[KATARIBE 16527] Re: [HA06P] EP: 『ある日、道端で……』完成版

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Date: Mon, 22 Nov 1999 06:37:55 +0900
From: 瑠璃 <lurimu@geocities.co.jp>
Subject: [KATARIBE 16527] Re: [HA06P] EP: 『ある日、道端で……』完成版
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 こんばんは、瑠璃です〜。

 これで一応、完成版……かな?


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エピソード『ある日、道端で……』
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登場人物(あるいは登場猫)
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 るりるり:人語理解能力を持った鉱物猫。

 水瀬璃慧(みなせ・あきえ):
     :人見知りな高校生の言霊使い。創作が趣味。

 白月悠(しらつき・はるか):
     :璃慧の親友。かなりの人見知り。

 向坂次郎(さきさか・つぎお):
     :世話好きなおっさん。紫苑にあげるための煮干しやら何やらを
     :常に持ち歩いているらしい。この後猫に惚れてしまう変な奴。

 伊佐見由摩(いさみ・ゆま):
     :いつも元気いっぱいの小学生。光ファイバー娘。

 更毬剽夜(さらまり・ひょうや):
     :教えたがりの理論魔術師(サラリーマン)


ねこと少女たち
--------------
 よく晴れたある秋の日のこと。
 おとなしそうな少女が二人。
 璃慧と悠。
 いつものように、とりとめのないこと、話しながら、
 人気もほとんどない静かな路、ゆっくりと歩いていると。

 るりるり   :「にゃ〜〜」

 ないている一匹の猫。
 まだ、子猫だろうか。かなり小さめ。
 でも、真っ白な毛と瑠璃色の澄んだ瞳は、どこか凛としていて。

 るりるり   :「にゃ〜〜(悠の方に)」

 悠たちを見て、逃げないどころか、よってくる。

 悠      :「あ……可愛いっ」
 るりるり   :「ふにゃあ(ごろごろ)」
 悠      :「可愛い〜」(そっと手を伸ばす)
 るりるり   :「にゃ〜〜〜〜〜〜」
 悠      :(そっと抱き上げて撫でる)

 小さな甘えん坊の猫と。それを撫でている悠と。
 微笑してみている璃慧。
 ふと、思い出す。
 いつか、こんな猫を見たな、と。
 そう、こんな不思議な猫、そうはいない。
 そう、真鶴公園で見た、あの猫。

 璃慧     :「あ、あの時の猫か〜(なでなで)」

 とか、かわいがってると。

 るりるり   :「ふにゃあ……(何かをねだってるような声)」
 悠      :「? なあに?」
 るりるり   :「にゃ〜〜〜」
 璃慧     :「? おなかすいてるのかなあ?
        :(るりるりから向き直って)悠、なにかもってる?」
 悠      :「……うーん、食べ物はちょっと……
        :飴くらいかなぁ……」


通りすがる人々
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 どうしようか、と言うところに。とおりすがる男性。
 知らない人だけれど、あまり怖さはなかった。

 剽夜     :「子猫に牛乳をあげるとお腹を壊すときがあるから、
        :注意するよろし」
 璃慧     :「?? (声がした方を驚いてみる)」
 剽夜     :「いや、通りすがりの戯言と思ってくだされ」

 そうしていると。また一人。

 向坂     :(とおりかかる)「猫か……」
 るりるり   :「ふにゃあ………………」
 向坂     :「お嬢さん達、ほれ、これねこにやってくれ」
        :(煮干し出す)
 璃慧     :「あ…………、すいません…………(消え入りそうな声)」

 紫苑用に持ち歩いていた煮干を差し出す向坂。
 少女たちは、煮干を持ち歩いている男性を不思議に思いながらも、
 おそるおそる受け取って。

 璃慧     :「ほらっ(しゃがみこんで、手の上に煮干)」
 悠      :「…………ありがとうございます(向坂さんにぺこっ)」
 るりるり   :「にゃ〜(ぱくぱく)」
 向坂     :「いやぁ、どうせ別の猫にやる為の餌だし」
 るりるり   :「(食べ終わって)にゃ〜〜(向坂さんの方にとてとて)」
 剽夜     :「浮気はおとこの甲斐性ですかな」
 向坂     :「ほれほれ(抱き上げる)」
 るりるり   :「にゃ〜〜♪」


種類は……?
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 向坂     :「んー、結構毛並みがいいなぁ……種類は何だ、ん?」

 ふと。
 るりるりのほうを向いて聞く向坂。
 そんなこと通じる訳ない、誰もがそう思っているけれど……。

 るりるり   :(…………………………わたしは………………)

