[KATARIBE 16743] Re: [HA06P] 『れっつ ふぁらんどーるっ☆(仮)』 まとめ版

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Date: Sun, 05 Dec 1999 21:54:23 +0900
From: 瑠璃 <lurimu@geocities.co.jp>
Subject: [KATARIBE 16743] Re: [HA06P] 『れっつ ふぁらんどーるっ☆(仮)』 まとめ版
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 こんばんは、瑠璃です〜。
 こっちもまとめ版つくってみた。
 チェックしてない人は早めにつけてくださーい。
#特に、某氏っ。何度催促させれば気がすむんだっ!


 このあと、どうしましょう?
・風見アパートでの様子
・公演直前の楽屋
・公演風景〜演奏側から
・鑑賞光景(上に付け加える形?)
 をつけくわえて、休憩になるのでいいのかな?
 休憩からは璃慧ちゃんはフリーなので、客席に行って話している様子とか書
きたいかも。
 ってことで、
・休憩時間の様子〜璃慧視点
・大曲〜演奏側から
・大曲〜鑑賞側(上に付け加える形で)
・演奏後 雑談&お片付け
 って感じだと思う。
 さらに、打ち上げinマリカとかやってもいいけど(苦笑)

 ちなみに、参加予定者は
・白月悠、水瀬璃慧、雪丘望(演奏側)
・如月刹那、兼澤圭人(高校生)
・平塚(瑞鶴)
・フラナ、本宮、佐古田、八神(瑞鶴経由風見アパート)
・由摩、萌(小学校)
・美樹(璃慧&瑞鶴経由)
 だったっけ?
 ちなみに、登場場面が未定なのが圭人だったと思います。
 いきなり楽屋に現れるんでいいのかな?


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エピソード『れっつ ふぁらんど〜るっ☆(仮)』
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登場人物
--------
 水瀬璃慧(みなせ・あきえ):
     :創作に勤しむ言霊使いの高校生。最近オーケストラ部に入った。
 白月悠(しらつき・はるか):
     :璃慧のクラスメイト。
     :璃慧をオーケストラ部にひっぱりこんだ張本人。
 雪丘望(ゆきおか・のぞむ):
     :オケラのバイオリン担当
     :バイオリン弾くと人格変わるといわれてるけど、自覚無し 



管弦楽の季節到来
----------------

 某日、瑞鶴。
 どんどんと秋が進んでゆく午後。
 不意に、にゃあ、と猫が鳴いて起き上がり、本棚の前へと移動する。
 それが前触れであるように、からからと硝子戸が開いて。

 花澄     :「いらっしゃいませ」

 するっと入ってきた背の高い少女は、ちょっと戸惑ったように立ち止まった。

 女生徒    :「あ、と。あの……店長さんいらっしゃいますか?」
 店長     :「はい?」
 女生徒    :「このポスターなんですが」

 くるくると丸めてあった紙を広げる。

 店長     :「『吹利学校高等部管弦楽部秋季定期演奏会』……ああ、
        :もうそんな季節ですか(笑)」
 女生徒    :「それですみません、これを張らせて頂けますか?」
 店長     :「ああどうぞ。そこの……そちらの棚の横のほうが、レジ
        :の前よりも見やすいかな」
 女生徒    :「すみません」

 棚に貼ってあった、文庫、漫画の新刊案内を、別の棚へと移動して。

 店長     :「花澄、セロテープ」
 花澄     :「はいはい」

 目線より少し高い位置に、丁寧に紙を伸ばしながら張りつける。
 ホルンとヴァイオリンを組み合せた図柄が、丁度中世のイコンにありそうな
文様じみて見えた。

 女生徒    :「あと、これなんですが……」
 店長     :「?」

 鞄から、細長い封筒を引っ張り出して。

 女生徒    :「これ、チケットなんですが」
 店長     :「これがないと入れませんか?」
 女生徒    :「はい、一応」
 店長     :「と、すると、これはポスターのところに置いといた方が
        :いいのか……」

