[KATARIBE 15816] [HA06P] :「命名書」

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Thu, 14 Oct 1999 18:51:58 +0900
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 15816] [HA06P] :「命名書」 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199910140951.SAA04214@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 15816

99年10月14日:18時51分55秒
Sub:[HA06P]:「命名書」:
From:E.R


    こんにちは、E.R@とーひもーどっ です。
   ごんべさん、こんにちは。

 すっかり遅くなりましたが。
 語り部メンバー初の、二代目御誕生おめでとうございますEP(長いぞ(汗))
 ちょっと……こういう風景、思い付きましたので。

****************************
「命名書」
=========

 某日、瑞鶴。
 雨のせいなのか、それとももうそんな季節なのか。
 さほど遅くない筈なのに、空はもう既にとっぷりと暮れている。

 と、入り口の猫を蹴飛ばしかねない勢いで、入ってきたお客が一名。
 白いワイシャツも、ネクタイも、何だかその勢いに押されて曲がっている
ような……
……そんな印象がある。

 瑞鶴の猫   :「ふがあっ(威嚇っ)」
 客      :「っと(汗)」
 花澄     :「あ、すみません(汗)」

 慌ててレジの前から抜けて、すごむ猫を抱き上げる。

 客      :「いや……すみません、急いでたもので」
 花澄     :「いえ、申し訳ありません」

 猫のほうはしばらくじたばたしていたが、やがて諦めたらしく、花澄が降ろ
してやると、レジの前でふてくされたように丸くなった。
 お客はせかせかと本棚に向かう。
 何やら一心に探している様子だったが。

 客      :「あの、すみませんが」
 花澄     :「はい?」
 客      :「……名前の本って、ありますか?」
 花澄     :「名前の………命名法の本、でしょうか?」
 客      :「あ、はいそうです」
 花澄     :「ちょっとお待ち下さい」

 本棚の隅にあった本を手に取る。

 花澄     :「……これで宜しいでしょうか?」
 客      :「『命名法・名づけ辞典』……ああ、はい」
 花澄     :「はい。カバーお付けしましょうか?」
 客      :「はい……あ、それと」
 花澄     :「はい?」

 カバーをかける手を止めずに、花澄が聞き返すと、

 客      :「ここは、文房具は売ってませんね」
 花澄     :「あ、はい…うちでは扱っておりません」
 客      :「…この辺で紙を売ってる店ありますか?」
 花澄     :「紙ですか?……画用紙のような?」
 客      :「いえ、もう少し……和紙のような」
 花澄     :「和紙……ですか?書道にお使いになるような……?」
 客      :「いえ……いやそうなのか……いやそうじゃなくて」

 要領が得ない。
 本人も良くわかっているらしく、息を吐いて、ちょっと苦笑した。

 客      :「命名書を、作りたいんですが」
 花澄     :「命名書……ですか」
 客      :「子供の……ね」

 ひどく、照れくさげに、そう言う。
 ああ成程、と、花澄も合点する。

 花澄     :「……おめでとうございます(にこ)」
 客      :「あ、どうも……いえ、それで、そういうのを書くような
        :紙ってここらにありませんかね」
 花澄     :「そういう紙なら……画材屋にあるかもしれません。雲竜
        :紙の厚めの……ええと、手漉き風の、画用紙より多少薄め
        :の紙だと、この商店街の並びの、駅の近くにある画材屋で
        :見たことがありますけど」
 客      :「あ、そうですか」
 花澄     :「そこだと、他の紙もあると思いますので」
 客      :「はい…じゃ、行ってみます。どうもすみません」
 花澄     :「いえ……あ、消費税込みで…」
 
 お客は慌てたように、財布を引っ張り出す。

 花澄     :「でも…いいですね、命名書って(笑)」
 客      :「いや、どうせ大きくなった頃に、自分の名前の由来って
        :聞きたがるもんじゃないかと思ってね(苦笑)。その頃に
        :は多分、こちらもそんなもの忘れてるから(笑)」
 花澄     :「子供さん、喜ばれますね(にこにこ)」

 そうかな、そうだといいな、みたいなことをもごもご言いながら、お客は釣
り銭を財布に入れ、手提げ袋に入った本を受け取る。

 客      :「じゃ、どうも」
 花澄     :「ありがとうございました(ぺこり)」

 ふすん、と鼻を鳴らして猫が見送る。
 がらがらと、硝子の引き戸が音を立てる。
 なんとなく、猫と一緒に花澄もお客を見送っていたものだが。

 花澄     :「……あ、画材屋さんの名前、言うの忘れた(汗)」

*************************************

 てなもんで。

 画材屋さんの名前は……私が知らないのだから、花澄が知るわけも無(撲っ)

 命名書に関しては……実話です(笑)

 いえ、同僚の方のところに、二ヶ月ほど前、男の子が生まれたのですが、
その数日後、何だか考えこみながら文章を打ちこんでらっしゃいまして。

 E      :「あれ、お仕事……データ、届きましたか」
 同僚Mさん  :「いや、仕事じゃないんです……命名書でね(苦笑)」

 で、理由はEPにあるとおり(笑)
 #紙には凝ってらっしゃいませんでしたが(笑)

 でも、そのアイデアがいいなあ、って思ったんです。
 ああそうだよなあ、御両親とも、子供さんの一生に向けて名前を考えられるんだし、
それを子供さんが知るって、なんかいいなあ、と。

 ……で、その様子が、「名前〜」と言ってらしたごんべさんと重なりまして(爆)

 というわけで。
 改めて、おめでとうございます(^^)

 ではでは。




    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage