[KATARIBE 16028] [WP01]EP: 銃を手に入れた日

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Date: Tue, 26 Oct 1999 23:45:16 +0900
From: edamatsu <edamatsu@gold.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 16028] [WP01]EP: 銃を手に入れた日
To: "語り部ML" <kataribe-ml@trpg.net>
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くすのきです。
久々の投稿になります。

**********
1999年某月某日。
ずっと欲しいと思っていた物を、手に入れた。


夜も更け、そろそろ寝ようかという時間。
遠くから不規則な爆音が聞こえる。

……またか、と思う。
ボウフラみたいに切りが無く涌いてでてくる。
馬鹿は、減ったら減った分だけ自動的に補充されるのか。
まあいい。
こっちは、こっちの「環境を守る」べく行動するとしよう。
TVの上に置いた、ダミーカート(擬似薬莢)のキーホルダーをポケットに
入れ、部屋を出る。
狩りの時間だ。


新宿区下落合を横切る新目白通り。
道幅が広く、交通量も多い。といってもこんな時間だ、渋滞はない。

つい先月、毎晩のようにここを爆音を撒き散らしながら走っていた馬鹿な
餓鬼共10人前後が、深夜巡回中の警官に全員死体で発見された。

先月といわず、ここ2、3ヶ月の間。
首都東京では、新宿周辺を中心に無差別の拳銃殺人事件が多発している。

駅前や駅構内、電車の車内。
交差点のど真ん中。
繁華街の昼間の雑踏の中。
スーパー等の店舗の中。
そして、住宅街。

被害者達にはこれといった共通性が無いこと。
目撃者、弾丸や弾痕等の人的・物的証拠が一切見つかっていないことから
謎の大量殺人として、今でもワイドショウとニュース番組が、様々な憶測と
ありがちな展開で事件を報道している。
……そのどれも、わざと事件を迷宮に入れようとしているみたいだが。

表面的には見えないし、他人にわかろうはずもない。
ただ、殺された奴等には殺されるなりの共通の理由があった。
それを教えてやるほどのこともなかったが。

下落合前の交差点の脇には交番がある。
事件当時こそ物々しさがあふれていたが、やる気があるのかないのか今は
また、元どおりのただの交番に戻っている……しつこい一部のマスコミのカメラ
が
いるが、これもそのうち消えるだろう。
ただ、巡回のパトカーが以前よりは増えたように見える。、
そのまま交番を横切り、ガソリンスタンドを過ぎ、コンビニの前で待つ。

爆音が近づいて来る。
音ばかりでかくて、遅いのが馬鹿共の特徴。

今の世の中には、生かして置く必要のない人間が多数いる。
義務を果たす事を全く考えず、権利のみを主張し、TPOをわきまえようとしな
い
社会不適合者の群れ。
自分を正当化し、他者の尊厳を踏み躙って平然としている無能者。
そんな奴等の存在を認めてやれるような聖人君子じゃないし、それが
善人だというのなら、なりたくもない。

警察が役立たずの無能集団であることは既に世間一般の知る所である。
それは、TVの番組改変期に放映される警察番組を見ればすぐにわかることで
税金を浪費するのは勿論、善良な一般人にのみ監視の目を光らせており
例え助けを求めても「民事不介入の原則」を元に弱者には決して手を差し伸べな
い。

だから、自分で奴等を処理するのだ。
平穏で閑静な生活を守る為に。
理不尽に傷つけられた自分の誇り、尊厳を守るために。
形だけの法権力に動く気がないのなら、この手で裁きを下すのみ。
その方法は、すでに手の中にある。

バイクに2人乗りの集団が、背中をすぎていく。
爆音を聞きながら、手の中に握ったキーホルダーに意識を集中させる。
きぃいん、という金属音とも耳鳴りともとれる音が微かに聞こえ、それを境に
周囲の一切の音が消える。
路面や建造物、照明のあかりが個々色を失い、灰色一色に統一される。
時計の針が動きを止める。
と同時に、手の中に慣れた金属の重量感。

今までずっと欲しいと思っていた。
警察なんかよりもずっと有効に活用してやれる……銃が。

鼓動が早くなる。
気分が高揚する。
そして、奴等に正義の鉄槌を下す。
突然の異変に気が付いて、わけの分らない様子の馬鹿共。
その群れに狙いを定め人差し指を動かす。

胴に2発、頭部に1発。
胴に2発、頭部に1発。
胴に2発、頭部に1発。
胴に2発、頭部に1発。
胴に2発、頭部に1発。
胴に……頭部に……

音の無いこの空間で、拳銃の作動音だけがはっきりと聞こえる。
引き金を弾くたびに血煙があがり、「いらない命」が消えて行く。
何故こういう目にあってるのか、わからせるまでもない。
不必要な者は、世の中から、目の前から、片づけてしまうに限る。
永遠に、永久に。

時間にしてほんの数分で全てが終了。
転がった原付数台、それと体に3つの穴が空いた死体の群れ。

色を失った自販機に寄りかかり、再び意識を集中させる。
手から銃が消え代わりにあのダミーカートが出現する。
周囲に色と音が徐々に戻り始める。
時計の針が動き出す前に、ここから立ち去ってしまえば「謎の拳銃殺人」
の事件現場の完成。
明日の朝から、またこの辺は騒がしくなるだろう。
……その分、また獲物が涌いて出るのかもしれないが。
今夜の狩りが終わったのを告げるように、腕時計の針が微かに鳴った。


1999年某月某日。

世間に対して、なんら貢献しようとしない。
アタマの悪い。
生きる価値も資格もない。
必要の無い人間をこの世から消す為に。
自分自身の正義を守る為に。

ずっとすっと欲しかったものを手に入れた日。
この手に、銃を手に入れた日。
**********

以上です。
「終末デビュー」のエピソードがこれか……って(苦笑)

くすのきでした。
edamatsu@gold.ocn.ne.jp
    

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