 ちょっと考えてから、店長はポスターに向き直った。

 店長     :「花澄、これよりもう一回り大きな封筒あったっけ?」
 花澄     :「えーと……あ、はいはい」

 レジの後ろから引っ張り出した少し厚手の封筒の上部を、ハサミでざっくり
と切り取る。まずその封筒をポスターの斜め下に張ってから、店長は受け取っ
たチケットをその封筒に入れた。

 花澄     :「店長、その封筒に、御自由にお取り下さいって書いたほ
        :うが良くないですか?」
 店長     :「あ、そうか」

 茶色の封筒に、出来るだけ大きな字で書き込んで。

 店長     :「公演日は……11月6日ですか?それまでこうやって張っ
        :ておきますから」
 女生徒    :「ありがとうございます」
 店長     :「その後は、こちらで剥がしておきますが……ポスター回
        :収されますか?」
 女生徒    :「いえ、そのまま捨てちゃってください」
 店長     :「はい」

 有難うございます、と、はずみを付けるように、女生徒が頭を下げた。

 花澄     :「あの、貴方も何か演奏されるんですか?」
 女生徒    :「はい、ヴァイオリンを」
 花澄     :「わ、凄い……」

 その昔、「ヴァイオリンなんて、体が大きくなる度に買い替えないといけな
い楽器は習わせられません」と言われて以来。
 どうも花澄にはヴァイオリンコンプレックスがあるらしい(笑)

 花澄     :「演奏、頑張って下さいね(にこにこ)」
 女生徒    :「ありがとうございます」

 長身を柔らかく曲げて、もう一度お辞儀をすると、女生徒は硝子戸を丁寧に
滑らせて出ていった。

 花澄     :「……もう、そういう時期なんだ(笑)」
 店長     :「演奏会の秋、かな」

 すこしめくれたポスターの端を押さえつけて。

 店長     :「今年くらいは、聞きにいってみたいな」
 花澄     :「あ。じゃ、店番してるけど?」
 店長     :「土曜日の……3時か。そう長い時間でもないし……頼も
        :うか」
 花澄     :「了解(笑)」


ある日の休み時間……
--------------------

 由摩は、ふと職員室前の掲示板のところを通りかかる。
 何気に、掲示板を見ると、一つのビラが目に入った。

 由摩    :「……んーと、高等部で秋の演奏会……ふーん……」

 演奏会は、高等部のオーケストラ部がメインで演奏するらしい。
 もっとも、普段から音楽に親しんでない由摩にとっては、あまり興味のない話
かも知れない。
 由摩は、そのまま立ち去ろうとすると、ふと何かが思い浮かんだ。

 由摩    :「……あっ、そうだっ!!」

 そして、由摩はスキップを踏みながら教室へと戻っていった。

教室……
--------

 午前中の授業が終わって、今度は給食の時間。
 由摩は、いつもの様に、萌と真実と共に給食を取ることにした。

 由摩    :「ねえねえ、萌ちゃん。」
 萌     :「なーに?」
 由摩    :「今度の土曜日に、高等部で演奏会があるんだってっ♪」
 萌     :「ふーん……で、由摩ちゃんは行く気なの?」
 由摩    :「うんっ、行くよっ☆」
 萌     :「由摩ちゃんって、そういうの興味あったんだ」
 由摩    :「ぜーんぜんっ♪」

 萌と真実は、一緒にズッコける。

 萌     :「えっ(汗)……じゃあ、何で行くの?……知り合いがいると
       :か?」
 由摩    :「ううん、そーじゃなくて……ほら……」

 由摩は、そう言うと、二人を手で合図して耳打ちする。

 由摩    :「高等部ってさ、まだ探検してないじゃん♪」
 萌     :「……やっぱり、そういうことなの(汗)」
 由摩    :「うんっ♪、そーいうこと、そーいうこと。」

