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Date: Mon, 6 Dec 1999 17:45:24 +0900
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 16754] [HA06N] :「白風旋舞之図」
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199912060845.RAA07367@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 16754
99年12月06日:17時45分22秒
Sub:[HA06N]:「白風旋舞之図」:
From:E.R
こんにちは、E.Rです。
ちょっと時期がずれたかな?
まあ……通勤の風景より、ちょっと。
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「白風旋舞之図」
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例えば一瞬。
ざん、と風が吹く。
ざん、と。
開いた扇の形の黄色い葉が舞う。
ひどく……ゆっくりと。
スローモーションの雪に似て。
ざん。
斬。
空を薙ぐ……扇形の葉。
鮮やかな。
そのくせ、周囲の風景に静かに溶け込む色。
「不思議だねえ」
「は?」
「なんであんな派手な色が、自然のものだとあんなにしっくり見えるんだろう」
かつて、栄華を極めた頃の王でさえ、それほどに着飾りはしなかった……と。
「銀杏だけでもなかろう」
「……うん」
「もみじも、椿も」
「うん」
ゆっくりと、葉が宙を落ちる。
猫が珍しく座りこんで、その様を見ている。
秋……白秋。
秋自体は、白。それを彩るものが多すぎて。
白………
猫がぴくん、と背を伸ばした。
どう、ともう一度、風が吹いて………
…………吹いて…
「あれ」
やはりゆっくりと舞いあがる葉を身に纏い付かせた………白い…………
「ああ、白虎だ」
のんびりとした兄の声が近づいて。
そのまま座りこんだ猫を抱き上げる。
猫は………珍しく小さな声でにい、と鳴いた。
「流石に、なあ」
硝子戸の向こうから。
大きな黄金の目が、すっとこちらを見た。
おかしげに。
やはり……ひどくゆっくりとした動きではあったけど。
どう、と、街路樹が大きく揺れる。
大きな円を描いて、風が流れる。
風が……否、白い虎が。
黄色い扇を幾つも纏い付かせて。
まあるく、飛ぶ…………
見事な風の渦が、その足元から湧き、こぼれ、渦巻いて流れてゆく……
なう、と、いつものどすの効いた声で、猫が鳴く。
苦笑して、兄が猫を下ろす。
「なんだかなあ」
「……うん」
穏やかな、風景。
白い……虎。
散った最後の葉が、ふわふわと頼りなく、店の前の空間をよぎってゆく。
もうすぐ。
秋も終わる。
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なんかこー、
のたーっと硝子戸の向こうを眺めている平塚兄妹の風景ですね(^^;;
ではでは。