 気が付いたら、意識があって。
 それが二月ほど前のこと。
 どうやら鉱物に変身できるらしいこと、彫像が本来の姿であること、
 人間の言葉を、学問とかとしてではなく、直感として理解できるらしいこと、
 でも、それは普通じゃないらしいこと……
 いろいろ知っていくと。
 どんどん謎がふえてくる。
 でも、どうすることもできなくて。
 理解することはできても、人間の言葉、話せないから……。

 るりるり   :(必死で、考えることやめようとしてたのに……
        :何も知らないこの人を責めるべきではないのだろうけど……)

 でも………………


 向坂     :「んー、かわいいな〜〜ほれほれ」(耳の後ろすりすり)
 るりるり   :「ふにゃあっ」

 ふにゃあ、と。その心地よさに身を任せて。
 そう、忘れようよ。
 辛くなるから。
 これ以上考えるのはやめよう。
 頭の中から強引に締め出して、無理に笑った。


集う者たち
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 気が付くと、最初にきた背の高い青年は去っていってた。
 そしてまた一人、今度は小学生くらいの女の子が通りかかる。
 璃慧たちとは対照的に元気いっぱいで。

 由摩     :「わーい、ねこーねこー♪」
 るりるり   :「にゃ〜(幸せっ)」

 そう。今が幸せと言える環境にあるなら。
 それでいいじゃない。
 自分に言い聞かせて、ようやくでた笑いは。
 ようやく心のそこからの明るさ。

 一方璃慧と悠は。
 そんなことには気づくはずもなく。

 璃慧     :「あれ、あの時のこかなあ……」
 悠      :「お知り合い?」
 璃慧     :「うー、顔見知りって言うのかなあ……」
        :この前この猫にあったんだけどね。その時、一緒にいた人。
        :かむにゃは、伊佐見さんって教えてくれたかな……」

 少女の方を見て。
 思い出したこと、小声で悠に伝える。

 悠      :「ふーん……神酒さんもいたの? ご縁があるんだね」
 璃慧     :「だね(笑)」

 にっこりと笑って返す。
 かむにゃ、また、通りがからないかな、と。
 ふと思ったのは秘密。
 そんな感情に、璃慧自身戸惑いを覚えていた。

 でも、そんなことはすぐに忘れて。

 璃慧     :(あの時も、結構人が集まったよなあ。
        :こいつには、人を引寄せる何かがあるの……かもね)

 と、るりるりを眺めて。優しく笑う。
 そのそばには、煮干を持っていた男性と、少女と。
 不釣合いな二人だけれど、どうやら知り合いらしい。

 由摩     :「ねこねこー♪」
 向坂     :「ほー、由摩ちゃんも抱いてあげるか? ほれ」
 向坂     :(由摩にそっとるりるりを渡す)
 由摩     :「♪〜」
 るりるり   :「にゅ?!!」
 由摩     :「なでなで〜〜〜〜〜♪」
 向坂     :「抱き方間違ってるぞ………それじゃ猫が苦しがる」
 由摩     :「ほえ?」
 向坂     :「こうやるのだ(と、なおしてやる)」
 由摩     :「るんっ♪」

 璃慧と悠は、すっかり、ほのぼのしている二人+一匹を
 微笑みながら見ていた。


そして日は沈む
--------------
 向坂     :「あ、すまんな……お前さん達の猫借りちまって」
 璃慧     :「あ、別に、誰の猫でもないですし…………」
 るりるり   :「にゃ〜〜〜」
 向坂     :「あら、そうなのか。懐いてるからてっきり飼い猫かと
        :思ったよ」
 璃慧     :「いえ、この前公園であっただけです……」
 由摩     :「かわいいねー(なでなで)」
 るりるり   :「ふにゃ〜(ごろごろ)」
 向坂     :「そうか………」
 璃慧     :「誰か飼ってくれる人が見つかると良いんですけど
        :ね……」
 向坂     :「お嬢ちゃん達の家では駄目なのかい?」
 璃慧     :「わたしの家は、犬がいますから…………」

 などと話していると。
 いつのまにか日も傾いてきて。

 璃慧     :「あ、じゃ、そろそろ帰りますね……
        :(悠の方を向いて)いこっ」
 悠      :「うん」

 会釈して去っていく二人。
 しばらくして、もう二人も去っていき。
 夕日が沈みかけた頃、るりるりはまた独り残されて。
 ねぐらへと帰っていった。



時系列
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 1999年10月初め。


解説
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 ようやく秋らしくなってきた頃。
 るりるりがいる道端に集う人たち。

 意識をもつようになってから二月あまり。
 自分の特異さと孤独が、気になってきた――


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