 由摩は、クスクスッと微笑んで、パンをひとかじりする。
 萌は、由摩が好奇心旺盛なのは知っていた。
 つまり、演奏会を口実に、高等部を見学するということなのだ。

 由摩    :「ねっ?グッドアイデアでしょ?(くすくすっ)」
 萌     :「うーん……面白そうだね(にこっ)」
 由摩    :「真実ちゃんはどうする?一緒に行く?」
 真実    :「うーん……私、土曜日用事があるの……」
 萌     :「そう……残念だね……」
 真実    :「ごめんね……」
 由摩    :「ううん、気にしないでよっ」
 萌     :「じゃあ、土曜日に高等部探検だねっ(にこっ)」
 由摩    :「ううん、『演奏会』に行くのよっ、もっとも、『迷ってあっ
       :ちこっち行く』かもしれないけどねっ♪」

 こうして、給食の楽しいひと時は過ぎていった。


芸術の秋ですから
----------------

 フラナ   :「花澄さん、これお願いっ(^^)」
 花澄    :「はい、税込みで720円になります(にこにこ)」

 ほぼ日課のように大学帰りに瑞鶴に立ち寄るフラナである。だからという
わけでもないが、店内の目新しいものにはすぐ反応する。

 フラナ   :「またポスター増えたんだね」
 花澄    :「ああ、吹利学校の定期演奏会のお知らせね」

 芸術の秋、食欲の秋、運動の秋。なにかとイベントが多い時期。店内の数
カ所に各団体の学園祭や演奏会の開催の知らせや宣伝ポスターが数枚張られ
ている。

 フラナ   :「管弦楽部の定期演奏会かぁ……行ってみよっかな」
 花澄    :「ああ、そういえば、フラナくんや本宮くん達もみんな高
       :校の頃吹奏楽部だったよね。」
 フラナ   :「うん」
 花澄    :「よかったら、本宮くんや佐古田くんにもどうかな?チケ
       :ットはまだ余裕あるみたいだから」
 フラナ   :「ホント?じゃあもとみーの分と佐古田の分と……そうだ!
       :アパートのみんなも誘ってみようかなぁ、いい?花澄さん」
 花澄    :「行きたい人がいたらそれで構わないし、余ったチケット
       :は戻してもらえればいいから大丈夫」
 フラナ   :「ありがとっ!(^^) じゃあ何枚かもらっていくねっ」


慌しい公演当日の朝
------------------
 11月6日。
 ほとんどの人から見れば、今日は11月の第1土曜日でしかない。
 しかし一部の人間にとってはとても大切な日なのだ……

 朝から音楽室には人が集まり、真剣な表情を見せている。
 楽器を手に取る者、楽譜を何度も見なおす者、開き直ったかのように平然と
している者。行動はさまざま。
 しかし、彼らの頭の中に渦巻いているのはただひとつ。
 すなわち……秋季定期演奏会、いわゆる『公演』の本番が、今日の午後3時
からだということだけ。
 同じ吹利学校の初等部、中等部はもとより、周辺の学校にも数枚ずつのビラ
とチケットがすでに配られている。
 
 そんな音楽室の片隅に、楽器を手にたたずむ少女がふたり。
 ひとりはヴァイオリンを、ひとりはクラリネットを持っている。
 ……水瀬璃慧と雪丘望。

 璃慧     :(楽譜をめくりながら)
        :「……あー、もう、あと一ヵ月はほしいっ」
 望      :「(苦笑) そだねぇ」
 璃慧     :「だって〜(泣)
        :やっぱり、一ヵ月でのるのって無理(汗)」
 望      :「(汗) まぁ、全部のるわけじゃないし(汗)」
 璃慧     :「そーだけどさぁ……」

 言葉を交わすふたり。
 しかし、お互いに愚痴をこぼすだけ時間の無駄だと思ったらしい。
 望は弓を持ちなおし、弦に指を滑らせて。
 璃慧はほおをぷっとふくらませ、クラリネットを吹きはじめた。

 望      :「僕だってさぁ……」

 鏡の前で姿勢を確認しながら練習する望のこぼしたひとこと。
 ……まぁ、自信を持って本番にのぞめる人間など、そういないだろうが。

 璃慧     :「……そーいえばさ、悠、こないね」
 望      :「こないねぇ」
 璃慧     :「まぁた、遅刻すれすれにくるのかな(汗)
        :ま、本番に休みはしないでしょ」
 望      :「……休んだらあとで刺されるよ(汗)」

