[KATARIBE 16723] [HA06N] 『残詠。』

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Date: Fri, 03 Dec 1999 22:25:10 +0900
From: 不観樹露生 <fukanju@trpg.net>
Subject: [KATARIBE 16723] [HA06N] 『残詠。』
To: ML <kataribe-ml@trpg.net>
Message-Id: <3847C4B60.F7CBFUKANJU@sv.trpg.net>
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ども、不観樹露生@HDD内、未発表物整理中(汗) です。はい。

 狭淵邸の居候、美数ゲッターにしか見えない幽霊、琴の話です。

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『残詠。』
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反魂師
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 わたしは、狂っているのだろうか?
 わたしは、何かを見失っては居ないのだろうか。
 心臓の鼓動。
 まだ生きている。

 彼は、目を覚ました。世界には、悲劇があることを。世界には、
自分以外しかいないということを。

 琴。
 わたしの琴。

 彼は起き上がる。全てが無と帰す前に。
 朝日は、白々と県営住宅を照らしている。
 真新しいのは建築物か、日の光か。
 ニュータウンの真ん中の公園は、日光に照らされて。
 幻想のように、白茶けて。

 山は切り崩され。
 そして、人々は。
 大越国の戦争をニュースでだけ眺め。

 琴。
 わたしの琴。
 わたしの。琴。



魂魄
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 消えてしまった。あたし。
 消えてしまったのが、あたしなのなら。
 今ここで考えているのは、だれ?
 あたしは消えてしまった。それだけは確かなのに。
 確かなのは。それだけなのに。

 とうさま……………?

 あたしはとうさまのために………



東吹利ニュータウン
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 白っぽい埃が立つのは。
 コンクリで固めたこの新都市が、山を削り、谷を埋め、人為的に
造成されてできたという証。
 風。流れる砂埃。
 この土地の風水は、新都市の街路によって複雑にねじ曲げられ。
コントロールされ。
 だから。
 この場所に居続けることは。消耗すること。
 自然と都市と。風と水と地脈の流れを微妙に操り、精妙な生命を
その魂魄を芸術品のように弄ぶ事によってのみ生きながらえる反魂
師にとっては。

 何もかも失われてしまっている証拠に。
 かつて妻と娘と三人で過ごしたあのアパートは、人々の記憶の中
にすら跡形もなく。
 そして、古都から古都へ。千年の都からこの風の都へ。流されて。

「沢野鉄舟」

 戸籍係は、わたしを見下ろして、わたしの名前を呼んだ。
 わたしには、もう力は残されていない。

「内規により。あなたを処分します」

 静かに力がわたしの魂を消し飛ばし。
 そして、わたしの最後の反魂は……………



古都…………あるいは、琴
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「とう…………さま?」
 ゆっくりと。古い街の小さな路地裏で。
 あてどなく数を数えながら、あたしは夢見る。
 だれも、あたしを見ない、この路地で。
 いつか、本当に消える日を夢見て。

                                                       (Fin)

登場人物
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沢野 鉄舟:反魂師
沢野  琴:鉄舟の娘
戸籍係  :戸籍係

時系列
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1973年8月ごろ

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 とゆーわけで。
 父親の術により、幽霊として存在するようになったという話でした(汗)

 ではでは。


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不観樹露生(ふかんじゅ・ろせい)    11月の標語
fukanju@trpg.net           全てを見ること。
UIN:21125410            そして生きて帰ること。
http://www.trpg.net/user/fukanju/  それが偵察機の戦い。
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