[KATARIBE 15319] Re: [HA06N] 「絆」暫定版

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Date: Sun, 19 Sep 1999 23:10:53 +0900
From: 瑠璃 <lurimu@geocities.co.jp>
Subject: [KATARIBE 15319] Re: [HA06N] 「絆」暫定版
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199909191409.XAA10393@mail.geocities.co.jp>
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 こんばんは、瑠璃です。

> 半角の「、」の影響がうちではもろにでてます(^^;

どうもすいませんでした〜。
文字化けしちゃったところもあるようなので、訂正して送り直します。
しっかりと書き直してから(2日で書いたのは、無謀でした……(汗))
流し直そうかと思ったんですが、
最近忙しくて、それだといつ流せるか分からないので……。

とりあえず、修正版ということで。
いろいろ悩んだので、感想いただけるとありがたいです。
お願いします。

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[HA06N] 『絆 (修正版)』
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登場人物:
水瀬璃慧(みなせ・あきえ)
    嘘という言葉を操る言霊使いの少女。小説家志望の優等生。
    生真面目すぎる部分あり。

白月悠(しらつき・はるか)
    当時は、国立吹利学校中等部2年の女の子。
    人間嫌いになってしまうほど、優しくて繊細。


冷たい帰路
----------
 暁から闇へと移りゆく空。璃慧は一人、路地を歩いていた。
 毎日通っている、見慣れたいつもの道。でも、いつまでたっても好きにはな
れない。
 2,30分ほどの人気のない道は、恍惚とした気分にさせる。

(もう、冬になるんだね……)

 吹き抜ける風は冷たい。

(ううん。冷たいのは……たぶん…………
 わたしのほう…………)

 嫌だった。
 なじめない学校。口先ばかりの、偽善者ばかりの、教師たち。
 陰口ばかりのクラスメート。
 見せかけだけの友情なんて……、優しさなんて……
 いらないのに!
 理想だけで現実を見ない両親。
 嘘とごまかしだらけの……、この世界。
 そして何より。
 不完全で、不安定で、今にも潰れそうなくらい脆いのに、
 強がって、生きている
 自分自身が。

 全てが…………、嫌だった。

(いっそ…………
 全てが壊せたら…………楽になるのにね)

 そうできないことも、本当は分かっていたのだ。
わたしには、死ぬ勇気すらない。勇気というと語弊があるかもしれない
が……。結局、現実のしがらみを棄てきれないのだろう。
 いや、これさえも、所詮言い訳に過ぎないのだろう。このまま、死んでいっ
たら、自分があまりに惨めだから。いつか、幸せはくると、信じたいから、そ
して信じているから……。結局、希望を諦める勇気すらないのかもしれな
い……。
 それに、生きていた意味もなく死ぬのは、嫌だった。逃げたくはない。せめ
て、わたしが……水瀬璃慧という人間がこの世に存在したのは、価値あること
だったと認めてもらいたい。わたしが存在した証しを、この世に残しておきた
い。

 そんなこと、とりとめもなく考えながら歩いていた。

(無邪気でいられた頃が、なつかしいよ。いつからこんなに、疲れちゃったん
 だろう……。まだ、13だっていうのにね……。)


 いつのまにか、陽は落ち。
あたりは真っ暗。薄汚れた街灯が、かすかに夜道を照らしだす。
三日月よりもさらに細い、繊月が妖しく輝く。細い銀色の糸が照る闇夜。
 足は機械的に動きつづける。

(行きたい場所なんて……、ないのに!)


