[KATARIBE 16994] [HA06P] :「阿吽」

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Date: Thu, 16 Dec 1999 22:11:26 +0900 (JST)
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 16994] [HA06P] :「阿吽」 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199912161311.WAA17081@www.mahoroba.ne.jp>
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99年12月16日:22時11分25秒
Sub:[HA06P]:「阿吽」:
From:E.R


      こんにちは、E.Rです。
 ふと。
 こういうもんを書いてみる。

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「阿吽」
========

 ひゅう、と風が吹く。

 譲羽     :「ぢいっ(さむいのっ)」

 寒い、という感覚は、実は譲羽には無い。けれども松蔭堂の人達や、ベーカ
リーのみんなが、この音を聞くと決まってそう言う。
 だから、真似をしてみる。

 月は糸月。
 きり、と引き絞られた細い光弧。

 すっかり暗くなった路地を、少女人形はとことこ歩いている。
 と。

 譲羽     :「ぢ?」

 すう、と、足音も立てずに寄ってきたもの。
 譲羽よりも二回りは大きいだろうか。

 ??     :『さても、年若き妖の者のおることと思うたが』
 譲羽     :『?』
 ??     :『こはまた、年経たる香のすることよ』
 譲羽     :『??』

 犬だろうか、と譲羽は思った。
 4本の足と、何だかぐるぐる渦を巻くようなしっぽ。
 全身、くすんだ灰色の……
 
 ??     :『……はて、人の世に染まりすぎたかの、御主』
 譲羽     :『ゆずは、花澄の子供だもん(ぶっすー)』
 ??     :『……ほうほう』

 大きな目をぎょろりとさせて、その何かはそう言った。
 おかしそうな声だ、と、思った。

 ??     :『人の子、か』
 譲羽     :『そだもん(ぶっすー)』
 ??     :『御主等に近き人の子…ではあるのか』
 譲羽     :『……知らないもん』

 ほう、と、風の通る穴のような音を立てて、その何かは笑った。
 
 ??     :『でなくば、御主、そうも元気ではおるまいよ』
 譲羽     :『どーして』
 ??     :『木より離れた木霊など』
 
 ほう、と、また一つ笑って。

 ??     :『とうの昔に干乾びて当然』
 譲羽     :「ぢいっ(真っ青)」
 ??     :『御主が親と呼ぶ相手、御主に近き者なればこそ、御主今
        :に至るまで生きておる』
 譲羽     :「ぢい………」

 そうなのかな、と、ぼんやりと考える。
 そうなのかな、それ本当なのかな……

 ??     :『御主』
 譲羽     :「ぢい?」
 ??     :『しかしその身は……』

 大きな目玉をぐるり、と近づけて、しかしその何かはその先を言わなかった。

 譲羽     :「ぢい??」
 ??     :『……いやなんも』

 ほう、と。
 それは大きく開いた口から、流れる風。
 
 ??     :『木霊が、のう……』

 なんだか。
 とても怖くなった。
 とてもとても……怖く、なった。

 ??     :『御主』
 譲羽     :『……ゆずおぬしじゃないもん』
 ??     :『人の世に』
 譲羽     :『いらないっ』
 ??     :『留まるは易いことではな』
 譲羽     :『黙りやっ』

 たああん、と。
 自分の中から、響いた声。

 ………………声。


 ほう、とまた一つ風を吐くと、その何かはくるりと身を翻した。

 ??     :『では息災にて』

 まるで風に乗ったように、その何かが消えて行く。
 それを…見るうちに。
 かたかたと、全身が。
 全身が震える。

 木霊。
 言霊。

 自分の中の、この声は……………?



        :「ゆずか?」
 譲羽     :「…………ぢいっ」
 麻樹     :「…どうした」

 文字通り、矢から放たれた弓のような勢いで飛び付かれて、声をかけたほう
は流石に少し驚いたようだった。

 譲羽     :「…………」
 麻樹     :「帰る途中か」
 譲羽     :(こっくり)
 麻樹     :「瑞鶴か」
 譲羽     :(こっくり)

 ふむ、と言うと、そのまま譲羽を抱き上げて歩き出す。

 かたかたかた、と、その身体が小さく揺れる。
 かたかたかた、と、その身体が小さく震える。

 自分の中の、声…………


 糸月はやはり小さく傾いたまま、空に浮かんでいる。

*****************************************
 
 てなもんで。
 ??、が何かは……当ててみてください(爆)




 ……てのはあんまりですが(苦笑)
 あれですね、狛犬。
 
 春日神社の狛犬です。

 であであ。


    

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