[KATARIBE 16782] [WP01N] :「磨硝子球」

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Date: Wed, 8 Dec 1999 12:46:42 +0900
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 16782] [WP01N] :「磨硝子球」 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199912080346.MAA13360@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 16782

99年12月08日:12時46分38秒
Sub:[WP01N]:「磨硝子球」:
From:E.R


     こんにちは、E.Rです。
  ふふみ、っと書いた話。
  ほんの断片です。
  あ、志郎さんお借りしました>ハリ=ハラさん

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「磨硝子球」
=============

 冬の空は、晴れればぽかんと遠くまで透きとおるくせに、曇ると朝が来ない
くらいには薄暗くなる。

「……さむ」

 縁側で、指先をこする。白くなった指も手も、なかなか血の気が戻らない。

「……………大根」

 ぼそっとした一言と同時に、座っている横に、新聞紙に包まれた大根が二本、
とん、と置かれる。
 白と淡い緑のコントラストが、目に鮮やかで。

「………綺麗だね」

 置いた相手は、聞こえているのかいないのか、そのまま土いじりに戻る。
 風音は小さく息を吐いて、空を眺める。

 磨硝子のような、ざらざらと重い……色の。
 その中に封じ込められてしまったような、風景。

 よく考えて見れば……けれどもそういうことなのだろう。時間は年の終わり
で途切れ、ループを描く。
 まあるい磨硝子球の中の、繰り返し。
 
 すう、と日がさした。
 微かに目を細めた風音の視野の中で、街路樹の金茶色の葉が、ふわり、と宙
に浮き上がった。
 さしこんだ光の中で、その色が鮮やかで…………

「……ああ」

 そうか、と、風音は苦笑する。
 この風景は……スノーボールの中に似ている。
 まあるく閉じられたスノーボールの中に、座りこんで
 黄金色の葉の落ちるのをただ眺めて…………

 そこまで考えたとき、急に喉の奥が痛んだ。
 ちりちりと、細かい刺の刺さるような痛み。

 痛みが咳になって……

「風音」

 大丈夫、と言う前に咳が出る。

「風音、部屋に入れ」
「……大丈夫」
「風邪を、引く」
「大丈夫」

 多分それでも。
 同じ時を繰り返していても。
 自分達は……少なくとも自分は、同じ時の中にいるわけではないから。
 多分、この光景は、二度と見ることは無いのだろうから…………

 黄金の色の葉が、ゆるゆると落ちてゆく。
 磨硝子色の空に、一筋だけの蒼。

 秋から冬へ。
 時間はそれでも動いてゆく。
 するする、するすると。
 まあるい、磨硝子の球の中で。

***************************************

 風邪は、本体が引いておるのです。
 だから、分身にも引いてもらおうじゃないか(八つあたり)

 ……と思ったんですけど、花澄って風邪引かないし、多分店長も駄目だし、
07の兪児も、癒しの手が風邪引くわけないし。
 ……というわけで、余った一名、風邪引いてもらいました(おいおいおいおいっ)

 うーしかし、禁煙場所が、通路っての止めて欲しいなあ……
 通るたびに、つい咳き込むんで、吸ってる人に悪くって(^^;;
 #厭味じゃないんです、本当に風邪なんですっ

 ではでは。




    

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