 気が付いた時には、いつもの近道でもある小さな公園の中に来ていた。
誰もいない。当たり前だ。誰もいるはずがない。でも、淋しさを感じずにはい
られなくて……。



In Endless Rain
---------------
 小さな小さな公園。ちょっとしたスペースと、砂場。その上には、誰かが忘
れていったおもちゃのバケツ。青色は、とうにくすんでいた。
 ブランコは、風に揺れて、キーキー、音をたてる。

 「?」

 あしもとが、にわかに湿っていた。うつむいた顔を上げ、空を見上げる。
 いつのまにか、月も無数の星々も消えていた。
 今宵を支配するは、雲。重たく暗く。光は微塵もなかった。ただ一つ、壊れ
かけの外灯だけが、人工的な光を放つ。暖かさが感じられるはずもない。

  ぽつっ。

 夜の涙が地をぬらす。

  ぽつっ、ぽつっ。

 璃慧は、気にもとめず歩きつづける。むしろ、今は冷たい雨が心地よかった。

  ざーざーざーざー

 前触れもなく降り出した雨は、どんどん大粒に。激しく打ちつける。
なのに、不快ではなくて。むしろ、気持ちよいくらい。
何故かは分からない。自分の存在を、確認できるからなのだろうか……。

 ゆっくりと歩みより、ブランコのまわりの柵によりかかる。
 ふと、浮かびあがる、過去の1ページ。
 いつだって、「あの頃はよかった」って思う。
 そう、あの時だって、もっと昔がなつかしくて、現実が辛かった。
 でも今となっては、なつかしい、いい思い出。

  郡山の中学にいた時のこと。
  いつも、こんな豪雨の中でも、練習していた。
  ギスギスした人間関係は決して好きにはなれなかったけれど、
  ただひとり、心許せる人がいた。
  お互いに、いつまでも話してたよね。
  クラスのこと、教師のこと、部活のこと、この社会のこと……
  隠し事なんて何もなくて。
  そう、ちょうどこんな小さな公園。
  よく、近くのお店でちょっとしたおやつ買って
  部活帰りに、二人ブランコに座って、食べたな。
  短い時間ではあったけれど、
  多くのことがあった大切な瞬間。

 多くの思い出(こと)が、走馬灯のように頭の中をめぐると、
少しは気分が晴れた。

(また明日から、がんばろっ!)

 そう。くよくよ悩んでたって、何も変わらないんだ。また、明日があるから。
 走り出そう。そう思って、顔を上げた。
 これからのこと、考えなくちゃ。

(家に帰ったら、ご飯食べて、お風呂はいって…………
 9時からはあくな……。えっと、宿題は…………)

 とたんに現実に戻った頭。忙しく計算しだす。予定通りにいかないことなん
て分かっていても、やっぱり、先が見えないなんて、不安だから。

 しばらく、そのまま公園にいた。雨は降りつづけたまま。
 璃慧はそんなことは気にもとめていない。まだ、予定を考えているまま。
 でも、すっかり元気は取り戻したようだった。

 なのに…………


 (…………………………!!!)

 急に息苦しくなったのは、辛い現実を直視してしまったから。
 せっかく忘れかけていた、無意識の内に、無理矢理、思考の外に出していた
逃げたい現実を、みとめてしまったから。
 
 耐え切れなくなって、璃慧は叫び出す。
(誰か……!!
 誰か…………、たすけてっ!!)

 救いがあるはずもなく……



崩壊するもの受けとめるもの
--------------------------

「わたしが…………水瀬璃慧という人間が存在するなんて………………」
「嘘っっ!!!」

 気付いた時には、口走っていた。重圧に、おしつぶされるようにして。
 刹那、全てが凍る。そして……
 このまま楽になりたいという想いと、辛くても生き続けたいという想いが、
交錯。
 激しくぶつかりあって……

「うわあわわわああああああっ!」

 力の暴走。ぶつかりあう二つの心。その負荷は、あまりにも重過ぎた。

      ――コワレユクココロ――


 しかし、その時……

「違う!」
「嘘なんかじゃないっ!!」

 突然、大きな声。
 いつのまにか、公園の中に人が来ていた。璃慧と同じくらいの年の頃。やは
り女の子だった。淡い栗毛に寂しげな瞳。澄んだ声は、璃慧の「嘘っ!」とい
う心の呻(うめ)きに、反射して叫んだよう。

 その悲痛な声は、崩壊しかけていた璃慧の心にも届く。
 その声には、悲しみと優しさがあったから。憐れみなんかではなくて……。
 彼女もまた、同じような傷を抱える者。だからこそ、自分自身を見ているよ
うで、叫びださずにはいられなかった。そんなことを、無意識ながらも感じた。

