[KATARIBE 16396] Re: [HA06P] 『朝市にて』仮編集版その1

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Date: Mon, 15 Nov 99 00:22:59 JST
From: kousaka@axe-inc.co.jp (Kenichi KOUSAKA)
Subject: [KATARIBE 16396] Re: [HA06P] 『朝市にて』仮編集版その1 
To: kataribe-ml@trpg.net
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In-Reply-To: Your message of Tue, 02 Nov 1999 22:55:49 +0900.	<199911021356.WAA01217@ns0.mahoroba.ne.jp>
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  こぉ%整形にこんなに時間を掛けてどうする(自爆)です。

とりあえず、ここまで整形しました。
投稿規約に準じて修正されたはずです、多分。

登場人物の紹介は独断と偏見で決めました。
導入部(?)は冒頭に登場順で配置しました。
修正お願いします。
--------10--------20--------30--------40--------50--------60--------70
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エピソード『朝市にて』
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登場人物
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 遠野勇那(とおの・ゆな)
        :幽霊の少女、風見アパート里見鏡介宅に住んで(?)いる。
 各務功(かがみ・いさお)
        :初めて朝市で野菜を売るふぁ〜ま〜。
 布施美都(ふせ・みと)
        :グリーングラスに居候している記憶喪失の少女。
        :胡乱な輩に命を狙われている。
 紫苑(しおん) 
        :水島孝雄の実験中に生れた不定形金属生命体。
        :美都の側に居て彼女を見守る。
 佐古田真一(さこた・しんいち)
        :風見アパートに住む、あやしいスナフキン兄ちゃん。
        :人見知りが激しく、余り喋らない。


早朝、風見アパート
------------------

 梅雨もようやく明けようかという初夏。陽がのぼるのも早い。
 5時には外に歩いて出られるほどに明るく、6時も過ぎれば日射しが眩しく
なってくる。
 夜の熱が冷め、涼しく過ごしやすい朝。

 新聞配達の単車が軒先のポストの間を駆ける音が聞こえる。
 ブィーン、ブィ……ブィーン、ブィ。
 一定間隔で発進、停車、発進、停車の繰り返し。
 不思議なことに、ほとんど音が乱れることはない。
 リズムのある音は、響くものでも何故か心地よい。

 ブィーン、ブィ……ブィィーン、ブィン。
 遠くに聞こえていた音が少しずつ近づく。
 ブィィーン、ブィン。がたん。
 ざくざくざく……ぎぃ、がた、がたん。
 風見アパートの共同ポストにも、いつものように新聞が投げ込まれた。
 ぎぃ……ざくざくざく。
 扉の軋む鈍い音が再び。
 ブィィーン、ブィン……。
 単車のエンジン音が遠くなっていく。
 早朝の、この静かな時間にだからこそ聞こえる音。
 皆に一日が始まることを知らせてくれる音。

 勇那ははやくから目を覚ましていて(いや、彼女はそもそも眠らないのだ)、
それらの音をひとり楽しんでいた。
 一日が始まる。
 朝も昼も夜ももはや関係のない彼女だが、自分自身に関係ないからといって
放棄してしまう気にはなれない。
 朝はその日一日が始まる大切な時間。
 生きている者が起きだし、それぞれの生活を感謝とともに始める時間。
 幽霊になった自分にも何故か同じように感謝の気持ちを呼び起こす。
 朝の音、朝という時間。

 同居人の鏡介はまだ眠っている。
 死んだよう……という形容がぴったりであるかのように、ぴくりとも動かず。
 彼の生活は……残念ながら世間一般とずれていることがほとんどだ。
 明け方近くまで起きていて、昼過ぎまで寝てしまうことも少なくはない。
 
 今日は日曜日だったと思う。
 時間という枷から逃れ出た自分が一応日付を気にかけるのは、この同居人の
生活をただす使命があるからだ。
 しかし、今日はとりあえず自分にも彼にも関係はないようだ。
 このまま……休日を思うようにすごさせてあげることにしよう。

 触れない扉を無視し、部屋の外に抜け出る。
 小さな窓から光が入るのみの薄暗い廊下。
 鏡介と同じように、他の部屋も住人もまだ眠っているようだ。
 朝の時間に感謝するのと同じくらいの価値がある、朝の惰眠。
 ま、それも休日ならではか。

