[KATARIBE 15464] [H06H] あなたならどうする: ふかとの遭遇〜璃慧の場合

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Date: Wed, 29 Sep 1999 00:32:43 +0900
From: 瑠璃 <lurimu@geocities.co.jp>
Subject: [KATARIBE 15464] [H06H] あなたならどうする: ふかとの遭遇〜璃慧の場合
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 こんばんは、瑠璃@現実逃避です(おひ)。

 なんとなく書いてみました〜。
 こうゆう時に書かないと、書くときなんてないし。
 銀佳に催促されたから……。
 勉強する気しないし……(汗)
 #EP 先に仕上げろって>自分


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ふかとの遭遇 〜璃慧の場合
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登場人物
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水瀬璃慧(みなせ・あきえ):吹利学校高等部1年。文芸部所属。
              独りでいることが多い。
ふか:ふかふかっ♪


本編
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 ごく平凡な、とある初秋の午後。
 璃慧は図書室に来ていた。

 窓から差し込む西日が、眩しい。

(もう、秋なんだね。これから、どんどん日が短くなっていって、空は遠のい
て……。あっちの山々は、紅に染まるんだろうね。五色沼、きれいだったよな
あ。雪に埋もれている姿の方の方も、ずっと素敵だったけど。
 こっちじゃ、一面に降り積もる雪なんて……、埋まるような雪なんて……、
見られないんだろうなあ…………)

 ほのかな郷愁と淋しさ、夏はもう終わったんだなという実感。
 暑くはなく暖かな日差しと、遠く高くなった天(そら)。時たま吹き抜ける
風は、無造作に長く垂らされている漆黒の髪を揺らし。ほてりかけている頬を
冷たく撫でつける。

 棚に腰掛け、外を眺める璃慧の視線は、下の方に。
 掛け声をこだまさせながら走っているのは野球部。コートの方では、スコー
トをはいた少女たちがラケットを手に走りまわり、その隣では、バスケットボ
ールが跳ねている。木々から飛び立つ鳥たちの後を追うと、空は蒼く、白く細
い雲、流れゆく。

 いつもの、放課後の一コマ。ゆったりとした時間。
 3階から見下ろしていると、自分一人が、そこから切り取られたような錯覚。
この感覚が、好きで。璃慧はよくここに来ていた。図書室を利用する人など、
レポートの宿題でもない限り、誰もいなかったし。この静寂と、部屋に満ちて
いる本の匂いが、心を落ちつかせてくれるから。

 小説の資料探しという、部活を抜けだす名目なんて、とうに頭から消し飛ん
でいて。頭の中をめぐるは、なつかしい過去ととりとめもない空想。意識は、
幻想(ゆめ)の世界へ。

 しばらくすると、いつものように、小説の主人公たちが頭の中を飛び跳ねる。
 古代倭を舞台に、動き出すキャラクターたち。璃慧の意識をも超えて、一人
歩きしだす。そうして、また新しい物語が織り成されてゆく――。

 (えっと……、この場面では………………)


 「ふかぁっ」

 突然ふってでたのは、まっ白な毛玉らしきもの。体長(?)は、10センチ
をこえているであろう程度。ふかふかの姿が首をかしげて見つめる姿は、とて
も愛らしい。

 (違うな……。なんか不自然。どうすればいいかなあ……)

 窓の外をぼやっと眺めたまま、意識は異世界へ飛んでいる璃慧。目の前で起
こっている珍事には、気付くわけがない。こういう時の彼女には、何をしても
無駄だった。話しかけても反応さえしない。

 「ふかっふかかあっ★」

 精一杯飛び跳ねている。抗議しているつもりだろうか。しかし、どんなに背
伸びしてとびはねても、宙を眺める璃慧の視界にまでは届かなくて。

 「ふかあああああっ」

 ちょっと、むっとした様子。しかたなく宙をふわふわと散歩し、璃慧の手の
上へ。ころっと寝っ転がる、と…………。

 「やだっ、くすぐったいっっ!」

 手をはらいのけると同時に、振り返ってみる。悠のいたずらかと思ったのだ
が、あたりは静かなまま。誰もいない。

 (……?? また、変なものでもいたのかなあ?)

