[KATARIBE 15996] [HA06P] 『朝市にて』仮編集版その2

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Date: Sun, 24 Oct 1999 23:52:35 +0900
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 15996] [HA06P] 『朝市にて』仮編集版その2 
To: kataribe-ml@trpg.net
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99年10月24日:23時52分29秒
Sub:[HA06P]『朝市にて』仮編集版その2:
From:久志


 久志です。
『朝市にて』の編集版続きます。
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お客二人目?
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 おやじ :「いらっしゃいらっしゃい!新鮮だよ!」

 吹利商店街を一人歩きながら、佐古田は散歩に出たことを少し後悔して
いた。忘れていたのだが、今日は何週間かに一度行われる朝市の日だった
らしい。商店街の軒先にはあちこちにシートやかごが置かれ、旬の野菜や
新鮮な魚が並べられ、客を呼び込む店主の掛け声や商品を値切る朝市の常
連の声で普段の倍以上に騒がしい。せっかく朝市の日に出てきたのだから
ついでに何か野菜でも買って帰ろうかとも思ったが、どの店も人でごった
がえしていてどうにも入り込む気にはなれない。
 人波から逃げるように、人のいないほうへと歩みを進めていくと、丁度
混雑が途切れたところに、一軒の店があった。店先を覗くと、食べかけの
トウモロコシを片手に持った店の主と目が合った。

 各務  :「あ、いらっしゃい(ようやっとお客さんがきたなぁ)」

 それだけならば、普通なのだが。なぜか店主の肩のところに見覚えのあ
る姿が浮かんでいるのが見えた。

 勇那  :「あれ?佐古ちゃん」

 同じアパートの住人に町中で出会う。
 これは別に不思議なことではないが、時と場所、そして人によっては珍
しい場合もある。

 勇那  :「おはよー。こんなところで会うの、珍しいねー」
 佐古田 :「……(こっくし)」

 ぼんやりとした彼女の表情が、笑顔に変わる。
 幽霊の勇那は自分の姿が見えて話ができる佐古田になついていた。

 勇那  :「あ、ちょっと待ってね。降りるから」

 ふわりとビニールシートを越えて、勇那が隣に立つ。
 浮かんでいても、目の高さは佐古田よりもほんの少し下。

 勇那  :「っと、やっぱり朝市で買い物?」
 佐古田 :「……(わずかに首を振る)」
 勇那  :「んー、あたしと同じで朝の散歩でここに来たとか?」
 佐古田 :「……(こくん)」
 勇那  :「そっか、じゃ誘えばよかった……って、あれ、佐古ちゃん
     :いつものギターは?」
 佐古田 :「……朝早いから」
 勇那  :「って、この人込みもあるか(^^;」
 佐古田 :「……(こくん)」

 と、内容からすれば普通(?)の会話なのだが、いかんせん片方の相手
は普通見えない相手である。

 各務  :「えーと…(なにと話してるんだろう(汗)」

 事情を知らない人から見れば、一人で宙を見詰めて話して頷いていると
いう、ある意味変人に見えてしまうことがしばしばある。そうでなくても
変ってはいるのだが。

 勇那  :「あ、そうだ佐古ちゃん。ちょっとお願いしていい?鏡ちゃ
     :んの食生活改善で野菜買ってあげたいから、佐古ちゃんあた
     :しのかわりに買ってくれる?」
 佐古田 :「…(頷く)」
 勇那  :「よかった、お金は後で鏡ちゃんに出してもらうから」

 勇那の声に頷くと、ひょいと売り場に並べられている野菜を手に取った。


新鮮なキュウリの見分け方
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 各務  :「あ、刺に気ぃつけや」

 キュウリに手を伸ばした青年に声をかける。

 佐古田 :「!(思わず手を引っ込める)」
 各務  :「そ、そんなに警戒せんでも(苦笑)」
 佐古田 :「…」

 冷やかしかと思ったが、そうではないらしい。
 はじめてのお客としては少し予想外だったが、まぁこれも何かの縁と考え
 るべきか。

 各務  :「……えーと……」

 こちらと同様、相手もあまり話し上手というわけではなさそうだが……
 聞き手としてはどうだろうか。

 各務  :「いいキュウリの見分け方、知ってるか?」
 佐古田 :「…(首を振る)」
 各務  :「じゃ、あんま忙しないし…(商品を一本手にとる)」
 佐古田 :「……(こくん)」

 素直にうなずく。
 見かけは変わっているかもしれないが、性格は悪くないのかもしれない。

 各務  :「さっき言った刺がポイントだな(刺の辺りを指さす)」
 佐古田 :「……(見入っている)」
 各務  :「まぁ、刺に触ってみてちと痛いくらいが新鮮でいいやつだな。
     :ここのはみんな今朝とったやつだから、ちゃんと刺がある」
 佐古田 :「……(納得)」
 各務  :「あと、ヘタでの見分け方もあるけど……運んでいる時にこす
     :れて潰れたりするから、やっぱり刺のほうが確実だなぁ」
 佐古田 :「……(感心)」

 各務  :(うーむ。なんとなく考えが読めるような気がするのは気の
     :せいだろうか……)

 もう一人いる聞き手が、各務の気づかないところで頷く。

 勇那  :「ふーん、なるほどね……」

 ふわりと浮いて、佐古田が再び手に取ったキュウリをのぞき込む。
 側面には確かに突起がある。

 勇那  :「どう、佐古ちゃん。刺出てる?」
 佐古田 :「……(うなずく)」
 勇那  :「鮮度には自信がありってことか。んーでも、この形が……」

 各務  :「あ、形がどうこうというのは味には余り関係無いんだ」

 勇那  :「……おっと(^^;」

 各務  :「因みに、曲がってる方が美味しいなんて噂も勿論反逆だな。
     :根っこが同じなのに形なんぞで味が変わるはず無いくらいの事
     :冷静になって考えれば誰でも解るはずなんだけど(苦笑)」
 佐古田 :「……(うなずく)」
 各務  :「だから…というのも変だけど、うちのキュウリはどれも美味いよ」

 タオルで額の汗をぬぐう。
 商品に自信があっても、実際にそれらを売る苦労は別のところにあるのか
 もしれない。


美男美女あらわる
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 美都と紫苑が到着した頃は、大まかなものは売れてしまっていた。

 美都    :「うーん……無くなってる」
 紫苑    :「既に数時間が経過していますからね。仕方ないでしょう」
 美都    :「でも、まだスーパーが開く時間じゃないし……コンビニで
       :もなぁ……」
 紫苑    :「美都、あそこはどうですか?」
 美都    :「え?」

 紫苑ださしたその先には、外れに広げた店に、青年が一人。
 売っているものは、キュウリとトウモロコシだ。

 美都    :「やった、まだ残ってるね。行こう」
 紫苑    :「はい」

 各務の開く市に、近づいて来る美都と紫苑。

 各務    :「(お、二人目のお客さんか……と……こりゃあ……)」

 新たにやってきたのは、美男美女の二人。男性の方は若干妙な格好(マント
だ)をしていたが、双方とも整った顔立ちをしている。似てはいないから兄妹
ではないのだろう。

 美都    :「おはようございますっ」
 各務    :「いらっしゃいませ」
 佐古田   :(ちらりと見る)
 勇那    :「あ、おはようございます」

 いつもと同じ、反応はされないだろう……と思っての挨拶をした勇那であったが……。
 女性の方の顔から笑顔が消え、若干腰を引いて身構え、警戒する。

 美都    :「紫苑ちゃん、何かいる!」
 紫苑    :「……」

 その声に、すばやく反応し、足を止める紫苑。表情はあくまで冷静だが、体
表のセンサーは感知を開始していた。しかし、異常は見当たらない。
 美都の方は、勇那の「霊気」を感知していたのだ。美都が今まで霊気を感知
した事があるのは、命が狙われたときだけである。警戒するのも無理はない。

 勇那    :「え、ええーっ。もしかして、あたし?」
 紫苑    :「何処にも見当たりませんが……」
 美都    :「うん、奴らに似てる感じ……」

 探るような表情を、勇那の方に向ける美都。勇那からすると、目が合ってし
まう。

 勇那    :「うっ」
 美都    :「……」

 美都も、勇那がいる位置から視線をはずさない。見えてはいないが、いるの
は分かるらしい。
 勇那の方は、なんとなく視線から逃れられないでいた。ヘビに睨まれたかえ
るってのは、こんな気分なのかという考えが頭をよぎる。

