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Date: Tue, 12 Oct 1999 05:02:32 +0900 (JST)
From: Ginka <una-yuya@mb.kcom.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 15702] Re: [H06H] もけとの遭遇:璃慧&悠
To: 語り部ML <kataribe-ml@trpg.net>
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こんばんわ銀佳です。
『もけとの遭遇:璃慧&悠』の修正版です。
#これで完成……するかなぁ?
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エピソード『もけとの遭遇:璃慧&悠』
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1日の終わり
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太陽が闇に追われ沈んでいく頃。
璃慧も追い出されるようにして、図書室を後にしようとしていた。
ドアの前で、忘れ物はないか後ろを振り返ると、
さっきまで書いていた、ふか君の姿が見えたような気がした。
璃慧 :「……気のせい、か…………」
前に向き直り、ドアを開けようと手をかけた瞬間、
ドアは向こうから動いた。
璃慧 :「っ!!!」
?? :「わっ!!」
中に入ってきたのは、栗色の髪の少女……、悠だった。
璃慧 :「…………な〜んだ。悠か。びっくりするなあ、もう。
:驚かさないでよお。」
悠 :「びっくりするなあって……お互いさまでしょ。
:部室にいると思ったら、またこっちに来てるし……。
:終わったんでしょ? 帰ろっ!」
璃慧 :「うん。いこっか。」
廊下を並んで歩きながら。
悠 :「……今日は、何を書いたの?」
璃慧 :「う〜〜ん……。……ひ・み・つミ★」
数刻前の不思議な時間、何と形容したらいいのか分からなくて。
口から出たのは、ごまかしの言葉。そして、しばしの沈黙。
璃慧 :「ってのは冗談にして…………
:ってえ、そんなにひかないでよおっ(涙)」
さっさと先に行ってしまった悠を追いかける璃慧。
もう日常になりつつある光景だった……。
璃慧 :「…………、もうっ。ふざけただけなのにぃ……」
悠&璃慧 :「「あ、そういえばねっ」」
声が重なる。想っていたことも、同じだった。
二人の頭にあったのは、昼間に見た、ふかふかの毛玉らしきもの。
伝えたいんだけど、なんて言ったらいいのか分からなくて……。
璃慧 :「……」
悠 :「……」
璃慧 :「…………」
悠 :「…………」
璃慧 :「……あのね、今日、不思議なもの、見たんだ」
悠 :「なあに?」
璃慧 :「(しばし表現に悩む)」
悠 :「……真っ白な、可愛い毛玉、とか?」
璃慧 :「(ノートをかばんから取り出しかけて)うん、ケセラン
:パサランみたいなの……って?」
悠 :「私も、ついさっき、見た……」
璃慧 :「そっか……」
校舎を出ると、あたりはすっかり夜の雰囲気。
けれど、2人の意識はひだまりに。
ひだまりにいた可愛い毛玉のもとに飛んでいる。
2回めの不思議な出会い
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?? :「もけ」
校門の柱の陰からした、不思議な声。
しかし2人は気づかない。
?? :「もけっ」
必死に自己主張しているのだが……。
しかしやっぱり気づいてもらえない。
?? :(がさがさ)
影に潜って、木の上に現れた謎の影。
眼前を横切っていこうとする璃慧の頭めがけて
?? :(ひょんっ)
とびおりる。
?? :(とさっ)
璃慧 :「きゃっ」
?? :「もけもけっ」
悠 :「?」
璃慧 :「何かが頭に……くすぐったいよう〜」
頭に手をやる璃慧。
ふわっとした手ざわりがあって。
それは慣れ親しんだ自分の髪の感触では、断じてない。
ちなみに、あたりが暗いため、悠には事態がかけらもわかっていない。
璃慧 :「(……なにこれ……)」
?? :「もけっもけっ」
悠 :「(璃慧が変な声出してる……)」
ふわっとした手ざわりのものを、頭上からひきずりおろす璃慧。
璃慧 :(あぜん)
?? :「もけもけっ♪」
気づいてもらえてご機嫌そうな、漆黒の毛玉。
璃慧 :「黒いケセランパサラン……?」
悠 :「……えぇっ?」
気持ちよさげにくつろいでいる毛玉ごとてのひらを街灯にかざす璃慧。
悠 :「ほんとだ……」
璃慧 :「でしょ」
悠 :「昼に見たのと……」
璃慧 :「そっくりだよねぇ」
悠 :「やっぱり、可愛い……」
璃慧 :「よねっ♪」
?? :「もっけもけ」
璃慧 :「……今度は、何君なのかな?」
目の前のまっくろな物体を前に、しばし悩む。
そもそも、名前なんてあるのだろうか??
白い方だって、かってに命名しただけなのだが(汗)
悠 :「…………名前なんてあるの??」
璃慧 :「知らない(きっぱり)
:でもさあ、何にだって、名前はあると思わない?