 多少なりとも霊感を持ち合わせている彼女にとって、これくらいのことは日
常茶飯事だった。だいたい、風が通りぬけても、くすぐったいと感じる敏感肌
である。どこからか、羽毛か何かが吹き飛ばされてきただけのことかもしれな
い。そう自分を納得させて、ふたたび、空想の世界へ戻ろうとするが……。

 「ふかああ!! ふかふかかっ」

 今度は目の前に飛び出してきた。そのまま、体当たりしてこようとする。璃
慧が手を払った時に、一緒に床の方へ吹き飛ばされかけてしまっていたのだ。
素早く避けたから転げ落ちずにはすんだが、無視された上にそんな扱いをされ
ては、誰だって怒りたくもなる。
 ここまできて、ようやく璃慧は気がついて。

 「…………??」

 一瞬唖然とするが――

 「かわいいっっ!」

 日溜まりに浮かぶ、ふかふかの化身。その姿は、光の妖精を連想させた。

 (ケサラン・パサラン、だったっけ? きっと、こんな感じなんだろうなあ。
願いをかなえてくれる、毛玉のような妖怪…………で良かったっけか。覚えて
ないや。後で、悠に聞いて確認しよおっと。)
 すっかり璃慧の辞書になりつつある悠。

 璃慧が、勝手にそんなことを考えていると。

 「ふっかふっかあーー」
 (あ”…………、そっかあ。さっきのくすぐったかったのも、お前だったん
だね。……吹き飛ばしちゃったのか。かわいそうなことしちゃったなあ。)

 その抗議の意、感じ取った璃慧は。

 「ごめんごめん。気付かなかったんだよ。」

 といって、手を差しだす。毛玉君は、おどおどしながらも、満足そうに、そ
の手にくっついた。そして、コテンッと横になって、ごろごろごろ。

 (甘えてるみたい……。ほんと、可愛いなあ。)

 手をゆっくりとあげて、ふかふかと同じ目線に。つぶらな瞳を相手に、話し
始める。

 「ケサラン君?」
 「ふかっ(顔を傾ける)」
 「ふか?」
 「ふかあっ(にこっ)」
 「そっか。ふか君ね。よろしくっ。わたしはあきえ……、水瀬璃慧だよ。」

 のんきに自己紹介なんかして。
 じーっと見ていると、ふか君の瞳もこっちをじーっと凝視していて。彼の瞳
の中に、自分の顔が見えた。いつまでも、いつまでも、ふか君はわたしに、視
線を返しつづけてくれた。

 しばらくして。不意に思い立って、手を動かす。
 軽く反動をつけて、下から上へと。優しく投げ上げる。

 「ふっか〜」

 気持ちよさそうに、ふか君はとびはねていた。2回、3回と。得意になって、
空中回転なんかも、披露してくれる。

 そして。7回目。璃慧が軽く手を下げた時、ふか君はこっちをみつめた。

 「ばいばい……なの??」
 「ふかっ(こっくり)」
 「そっか〜」

 璃慧の笑顔は、ちょっと淋しそうだった。ちょっと現実から離れた、時が止
まったような空間に、いつまでもいたかった。なにより、ふか君との別れが、
なごりおしかった。

 「また……きっと、会えるよね。ばいばい。」

 そういって、優しく、光の方へ送り返す。ふかの瞳、見なかった。返事を聞
く時間もおかなかった。恐かったから。
 そうすると。

 璃慧の手を離れた後、ふかは言った。ちょっとおっきな声。目をそらしてい
る璃慧にも、聞こえるように。

 「ふかっ♪」

 窓に背を向けて、バッグを背負って、立ち去りかけていた璃慧。思わず振り
返る。見えたのは。

 にっこり笑ったふかの姿。それは、別れの挨拶じゃなくて、再会の約束のよ
うで。

 「またねっ」

 そう、笑顔で返した。

 ふかが光の中へ消えていくのを見守った後。思い立って、鞄を机の上にほう
って。鉛筆のノートを取りだす。

 (忘れないように。)

 そう、忘れない為に。ふかの姿、書きとめよう。
 久しぶりに絵を描いていると。ふか君が頭の中で、動きはじめた。新たな物
語の始まり。

 「書きあがったら、一番に、悠に見せよう。」

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 というわけでした〜。この後の続きは考えているんですけどね、銀佳と相談
してにしておきます。

 しかし、書いていてどうしても脇道にそれてしまう……。
 勢いだけで書こうとすると、書かなければならないこと、書くべきこと、省
くべきことの区別がなくなってしまうというのは、問題だよなあ……。

 ではでは。しつれいしまーす。




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瑠璃(Lurimu)
lurimu@geocities.co.jp

翼ひろげて 〜夢幻界への誘い〜
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