[KATARIBE 16475] Re: [HA06] 小説『紅い雪の記憶』第3章

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Date: Wed, 17 Nov 1999 17:11:44 +0900
From: Kakeru Aozora <kakeru@trpg.net>
Subject: [KATARIBE 16475] Re: [HA06]  小説『紅い雪の記憶』第3章
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かけるん@うぐぅ。ひさびさにたべたたいやきはたいやきのあじがするよぅ

第3章だにょ

狭間06小説『紅い雪の記憶』第3章
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転校生来たる
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 HR開始の本鈴が鳴る。かけるはいつものように本を読んでいる。本の上に影
かかかる。顔を上げる。
「やぁ」
 香澄が正面に立って本を覗き込んでいた。
「転校生来るのよね」
「あぁ」
「どんな子なんだろう」
「さぁ」
「たのしみだね」
「まぁ」
「むかしむかしやまのうえにいっぴきのからすが住んでいました」
「かぁ」
「ちゃんと聞いている」
「まぁ」
「はぁ」
 香澄はため息一つ。
「なぁ」
「なによっ」
「先生来ているぞ」
 香澄は慌てて振り返る。彼女の後ろに、教卓に上がった大山先生が香澄たち
を笑いながらみていた。ほかの生徒もいつのまにか着席している。
「わぁ。先生いつのまに」
「いいかげんHRはじめていいか」
「ったぁ。何で気がつかないのかな」
「んー。あんたってひとはっ」
 香澄は机に手のひらを叩き付けて。
「気がついていたら教えなさいよ」
「時間がないんだから座れHRがはじまらないだろうが」
 大山先生は香澄の席を指差す。香澄、しぶしぶ座る。
「みんな。昨日言ったとおり、今日は留学生が来る」
 クラス中に湧き起こる拍手。
「だからウェーブば止めろっての、相山っ」
「俺だけじゃないっすよ」
「おまえが始めたんだろうかっ」
「何の証拠があってだ」
「現行犯だっ」
 大山先生、気を取り直すように咳払いをして。
「というわけで、神無月美雪。入ってきたまえ」
 扉がゆっくりと開く。
 一礼して、金髪の女の子が入ってくる。髪が腰まである。
 顔を上げ、かけるの姿を認めると、少しだけ頬を上げて笑った。
 かけるは会ったことがある。先日駅で。
「はじめまして。神無月美雪と申します」
 訛りのない標準語である。
「日本人なの」
 クラスの一人がとなりの生徒にささやく。それを聞きつけたか美雪は。
「私の父が日本人なんです。母はイギリス人で。日本語は父から学びました」
 と答える。
「というわけで今日から2年7組の仲間になる。みんな仲良くするように」
「よろしくお願いします」
 かけるはそのころ、うんざりした顔で窓の外を見ていた。必然、香澄のほう
を見ることになる。
「何したの」
 香澄が尋ねる。
「あのタイプ苦手なの」
 小声で返す。
「何で」
「にゃぁ」
 猫の鳴きまねをして、右手で何かを引っかく動作をする」
「猫かぶり。どっかで会ったことでもあるの」
 かけるはうなずく。
「ところで席だが。よし。かけるの隣な」
 と大山先生が言う。
「は」
 聞き返す。
「美雪の席はかけるの隣だ」
「すみません、もう一度」
「美雪の席はかけるの隣だ」
「はぁ。何でですか」
「だってお前、美雪と知り合いだそうじゃないか」
 かけるは頭を抱える。
「知り合いって言ったって。一言二言話しただけじゃないですか」
「それでも知り合いに変わりはあるまい」
「よろしくお願いしますね。蒼月さん」
 かけるに向かって微笑む。
「先生。僕よりも相山君のほうが適任かと」
「だめ。じゃぁ、今日のHR終了」
そう言って大山先生は手を2回叩く。
「ああ、外に美雪の机があるから、中に入れてやれよ」
といって、元気付けるかのようにかけるの肩を叩いて職員室へと戻っていく。
 かけるはあきらめて机といすを廊下から持ってくる。
「すみません。みんな一人分ずつ下がってください」
 机を押し込んでいすを隙間に入れて、設置完了。
「ありがとう。これからよろしくね」
「一つだけお願いできますか」
「何かしら」
「後ろからいきなり怒鳴りつけないでくださいね」
「英国の女性はそんなことしませんわよ」
 と言いながら、かけるの爪先をかかとで踏む。
「あぐっ」
「ほら、そろそろ1時間目ですわ。そんなところに突っ立ってないで。あ、教
科書はまだないので見せてくださいね」
 とまくしたてて、座る。
「席替えはいつだっ」
「3学期までないわよ」
 香澄が笑いながら答える。
「香澄。席変わってよ」
「窓際はあったかいから却下」
 1校時の鐘が鳴る。
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蒼空かける                       kakeru@trpg.net

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