 しばらくして。
 きんこんかんと、始業を告げるチャイムが鳴り響く。
 チャイムが鳴る前に音楽室を飛び出していた人間は……皆無だった。

 璃慧     :「あー、片付け片付け(汗)」
 望      :「急がなきゃ(汗)」

 練習に興じて時間を忘れていた人間ばっかし(汗)
 みんな、手早くしかし丁寧に楽器を片付け、音楽室から逃亡。

 璃慧     :「さっきの……本鈴だよね?」
 望      :「……たぶん、っていうか絶対」
 璃慧     :「1時間目は……英語1……(汗)
        :……なぁんで、公欠、3時間目からなのっ(汗)」
 望      :「そう決まっちゃったからねぇ(汗)」

 教室への廊下を急ぐ。
 と、目の前を見覚えのある姿が横切り、教室に駆けこんだ。

 望      :「あれ、いまのって……」
 璃慧     :「悠だ……(汗)」

 教室に入ると、出欠を取っている真っ最中。
 しかし、璃慧は女子の真ん中の方、望にいたってはほぼ最後である。
 名前を呼んで出欠を取ってくれる授業では、そんなに急ぐ必要がない。

 悠      :「(はぁ……間に合った……
        :なんで今日に限って寝坊したのかな……)」

 全員の出欠を確認したあと、つつがなく授業ははじまった。


今日に限って……
----------------
 1時間目が終わったあとの休み時間。
 次の時間が体育なので着替える。

 璃慧     :「悠……なんで、今日に限って(汗)」
 悠      :「ごめんっ」
 璃慧     :「まぁ、べつにいいけど
        :……なんでほんとに、体育が2時間目なんだよお(泣)」

 だね、といいかけた望の目は、黒板に貼られた連絡の紙に向けられていた。
 書いてあることを読んで、力ない笑みが浮かぶ。

 望      :「……いま気づいたけど、3時間目調理実習(汗)」
 悠      :「4時間目休むと数学ついてけなくなる……」

 調理実習は……さすがに休んだ分を取り返すというわけにもいかないし……
 天が与えた2時間という公欠は、どうやらマイナスに働いたらしい。

 璃慧     :「数学なんてどーでもいいよ(きっぱり)
        :どーせ、授業聞いてないし〜。調理実習だってなあ……」

 言いかけて気づく。

 璃慧     :(あ、でもなあ……。
        :料理は少し勉強しときたいんだよね)

 と、いくら願ったとしても、時間割が変わるはずもなく。

 璃慧     :「あ”〜! なんでなんだよお(TT)」

 望      :「……世の中そんなものだよ……」
 悠      :「……そだね……」

 2時間目の体育は、バスケットボール。
 コート面で、シュート練習などしていると。
 聞き覚えのある音色と旋律が聞こえてくる。

 悠      :「あ、トランペットの音……」
 璃慧     :「あそこ、音楽室……ってことは、おけらの人??」
 望      :「……そーいや、どっかのクラス、
        :1、2時間目が休講だっけ」
 璃慧     :「あー、うらやましいっ……練習したいよお(泣)」
 悠      :「……とりあえずさ、突き指しないように、
        :気を付けよ?」
 璃慧     :「だね(汗)」

 こうして、とりあえず受ける義務のある2時間は乗り切ったのであった。


もう、体力勝負っ
----------------
 体育が終わって、着替えを終わらせて。
 指示のとおりに音楽室に行くと、もうみんな揃っていた。
 部長がプリントの指示をもう一度読み上げて、あとは各々仕事についた。
 公欠2時間+放課後のわずかな時間で、準備を完了させなければならない。

 璃慧     :「女子は木箱運び……だっけ?」
 望      :「うん、男子はパーカッション運ぶからね」
 璃慧     :「腕、もつかなぁ……」

 3、4時間目に教室で授業のないクラスから木箱を持ってくるのが仕事。
 黒板の前を一段高くするために、各教室には木箱が3つずつ置いてある。
 この木箱を会場となる体育館に運んで、ステージの上で金管用に組むのだ。

 望      :「悠、そっち側持ってー」
 悠      :「あ、うん」
 璃慧     :「うわ、重そー……」

 まぁ、60×150×30の、けっこう頑丈な木箱である。重くないはずがない。
 その証拠に、あっちこっちで「ちょっと待って、腕が……」という科白が。

 璃慧     :「(いまこんなことやってたら、本番で楽器を持つだけの
        :力が腕に残らないよお……)」

 とは、木箱を運びながらの璃慧の心のつぶやき。
 体育館に木箱を持っていくと、男子がそれを受けとって、積みに行った。
 昨日みんなでシートをひいて、椅子並べをした体育館。
 いつもと違うたたずまいを見るだけで、緊張はつのる。

 木箱を運んで、合間にお昼を食べて、練習をして。
 あっという間に午後になった。
 この時間になると、OB・OGも顔を見せはじめる。

 体育館前に貼り出された宣伝。
 白い紙にくっきりと書かれた『秋季定期演奏会』の文字。
 いったいどれくらいの人が、見にくるのだろうか……?

(題未定)
----------
 一時……一時十五分……一時半……
 時間は確実に過ぎて行き、開演時刻がせまる。
 保護者会のおかげで本番一時間前まで会場に入れないため、音楽室にて。
 本番を目前にすると、逆に度胸が据わるものらしい。
 みんな、楽器をそばに置いて、談笑に花を咲かせている。

 璃慧     :「あ、望くん、かわいい〜♪」

 公演の正装である白のブラウスと黒のロングスカートに身を包んだ望。
 長身で華奢なため、とても優雅で、ヴァイオリンを持っていると絵になる。

 悠      :「ほんと……似合ってるよ」
 望      :「そう……かな……」
 璃慧     :「うんっ♪」

 音楽室でいつもいっしょに練習している人々がみんなそういう服装なのは、
ちょっと奇妙な気分だけど。
 『公演の雰囲気』を纏っていられるみたいで、落ちつける。
 
 一時四十五分頃。
 関係者は全員中にいるはずの音楽室のドアが、外から開いた。
 来訪者に、視線が集中する。
 
 刹那     :「(うっわ〜、な〜んか入りづらい雰囲気〜)」
 悠      :「あ……刹那だ……」(璃慧と望をつっつく)
 璃慧     :「あ、やっほ〜♪」
 望      :(手を振って)「やっほ〜」
 刹那     :「や!」

 見知った顔を見つけて、安心したらしい。
 人のあいだをすりぬけて、あっという間に奥まで来た。

 悠      :「……なんで、来たの?」
 刹那     :「なんでって……ひまだったからだけど」
 望      :「よく、へーぜんとここにこられるよね……(汗)」
 璃慧     :「普通は寄りつかないよ(苦笑)
        :……って、刹那も普通じゃないか(笑)」
 悠      :「オケラ人を取り巻くオーラが恐いとか、
        :いろいろ言われてるよね……」
 刹那     :「べつに? そりゃ、輝たちがいなかったらこないけど」
 璃慧     :「……本番、聞きに来なくていーからねっ(力強く)」
 刹那     :「へっ?」
 望      :「うん、こなくていい(汗)」
 刹那     :「へー(汗)」
 悠      :「たぶん、聞きにきたらまた寝るよ?」
 刹那     :「うっ……(汗)」

 文化祭の時に室内楽を聞きに来た刹那は、途中で睡魔に屈したらしい。
 まぁ騒がしいお祭り音楽の『ファランドール』ならともかく、ゆったりと流れ
るワルツである『ドナウ』では寝る可能性高し。

 刹那     :「かもしれない……(汗)」
 望      :「あはは、まぁ、好きなようにして」
 刹那     :「…………まあがんばれ!」
 璃慧     :「……結局来るの(汗)?」
 刹那     :「わっかんない」
 璃慧     :「こらっ」
 刹那     :「だって〜、まあ、くるかもしれない」
 悠      :「じゃ、とりあえず」(チケット渡す)
 刹那     :「おう! まぁでも、聞いても寝そうだしなあ
        :……輝たちの正装姿も見たし帰ろっかなぁ」