 とりあえず……

 階段をふわりと降り、玄関から外に出る。

 一人だけだが、散歩に出かけることにしよう。


風見アパート、屋根
------------------

 何気なく空を見上げてみる。
 朝の五時半、空はもう明るい。朝は日が昇るのはあっという間だ。
 佐古田真一が目を覚ましたのは朝の四時前、別に寝つきが悪かったわけでも
早く寝たわけでもなく、ただ目が覚めたらそんな時間だった。再び寝るには中
途半端で、起きて何かをするには早すぎる。
 早朝からギターをかきならすのはさすがに近所迷惑なのはわかっているし、
今日は日曜日だ、この風見アパートの住人の大半は昼過ぎごろにならなければ
起きてはこないだろう。
 そんなこんなで、暇な時間を屋根の上でぼんやりとつぶしている。何故に屋
根に登るのかと聞かれても多分わからない。なんとなく登ってみたかった、と
言ってしまえばそれだけだ。
 日のあたる屋根、並んだ瓦が所々奇麗なのは、以前雨漏りの修理でいくつか
瓦を入れ替えた跡。古い雨どいのふちに風で飛んできたのか、葉っぱが一枚張
り付いている。側の電線にはいつのまにスズメが鈴なりにとまっている。
 のび、一つ。晴れた空が眩しい。
 このまま屋根で時間を潰しているのも悪くないが、そろそろ人目につく、暇
つぶしに外に散歩にでてみることにする。屋根から部屋の窓までのびた梯子を
伝って部屋に戻る、梯子を外し部屋の角にたてかける。以前は雨どいを伝って
屋根に登っていたのだが、危険だからと本宮が梯子を作ってくれた。雨漏り修
理の時などにもよく使わせてもらっている。
 ちゃぶ台の上のサボテンに一回、霧吹きで水をやり、なるべく音を立てない
ように静かにドアを開け、忍び足で風見アパートを後にした。


早朝、グリーングラス
--------------------

 美都     :「あーっ!」

 朝、澄んだ声が響き渡る。

 紫苑     :「……どうしたんですか?」

 猫のまま目をこすり、2階から降りてくる紫苑。彼女の声に命の危険を感じ
なかったからか、急ぐ様子はない。

 美都     :「きゅうりが……ない……」

 紫苑が台所まで行くと、冷蔵庫を前に呆然とした美都がいた。

 紫苑     :「きゅうり?……ああ、胡瓜ですか……」
 美都     :「酢の物にしようと思ったのに……」
 紫苑     :「違うのにしたらどうですか?」
 美都     :「うーん……そうだね。コーンポタージュ先に作ろうっと」

 そう言って、傍らの白い無地の紙パックを切り出す。ラベルは一枚。「ポター
ジュスープ」と書かれている。

 美都     :(パックの中身を鍋に移しながら)「あれ?粒が見えない
        :……」
 紫苑     :「美都……」
 美都     :「なに?……これ、不良品かなぁ……」
 紫苑     :「“ポタージュ”に、コーンを入れると“コーンポター
        :ジュ”になるんですよ……」
 美都     :「え……」

 意外な盲点であった。……というより、レストランで“ポタージュ”を頼む
と、大体“コーンポタージュ”が来るのである。同一のものと思い込んでも無
理はない……と思おう。

 美都     :「あたし……やっぱり買ってくる!」
 紫苑     :「こんな早くては、八百屋もやっていませんよ」
 美都     :「朝市があるもんっ。いくよっ」
 紫苑     :「……分かりました」

 すぐに男性形になる紫苑。
 美都は既に買い物籠の準備を終えている。

 美都     :「朝市ってどんなだろうね……私、初めてなんだ」
 紫苑     :「美都……それが本当の目的ですね……」

 二人は、朝市へ向かう。目的はキュウリとトウモロコシ……なのか、見学な
のか?


それは各務の出した店
--------------------

 吹利商店街朝市。
 毎月第一週と第三週の日曜早朝に裁判所前駐車場周辺で行われる名物朝市で
ある。
 売る側も買う側も強者達が集まると云われるこの朝市には、多少離れたとこ
ろからも人が集まってくる。

 朝市で最も賑わう地裁前庭の一画に、各務の出した野菜の出店があった。
 青いビニールシートを敷いた上に、キュウリとトウモロコシを入れてある段
ボール箱と篭が置いてあるだけの、極めて簡素な出店である。

 各務がここの朝市に店を出したのは今回が初めての事である。それどころか、
作った野菜を並べて売る事自体が初めてのことだった。
 この初めて尽くしの環境の中で……正直、勝手がわからない。
 周囲の店々が賑わう中、何故か自分の店にだけ人が集まらないのをただただ
不思議に思っていた。

 各務     :(ううむ……それにしても客が来ない、なんでかなぁ……)

 などと考えつつも、ただただ素通りする人を眺めながら、ぼーっとしている。
そう思うのなら、せめて通りかかる人達に声でもかけりゃあいいのだが……。

 各務     :(まぁ、いいや。そのうち誰か来るだろう。多分……)

 ……何処をどう突けばその様な結論を導けるのかは誰にも解らないだろう。
 おおらかというか、なんというか、ある意味大物である。

 各務     :(あぁ、お日様が高くなってきた……。どうやら今日は暑く
        :なりそうだな……)

 七時前、雲一つない青空に太陽が輝いている。
 今日は暑くなるぞ、と言わんばかりに……。


一人目のお客様?
----------------

 勇那     :「あれ、ここだけ人がまばら……っていうか、全然いない
        :じゃん(苦笑)」

 人込みをかき分け……る必要も無く、すーいすいと滑るように進んできた勇
那が一軒の店の前で足を止めた(いや、足はないが)
 そう、客が来なくて(一応)困っている各務の店の前である。