:それに、なければなかったで、つけちゃえば、
:それが名前になるんだし……」
悠 :「もしかして、白い毛玉君にも名前つけたとか(汗)?」
璃慧 :「あれはね、ふか君。
:ちゃんと、呼んだらうなずいたんだよ〜」
おいおい。勝手に決めるなっ。
自分が分からない話しで盛り上がってるのが気にくわなかったのだろうか。
突然、今度は悠の方に浮遊していく。
?? :「もけぇっ!(悠の肩に乗る)」
悠 :「きゃっっ」
驚く悠。しかし璃慧の方は気にするふうもなく
璃慧 :「もしかして…………もけ君とか(笑)」
悠 :「そんな、あんちょ…………」
と、悠が突っ込みかけたが、
もけ :「もけっ(こくこく)」
本人に承認されては仕方がない。
悠 :「うそぉ…………」
璃慧 :「ははは。ふか君とほとんど同じ反応だ〜。
:なんか、かーいいっ」
もけ君の方に手を差し伸べる璃慧。
もけ :「もけけっ(ごろごろ)」
璃慧 :「あはははははっ、くすぐったいよお」
手にこすり付けられたもけ君の体は、ふか君と同じで、
毛玉のように柔らかくて、ほのかにあったかかった。
もけ :「もけけっ☆」
璃慧 :「ふわふわだ〜。可愛いよお」
もけ :「もけもけっ♪」
悠 :「可愛い〜(なでなで)」
すっかり愛玩動物と化している。
しかしもけ君はいやそうなそぶりも見せない。
璃慧 :「ふか君ともけ君って関係あるのかな?」
悠 :「うーん……兄弟とか、お友達とか」
璃慧 :「ファンタジーとかにありがちな、
:"対"だったりして(笑)」
もけ :「もけっ?」
璃慧 :「ふか君の友達?」
もけ :「もけっ(とびはねる)」
悠 :「お友達……なのかな?」
璃慧 :「みたいだね」
もけ :「もけっもけっ(さらに激しくとびはねて……ぽてっ)」
と、璃慧のてのひらから落ちる(笑)。
璃慧 :「あ……ごめんっ」
もけ :(ぶんぶんと全身をふって)「もけっ」
悠 :「……(汗)」
落ちたもけ君を拾おうと、しゃがんで手を差し出す悠。
しかしもけ君は手にはのろうとせず、静かにこっちをみつめた。
悠 :「? ……。……璃慧……」
璃慧 :「なに?」
しゃがんだきり立ちあがらない悠の横に、璃慧もしゃがみこむ。
悠ともけ君の様子をみれば、事態は明らかだった。
璃慧 :「そっか……。ふか君も、そうだったもんね……」
もけ :「もけ? もけ〜? もけもけっ」
悠 :「……うん」
璃慧 :「……もけ君、またねっ」
もけ :「もけっ!」
元気のよい一言を残して、もけ君は消えた。
街灯でできた、2人の影に潜って。
もけ君が残したもの
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璃慧 :「…………」
悠 :「……あ」
璃慧 :「なに?」
悠 :「璃慧も、昼間に白い……ふか君に会ったんだよね?」
璃慧 :「うん」
悠 :「もしかして……図書室でその小説、書いてた?」
璃慧 :「……分かる? 書いてたよ〜」
悠 :「その小説、部誌に載せる?」
璃慧 :「かもしれないけど……なんで?」
悠 :「載せるかもしれないの? うん、わかった(にこ)」
やおらかばんをあさってレポート用紙と鉛筆を取り出す悠。
近くの壁面を下敷きがわりにしてそのまま、レポート用紙の罫のない方―つ
まり裏面―に鉛筆を走らせはじめる。
悠 :「ここらへんがもう少しこうで……もうちょっとふわふわ
:だったかなぁ……毛がもうちょっと長めで……」
璃慧 :「?? ……あ……」
ほんの数十秒でざっと描きあがったのは、ふたつの絵。
ひとつは、柔らかそうな白い毛玉。
もうひとつは、それとよく似た黒い毛玉。
悠 :「もし璃慧がその小説あげるなら、次の部誌の表紙は、こ
:れねっ」
璃慧 :「うんっ」
悠 :「今描かないと忘れそうだったから……(笑)
:スケッチブックもってくればよかった……まぁどうせ描き
:なおすから、いいけどね(笑)」
璃慧 :「次の部誌までには小説も書き上げるし……載せよっ♪」
悠 :「楽しみだねっ」
実際にいっしょに過ごしたのは、ほんのちょっとの時間だったけど。
もけ君はたくさんのものを残してくれた。
こころが、ほんのりあったかいのも、きっともけ君のおかげ……。
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