[KATARIBE 15460] [H06H] あなたならどうする : もけとの遭遇〜一十の場合 :

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Date: Tue, 28 Sep 1999 17:37:01 +0900
From: Masaki Yanagida <yanagida@gaia.fr.a.u-tokyo.ac.jp>
Subject: [KATARIBE 15460] [H06H] あなたならどうする  : もけとの遭遇〜一十の場合 :
To: kataribe-ml@trpg.net
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 企画だ企画だ。
 D16です。

 
 ようやく残暑も薄れつつある吹利の街。
 松蔭堂の土蔵に間借りして、惰眠をむさぼる男が一人。
 名月を愛でるよりも睡眠欲の方が先に立つ。
 開け放した窓からは、月の光が差込んでいた。

 一十		:「ぐー。すー。ぐー。すー」

 と、こそりと闇が動いた。
 
 もけ		:「もけ」
 
 両の掌に納まるほどの大きさか。闇に紛れて定かではない。
 ふさふさと進むたびに音がするのも、気のせいかもしれない。
 毛玉、のようにも見える。

 一十		:「ぐー……。」

 部屋の主はいぎたなく眠りこけている。
 キノエとキノトは今はオコジョの姿のまま、部屋の隅で丸まって
いる。

 もけ		:「もけ……」

 毛玉はふるふると震えていたが、やがてするすると主の枕元まで
寄って来た。

 もけ		:「もけぇ…」

 毛玉は主の顔に近づくと覗きこむ。
 寝息で黒い毛がそよいだ。

 もけ		:「もけっ(喜)」

 どうも、楽しいらしい(^^;;

 一十		:「ぐー」
 SE		:「そよそよ」
 もけ		:「もけっ」
 一十		:「すー」
 SE		:「さやさや」
 もけ		:「もけけっ」

 吸われたり、吹かれたりするたびに毛がそよぎ、そのたびにもけ
はふるふると震えた。
 と、その長い毛が主の鼻をくすぐった。

 一十		:「ぐー」
 もけ		:「もけもけ」
 一十		:「すー(むずむず)」
 もけ		:「もけもけぇ」
 一十		:「ぐー」
 もけ		:「もけけっ」
 一十		:「すー(むずむずむず)」
 もけ		:「もけけっ、もけっ」
 一十		:「んー(むずむずむずむず)」
 もけ		:「……もけ?」

 一十		:「びゃーっくしょぉおいいいいぇぇえい」
 もけ		:「もけぇぇぇぇぇぇえっ!!」

 しじまを破るくしゃみに驚くと、黒い毛玉は脱兎の如く土蔵の闇
に隠れた。

 一十		:「んー。冷えたかなぁ」
 
 なにも知らぬ主は目を覚まし、鼻をこする。
 窓から差込む冴え冴えとした光に気がつくと、窓に歩み寄り。頭
を出して空を仰いだ。

 一十		:「いい月だな」

 主はもう一度、今度は控えめにくしゃみをすると窓を閉め、眠り
についた。
 程なく規則正しい寝息が聞こえてきた。

 もけ		:「もけ?」

 闇の中で毛玉が一つ、土蔵の隅から闇に消えた。

D16
e-mail:yanagida@gaia.fr.a.u-tokyo.ac.jp
URL  :http://gaia.fr.a.u-tokyo.ac.jp/~yanagida
    

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