 勇那     :「ふーん、野菜を売ってるのかぁ」

 さきほどから店先をうろうろと歩き回っていた勇那が思い知らされたことが
一つある。
 それは、人込みをかき分ける必要が無いということは、逆に商品を覗き込む
時に不便であるということ。
 幽霊である彼女は当然現実に干渉することがない、つまり触れることはなく
彼女は人をすり抜ける。
 そして、彼らも彼女の体をすりぬける。

 それがどういうことか。
 彼女が覗いている目の前に次々と手が伸び、じっくり見ようとしてた商品が
次々と客の買い物カゴの中に収まっていくのだ。
 ……あのぴかぴか光る変わった魚が、あの瑞々しくて美味しそうな野菜が、
あっちからこっちへひょいひょいひょい……。
 いくらひやかししかできないといっても、これではあまりに不公平である。

 そういうこともあって、ここのような人が少ない店はありがたかった。
 (売るほうには悪いが)自分が満足するまで眺めていられる。

 勇那     :「きゅうりとトウモロコシ……だけ?」

 商品台を覗いてみて気づくのは、実はたしかにでかいが形が不揃いなこと。
 並べられた商品が他店に比べると少ないこと。
 そしてこれがこの店に人を呼べない原因なのかもしれないが……わずかでは
あるが値段が高い。
 わざわざ朝市に出てきて買い物をしようという強者達の目は、この僅かな値
段の差さえも見逃していないのだろう。

 勇那     :「ねぇ、おじさん……これってちょっと高くない?」

 勇那が商品を指さしながら、目の前の各務に一応声をかける。
 おじさんというにはまだ失礼な年齢かもしれない。が、彼女はそこまで気を
回さない。

 各務     :(そういえば腹が減ったな……)

 腹を軽くさすって、目の前に並んだ野菜をぼんやりと眺めている。
 勇那が話しかけていることにも、まったく気づいていないようである。

 勇那     :「……って、やっぱ気づくわけないか(苦笑)」

 幽霊である彼女は、普通には見えない。
 悲しいが、それが現実。
 もう慣れたので、これくらいで落ち込むことはない。が……やはり気づいて
欲しいという気持ちはなくなるものではない。

 勇那     :「ま、いいか。他に誰もいないし、勝手に見せてもらう
        :からね〜(笑)」

 ふわりふわりと漂いながら、

 突然、各務は手近にあったトウモロコシの一つをおもむろに手に取り、実を
覆う葉と鬚を手際良く取り除く。そしてむしゃりと食らいついた。
 売れないからヤケになったか、なんなのか。

 勇那     :「……あのねぇ……ふつう売り物を食べますか(笑)」

 目の前の商品を食べ始めた各務を見て苦笑する。
 声が届かなくてもツッコミをいれるのは性分か。
 当然、各務は気付くはずもなく、トウモロコシをほお張り続けている。

 各務     :(う〜ん、甘くて美味しい。朝早く起きて収穫した甲斐が
        :あるというものだ、うんうん)

 何やら満足げな笑みを浮かべる各務。
 幸せに浸られても……勇那としては、ただ苦笑するしかない。

 勇那     :「なんか満足げだしぃ。まぁねぇ、朝早く出てきたから、
        :ごはんとかも食べてないなだろーけどっ」

 言いたいことは言った。
 聞こえる聞こえないはともかく、それですっきりといったところか。

 勇那     :「……まぁ、いいか。あたしも好きにしよ」

 さて。
 幽霊の少女の方は、商品に手を触れて見定める様な仕草をしながら店の前に
立っている。
 一方店主の方は、日差しに目を細めながら食べかけのトウモロコシを片手に
何やら笑みを浮かべている。
 奇妙な光景である。

 各務     :「ん?」

 気配が感じられたのだろうか。
 トウモロコシを食べる手を止め、各務は一応周囲を見まわした。

 各務     :(さっきからなんか視線を感じるよなぁ)

 首をかしげる。
 現在のただ一人の客が幽霊。
 不幸である。

 何やら不思議に思っている各務にはお構い無しに、品定めを続けている。

 勇那     :「実のつき方はそんなに悪くはないと思うんだけどね〜」

 ままごと遊びをするように無邪気にはしゃぐ勇那。
 見えない客を前に、各務はもう一度首をかしげた。

 各務     :(やっぱ……なんか視線を感じるんだけどなぁ)

**********************************************************************
とりあえず、ここまで。

  改めて読んでみると、結構量がありますね。
  しかし、自分の書いた所って少ないよなぁ。
  次回の目標はサコタ登場とキュウリですね。

細部を色々修正しましたが、何処を修正したかは既に憶えていません。(鳥頭)

今回は、これにて。
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Cor'Dially kousaka@axe-inc.co.jp
 最近の出来事 :ソードofグラーブ(エルジェネシス2のサプリメント)購入
 毎度の事だが :相変わらずランダムテンプレートが揃わねぇぜちくしょー
        :エルジェネシス2のランダムもまだ揃っていないのに…
    

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