 それに。璃慧も、心の底では、嘘なんかじゃない、と、知っていたから。信
じたいと思っていたから。でなければ、とっくに璃慧の存在なんて消えてしま
っている。
 少女が認めてくれたから。嘘なんかじゃないと肯定してくれたから。"嘘"
という、言葉の呪縛を解き放ってくれたから……。

 璃慧の瞳に虚ろながらも、光が戻った。ゆっくりと顔を上げる。

 それを見て、通りかかった栗毛の少女は、我にかえり、道路の方へと駆け出
す。勢いとはいえ、見知らぬ人に、叫んでしまった……。

 「まって……」

 口から出る声は、かすれていた。
 璃慧は慌てて追いかける。

 少女は立ち止まって、振り返る。そして、ゆっくりと璃慧の方に歩いてきた。

「大丈夫……?」
 ささやく声は、温かかった。



覚醒 −優しさが形なる時−
--------------------------
 「私は、はるか……。白月悠です。」

 栗毛の少女は、そう名乗った。璃慧も名乗りかえす。
 二人の間に緊張はなかった。言葉で言わなくても、お互いに、理解し得たか
ら。

 しばらくの沈黙。悠は空を見上げた。璃慧もつられて、顔を上げる。
 無数の星々が輝いていた。いつのまにか、雨は上がっていたよう。並んでブ
ランコにすわっている二人を、月が優しく照らし出す。


 「ごめんなさい……」

 ただ一言、璃慧は言った。つぶやいた、といった方が正しいかもしれないが。
 誰にともなかった、その声に、悠は何も言わない。ただ、静かに、立ち上が
る。2,3歩、踏みしめるように歩いて。そっと、璃慧の肩に手を置く。

(この人、私と同じなんだ。この世で生きていくには、あまりに生真面目な
 人……。優しすぎる人……。
  璃慧の、力になりたい。誰の為でもなく。自分の為に……。
  私の生きる理由が、見つけられるかもしれない……)

 その時、悠の掌(たなごころ)がほのかに輝いた。その顔には、淋しさや悲
壮感はなく、凛々しい。いや、凛々しさすらこえていた。そこにたたえらるる
は、神々しさ。

 璃慧は、軽くなっている心に気付く。
 はっ、と後ろを振り返ると、優しく微笑んだ、悠がいた。
 璃慧は、ようやく笑った。その頬を、一粒の涙がこぼれおちる。

 「ありがとう…………」

 その声は力なかったが、嘘偽りなんかじゃなくて、心の底から出た言葉。
 その言葉だけで、悠は救われた。
 璃慧の痛みは、消えてなくなったわけではない。悠が、受け止めてあげただ
け。
 でも、その痛みは、消えていった。
 二人とも、独りじゃなくなったから。かけがえのないものを、確かに手にし
たから。


 「ね、一緒に帰ろっ。」

 二人の声が重なったのは、1997年の晩秋。平凡な日の、宵の口。

 「友達になろう」、そんな哀しい言葉はいらなかった。お互いに、もう友達
だと、認識していたから。

 歩みだした二人を、無数の光は温かく見守った。

 そして、2年後、二人は同じ高校に通いだす。
 絆は、永遠に消えない。いつまでも、傷痕と共に、二人の胸に…………。




解説
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 璃慧と悠が中2の時の、晩秋が舞台です。
 1997年11月の末くらいを考えています。
 璃慧と悠との出会い、璃慧の精神外傷、そして悠の覚醒を描いてみました。
 当時、悠は国立吹利学校中等部に、
 璃慧は近くの公立中学へ通っていたことになっています。
 ちなみに、璃慧が転校してきたのは、中2の夏、1997年9月です。
 部活(ソフトテニス)を終えて、家に帰る途中の出来事。


$$
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 あ、そうそう。
 余談ですが、BGMは、「Endless Rain」と
 「The Last Song」でした(^.^)

 ではでは。
 しつれいしまーす。



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瑠璃
Lurimugeocities.co.jp

翼ひろげて 夢幻界への誘い
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