 まあ気分で決める、という一言を残して、刹那は音楽室を出ていった。

 璃慧     :「正装……か」

 ふっと、かすかに笑って。つぶやく。

 璃慧     :(かむにゃに……見せたかった……な。
        :見たら、どーするかな)」

 呼べば、来てくれただろう。でも、声をかけなかったのは。自信がなかった
から。下手な姿、見せたくないから。
 なのに…………。一方で来て欲しいと願っているのに気付いて。
 そんな自分に、苦笑。


(題未定)
----------
 そして、二時。会場に楽器と楽譜を持って移動を開始する時間。
 各々自分の楽器を抱えて、足早に体育館に向かう。

 由摩     :「……? あっ♪」
 萌      :「どうしたの?」

 昼に打ち合わせていたように、高等部を名目つきで見学にきていた由摩の視線
の先には、悠、望と談笑しながらこっちに向かってくる璃慧の姿があった。
 いたずらっぽい笑みを浮かべて、由摩は急に走り出した。

 萌      :「あっ、由摩ちゃんっ」

 萌もそれを追う。
 前方で展開されていることには気づかず、そのまま歩いてくる璃慧たち。

 由摩     :(たったったっ……抱きつきっ)
        :「璃慧ちゃんだぁ〜〜♪」
 璃慧     :(思わず振り払う)「きゃっ!」

 歩いてきた璃慧に抱きつく由摩。
 しかし、過度の敏感肌の璃慧。
 相手に悪気はなくても、抱きつかれると、とってもくすぐったい(汗)
 反射的に振り払ってしまう。
 そして。抱えていたクラリネットと楽譜が宙に舞う。

 悠      :「あ〜〜っ、楽器っ(汗)」
 望      :「あっ、と」

 後方にいた望が楽器をナイスキャッチ。

 悠      :(楽譜を拾いながら)「望くん、ありがとっ」
 萌      :「あ……ごめんなさいっ、手伝います」

 悠と追いついてきた萌は散らばった楽譜を拾い集める。
 振り払われた由摩はというと。

 由摩     :「ひっど〜〜〜い」
 璃慧     :「あ(汗) えっと、由摩ちゃん、だっけ(汗)」
 由摩     :「うんっ♪」
 璃慧     :「ごめんね、くすぐったくて(汗)」
 由摩     :「ううん、気にしてないよっ♪(にこっ)」

 けっこうご機嫌である。


 由摩     :「ねぇねぇ璃慧ちゃん、綺麗な格好して、
        :これから何するの?」
 璃慧     :「……(汗)」
 由摩     :「??」
 璃慧     :「初等部にも、貼ってなかった?
        :って普通、あんなもの見ないか……」

 部員にあんなもの呼ばわりされるポスターくん。
 公演が終わったあとも、浮かばれないだろう(汗)

 璃慧     :「オーケストラ部がね……今日、発表会なの」
 由摩     :「ほえっ?そうだっけ?……璃慧ちゃんも出るの?」
 萌      :(小声で)「お昼休みに自分で言ってたでしょ」
 璃慧     :「うん……」
 由摩     :「じゃあ、もしかしたら聞きに行くかもねっ♪」
 璃慧     :「え゛……(汗)」
 由摩     :「じゃーねっ☆ いこっ、萌ちゃん」
 萌      :「あ、うん」
 悠      :(小さく手を振って)「ばいばい(にこっ)」
 望      :「ばいばい」
 由摩     :「ばいば〜い☆」

 由摩たちに手を振る二人をよそに、璃慧は固まっていた。

 璃慧     :「(う゛……なんか切実にやな予感……
        :知り合いがいっぱい現れたり……しないよねぇ……)」

 それは神のみぞ(?)知る。


楽器と人と〜瑞鶴店長の視点より
------------------------------

 舞台から数列離れた席に座ってから、あたりを見まわした。
 結構、人が入っている。そのうちのある程度は演奏者達の家族が占めている
のだろうが。
 すうっと、彼の斜め前を横切った人影があった。
 あれは……うちの常連の一人だ。
「あ、こんにちは」
 座ろうとして向こうも気がついたらしい。
「こんにちは」
 成程、と納得する。フラナがまとめて数枚持っていった後、数日経つといつ
のまにか券が消えていたのだが、多分その一枚はこの常連さんが持って行った
のだろう。
 案外……聞きに来る人がいるんだな、と。
 納得してから、苦笑する。
 案外などと言ったら、演奏する面々はさぞ怒ることだろう。

