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Date: Wed, 17 Nov 1999 13:58:01 +0900
From: ごんべ <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 16464] [WP01N] 『高原の雨』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199911170458.NAA22344@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 16464
99年11月17日:13時57分58秒
Sub:[WP01N] 『高原の雨』:
From:ごんべ
ごんべです。
鞍馬の小説、超短編です。
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小説『高原の雨』
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登場人物
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岡崎 鞍馬 (おかざき・くらま)
:生まれながら人間離れした肉体を持つ小学生。終末の住人。
本編
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大気中の水分の結晶である突然の夕立は、先ほどまで熱気にあえいでいた高
原の町の気温をぐんと下げていた。
雨に煙る盆地の田園風景は見渡す限りただ寒々として、身体が感じる肌寒さ
以上のものを感じさせた。
白い雨空を見上げながら、鞍馬はとある軒先に立ちすくんでいた。
既に東京を出て何日も経っている。目的の町はすぐそこだ。
だが鞍馬にとってその旅は、まだ少しも進んでいないような気さえしていた。
自分はなぜこんなところまで来ているのだろう?
自分は何をしに行くのだろう?
自分はその時……どうするのだろう?
目的地に着くのが怖かった。
帰ることもできなかった。
ただ不安が彼の心をつかんで締めつけていた。
手は冷たく、心は寒く。そばにいて声をかけてくれる人もいない。
しかし。
自分で選んだこと。
自分で決めた旅。
元々、自分を理解できる人は限られている。
自嘲と諦めと後悔と……わずかな希望。何より、自分自身のこだわり。どう
なるかも判らぬその瞬間を、受け容れようと思う勇気だけは、まだ残っている。
そぼ降る雨はまだ冷たかったが、走れないほどではない。
深呼吸一つ。
鞍馬は、再び走り出した。
解説
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鞍馬の旅の途中の一コマ。目的を果たせる直前まで来ながら逆に不安に揺れ
動く、鞍馬の心を描写したものです。
小説『月光』のすぐ後の時期のものです。
時系列
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1999(2nd)年8月初め。
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以上です。それでは。
ごんべ
gombe@osk3.3web.ne.jp
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