[KATARIBE 16395] Re: [HA06] 小説『紅い雪の記憶』第1章

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Date: Sun, 14 Nov 1999 19:14:16 +0900
From: Kakeru Aozora <kakeru@trpg.net>
Subject: [KATARIBE 16395] Re: [HA06] 小説『紅い雪の記憶』第1章
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かけるん@みんな感想ありがとう〜もっとくれ(おい) だにょ

第1章だにょ

狭間06小説『紅い雪の記憶』第1章
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朝の冷気
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 雪は融けて、泥水になっていた。
 自動車が通るところはすでに雪がなく、アスファルトに水溜まりができてい
た。道路脇にはタイヤに跳ね飛ばされた泥色に染まった雪がある。
 歩道の雪はまだ白いが、小学生が長靴で踏んだ足跡がいっぱいある。
 そんな雪を横目で見ながらかけるは学校への道を歩いていた。
 ヘルメットをかぶった自転車通学生が反対側の道路脇を対向車ぎりぎりをす
れ違って流れていく。道路の幅が狭いので結構危険である。PTAでも何度か問
題になっている。
 前を歩いている学校指定のかばんを背負った生徒たちが、2列横隊の変形み
たいな形になって歩いている。車がくるたびに伸ばしたゴムのように1列になっ
てあぶなっかしい。
「おっはよ」
 背後からの声に振り向く。
 元気よく駆けてくるのは、黒い髪を短くまとめたセーラー服の女の子。かけ
るのクラスメートで幼なじみの赤羽香澄である。
「待ってよ」
 かけるはそのまま首を戻して変わらぬ速さで歩きつづける。
 近づく足音。香澄はかけるの横に来たところで走るのを止める。
「たまには待ってくれてもいいじゃないの」
「前見ろ前っ」
かけるは香澄の右腕をとって、反対側に引っ張る。香澄は逆らわない。2人の
横を黒いワゴン車が泥水を跳ね飛ばしながら走り去る。
「そのうち誰か事故起こすぞ」
かけるのぼやきに対し、
「まー近くに病院もお寺もあるから便利じゃない」
「縁起でもない」
寺前のT字路を右に曲がる。右手側にはいくつか穴の空いた広場がある。今度
児童公園にするかと言うことで工事中である。
 さらに行くと、高いフェンスに囲まれたグラウンド脇の道路に出る。ちょう
ど野球部のフェンスの裏だ。いつものとおりに行こうとすると、フェンスが途
切れた入り口のところにロープが張ってあり、
『校庭状態保全のため冬期通行禁止』
と札がかかっている。
 この季節、雪解け水でぐちゃぐちゃになったグラウンドを通過されると、足
跡で校庭がでこぼこになって4月の整備が難しくなるからだそうだ。
「もうこんな季節なんだね」
「冬だからな」
そう言って歩き出す。

ホームルーム
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 予鈴が鳴る。かけるは図書室から借りてきた小説を持って、2年7組の教室
に入る。
黒板の上に『熱血』とかかれた模造紙が飾ってある。クラスではいつもどおり
6つぐらいのグループになって話していた。
 かけるが一人で本をぱらぱらと速読していると、担任の大山先生が入ってく
る。ちなみに見た目はどう見ても体育教師だが実は社会科の教師だ。奥さん募
集中29歳。
みんな自席に戻る
「起立」
左の席に座っている、クラス委員長である香澄の号令。
「おはようございます」
「おはよーございまーす」
クラスの唱和
「おはよう」
「着席」
いすを引きずりながらみんな着席する。
大山先生は、1つ咳払いをして、
「みんなすでに噂で聞いていると思うが、明日、イギリスから留学生がくるこ
とになっている。
 わが2年7組の仲間になるので、よろしくたのむ」
「先生」
 クラス1のお調子者、相山がたずねる
「転校生は女子生徒でしょうか」
留学生である。
「うむ。女子だ」
「いえ〜〜〜い」
「こらっ。そこ教室でウェーブは止めろっ。それから」
大山はかけるの読んでいた本を取り上げ、
「HR中は人の話を聞けっ」
 そのあと、地区内のほかの学校で最近夜遊びする生徒が多いだの、学校をサ
ボる生徒や家出する生徒が増えたとかいうことで、いくつか細々とした注意が
なされ、HR終了となった。
「どんな子がくるんだろうね」
香澄がたずねてくる。
「さぁな」
「少しはまじめに答えてよね」
「予測が聞きたいのか。それとも」
「聞き方が悪かったね。どんな子が来てほしいの」
「どーでもいいさ」
「興味ないの」
「あると思うか」
「あるとおもっているからきいているの」
「そうか」
かけるは一息ついて、
「イギリスだったよな。金髪のどっかの貴族のお嬢様とかがいいな」
「お嬢様はこんな辺境までこないんじゃない」
おどけたように肩を竦めて首を振る香澄。
「希望言えと言わなかったか」
「そんなささいなこと忘れた」
かけるは額を手のひらで押さえて、
「水飲んでくるわ」
といって自席を立つ。

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蒼空かける                       kakeru@trpg.net

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