 入り口で手渡されたプログラムを開いて、眺める。
『1:美しく青きドナウ:J.シュトラウス』
『2:ファランドール(「アルルの女(第二組曲)」)ビゼー』
『3:交響曲第36番:リンツ:モーツァルト』

 ちょっと、考える。
 1と2は、これはもうかなり有名な曲なのだが……
3は……どんな曲だったろうか。

 プログラムを開く音。人を探しているらしい声。すみません、と、小さな声。
 その全部が合わさってざわめきになる。世界一流のオーケストラの演奏会で
も、高校の演奏会でも、それはやはり同じようなざわめきだ、と思う。
 日常から、数時間の非日常に移り変わる為の、準備の数分かもしれない。

 ブザーが鳴る。
 幕の後ろから現れる……演奏者達。きゅっと、緊張し切った顔をして。
 タクトが揺れる。
 曲が始まる。
 なかなか……上手い。

 高校くらいの管弦楽の演奏では、時折、管楽器と弦楽器の間に差がある。
 管楽器というのは、大概の場合二桁の年齢になってから習い始める場合が多
いという。これは管楽器を演奏するのには、それくらいの体格が必要だから、
ということらしい。
 それに対して、弦楽器のうちでもヴァイオリンなどは、幼稚園に入る前から
練習を始める人々もいるわけで。
 そういう人が一人いるとこれはかなり目立つ。
 とすると、ヴァイオリンを弾いている彼女も、その類なのだろう。
 背の高い、女生徒。瑞鶴にポスターをはりに来た顔なので覚えがあるのだが、
それ以上に、演奏する姿が目立つ。
 ヴァイオリンが、軽い。
 軽い、というのは変かもしれない。が、弾いている姿が楽器を負担としてい
ない、という印象を受ける。楽器に振りまわされるのではなく、楽器を弾いて
いる、という……
 
 斜め前の席の頭が、ぴょこん、と起きあがった。
 起きあがるまでは気がつかなかったのだが、どうやら今まで眠っていたらし
い。
 ドナウ……眠くなる曲にも聞こえないのだが。
 中学生か、高校生か……つまりは夜更かし組なのだろう。多分友達が演奏し
ているのだろうが……
 見つかっていたら、あとで怒られるだろうに。
 曲のほうは終盤。フルートの少女がひどく真剣な目をして指揮者を見ていた。


 そして、ファランドール。
 乗りの良い曲だけに、演奏している面々もその勢いに乗っかっているのがわ
かる。金管楽器の面々が特に。
 しかし、やはり目の前に演奏者を見つつ聞くと、曲の難易度……というか、
難しい部分が良く分かる。金管が高らかに音を響かせる合間の、細かい刻みの
繰り返し部分は……これは、多分、演奏している木管楽器の面々にとっては厄
介な部分だろう。テンポが速い上に休みが無い。
 クラリネットを吹いていた小柄な女生徒が、パートの切れ目に、ちょっと顔
をしかめて右手に視線を流し、素早い動きで結んで開いた。
 よほど手が凝ったのかもしれない。

 そして、トリの部分の、全楽器の渦巻くような音。そして最後の三音。
 ぱん、と歯切れ良く最後の音が決まって。

 一瞬沈黙。そして拍手。
 必死だった顔が、ふうっとほころんで。

「これで、第一部を終わります。休憩は10分です」

 アナウンスが流れた。

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 いじょ。
 であであ〜。




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瑠璃(Lurimu)
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翼ひろげて 〜夢幻界への誘い〜
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(http://www.geocities.co.jp/Bookend/1229に移転中)

    

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