 勇那    :「ううっ」
 美都    :「(じー)」

 しばらく見詰め合う勇那と美都。各務、紫苑には、虚空を睨む美都しか見え
ないわけだが……。

 勇那    :「うう……佐古ちゃぁん……」
 佐古田   :「……」 

 鋭い視線からかばうように、佐古田が美都の目の前に立ちふさ
がった。遮られた視線が交錯する。

 美都    :「……(この人、後ろのものが分かってる?)」
 佐古田   :「……」
 勇那    :「(こそこそ)この人、あたしのことわかるけど見えない
       :みたいだね」
 佐古田   :「(ちらりと後ろを見て)…(こくん)」
 美都    :「……(やっぱり……)」
 各務    :「…?(首を傾げる)」

 今まで敵対していたものと同じ感覚をもつ存在がいる。そして、自分に見
えない存在を関知している者がいる。

 美都    :「……(この人が、あたしを狙ってる様には見えない……け
       :ど……)」

 きゅっと眉を寄せ、目の前の相手を鋭く見つめる。いままで危機にさらさ
れていた時に感じた気配と同じ感覚を持つ者とその仲間と思われる謎の男。

 佐古田  :「……(無表情でにらみ返す)」
 美都   :「……(この人何者なの)」

 視線の威圧感、美都の額にじっとりと汗がにじんでくる。

 各務    :「(唐突に)トウモロコシ、味見する?」

 輪切りにしたトウモロコシを手に、青年に話しかける。

 佐古田   :「!(突然話しかけられたので少し驚く)」
 各務    :「そちらのお二人もどうです?」
 佐古田   :「(美都を警戒しつつ)…(かるく礼)」
 美都    :(佐古田を警戒しつつ)「あ、ありがとうございます……」
 紫苑    :「では、有難くいただきます」

 睨み合っていた二人の間に外套をした青年が入る。
 双方とも警戒は解かないが、緊迫した空気は消え落ち着きを取り戻した。
 まぁ美味しいものを口にしながら殺気立つ人間はそうそう居るもんじゃない。
 どうやら一触即発な事態は避けられたようだ。

 勇那     :「今まで見たことないと思うけど」

 隠れた背中からそっと顔を出す。
 トウモロコシを口にしている女性の横顔をもう一度見て、ぽつり。
 
 勇那     :「どっかで会ったのかなぁ」
 佐古田    :「……」
 勇那     :「あ、佐古ちゃんそのまんまでね。何もしてないふりで
        :聞いてくれればいいから」
 佐古田    :「……(小さく頷く)」

 あれほどの形相でにらまれるにはそれなりの理由があるはずで、その理由
が自分にあるなら納得もいくかもしれないのが……

 勇那     :「あたしが何かやって警戒してるとか……って、何もで
        :きるわけないし(苦笑)」

 そう、自分が何かをすることができるわけがない。
 見える人間ならともかく見えない人間にまで影響を与えることはない。
 だから、普通は人に恨まれることはないはず。

 勇那     :「だれか別の……この場合はあたしのような幽霊が、こ
        :の人にいたずらしたとか」
 佐古田    :「……」
 勇那     :「んで、よく似た感じがしたから警戒した」
 佐古田    :「……(口に運ぶ手を止める)」
 勇那     :「っていうのが一番納得いくかなぁ。どっちにしてもあ
        :たしには関係なくて、あの人の勘違いだと思うけど」

 肩をすくめ、ひとつ溜息。
 向こうがどう思うかはともかく、こちらには覚えがまったくない。

 勇那     :「まーでも、よっぽどひどいいたずらされたのね」

 一応さっきにらまれた分の仕返しなのか、意地悪な笑みをうかべる。

 勇那     :「残念だけど人違いでした(笑)」

 佐古田    :「……」

 食べ終わったトウモロコシの芯を指先でもてあそびながら、ちらりと美都
の方を見た。細々とトウモロコシをほおばる姿は、とても先ほどの形相から
は想像できないほどおとなしいものだった。

 佐古田    :「……(少し警戒を緩めつつ見る)」

 何が彼女をそうさせたのかはわからない、余計に彼女の事情を詮索する理
由もないのだが。たとえ誤解でも勇那に敵意に近いものを見せた以上、簡単
に気を許すわけにはいかない。

 紫苑     :「美都」
 美都     :「んぐんぐ……ん?」(佐古田を見る)

 何とはなしに見ていた佐古田と目が合った。

 美都     :「あ……えーと……」
 佐古田    :「……(じー)」
 紫苑     :「美都、彼の警戒は最もだと思いますが?」
 各務     :「そうさなぁ、いきなり睨み付けちゃ、警戒もするか」
 美都     :「……そうですよね……あの……ごめんなさい」
 佐古田    :(警戒をちょっぴり弱める)
 美都     :「あの、後ろの存在とおんなじ感じを、たまに感じる事が
        :あるんですけど、決まって身の危険が迫ってたときだった
        :から……」
 各務     :「そいつは物騒だな。そんな事があっちゃ、警戒くらいす
        :るか……」
 勇那     :「へぇ……そうなんだぁ。でも、それあたしじゃないよ」
 佐古田    :「(こくん)」
 美都     :「あの、言っている言葉は、私、聞こえないんですけど、
        :聞いてみてもらえませんか?」
 佐古田    :「?」
 美都     :「私を狙う人とは、違うんですよね?」
 勇那     :「ちがうよ〜って、佐古ちゃん。通訳お願い」
 佐古田    :「ちがうって……言ってる」
 美都     :「そうですか。よかったぁ……(にこ)」

 急に、美都の顔がはれる。屈託の無い笑顔。睨んだ顔より、幾分年下に見え
る。

 美都     :「勘違いしちゃってごめんなさいっ」(ふかぶかとお辞儀)
 勇那     :「いいよ〜。そんなに改まらなくても」
 佐古田    :「(こくこく)」
 美都     :「あっ!」
 勇那&佐古田 :「……(びくっ)」
 各務     :「どうしたい?」
 美都     :「朝ご飯! 早くかえらなきゃ……」
 紫苑     :「すでにあと15分ですね」
 美都     :「おじさんっ。とうもろこし、さっきのも合わせて3本下さ
        :いっ。あとキュウリも」
 各務     :「なんだい、あわただしいな」(取り出して包む)
 美都     :「ありがとうございます。これ、お金。それじゃまたっ」
 紫苑     :「それでは、失礼します」

 そういうと、あわただしく去っていこうとする。美都は数歩走ってから、立
ち止まった。

 美都     :「あの、本当にごめんなさい。それじゃあまたっ」
        :(ぺこり)

 そして、また走っていった。

 各務     :「……」
 勇那     :「元気な人だったねぇ……」
 佐古田    :「……(こくこく)」(二度トウモロコシを食べ始める)
 各務     :「どう、味は?」
 佐古田    :「……(びくっ)」

 慌てて帽子のつばを下げて礼をする。

 佐古田    :「……(トウモロコシを三本取り上げる)」
 各務     :「買うのかい?」
 佐古田    :「……(こくん)」
 各務     :「じゃ……(ひょい)これは、また来てくれってことで」
 勇那     :「おー♪」
 佐古田    :「……ありがとう」

 トウモロコシとキュウリを新聞紙にくるむ。
 おつりを手渡すその手を一瞬とめて、各務が苦笑いする。

 各務     :「どーもなぁ……(苦笑)」
 佐古田    :「?」
 各務     :「類は友を呼ぶっていうか……あぁ、まぁいいや。あり
        :がとさん」
 佐古田    :「……」
 各務     :「また店だしてると思うから、友達誘ってきてや」
 佐古田    :「……(こくん)」

 勇那     :「さてと。じゃ、あたしたちも帰るとして……」
 佐古田    :「……(こくん)」
 勇那     :「どこか他によってく?」
 佐古田    :「……(考える)」
 勇那     :「あ……佐古ちゃん、ありがとね(にこにこ)」
 佐古田    :「……(こっくし)」

*********************************************************************
とりあえず、ここまで。

 ってほとんど終わってるなぁ(^^;)




    

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