ocn.ne.jp