[KATARIBE 14821] [HA06J] エピソード (J) 『現実と狭間との間で

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Date: Mon, 16 Aug 1999 03:51:58 +0900
From: Djinny <djinny@geocities.co.jp>
Subject: [KATARIBE 14821] [HA06J] エピソード (J) 『現実と狭間との間で
To: kataribe-ml@trpg.net
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 こんにちは、 Djinny こと 古旗 仁 です。

 なんか、すごいものを流してしまっているのかも。

 IRCチャンネル #裏で断続的に掛け合われたものを編集してみました。
 これも、エピソードと言えるのでしょうか。

 暫定稿です(こんなもん正式版つくるのか〜)。

 いずみみさん、お付き合い感謝でした。前後がないので、できたら増補して
いきたいです。また暇をみて〜〜。
 極隊さん、台詞あったのに「いない人」にしてしまってごめんね。
 不観樹さん、描写まで入れて頂いてどうもでした。

 最後に、読んでるみんな、おこんないでね。(^^;;

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エピソード(J) 『現実と狭間との間で』
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登場人物
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じにー
おそらく、創作TRPG「語り部」に参加しているプレイヤーの一人。
現実とゲームの境界が曖昧になりつつある。

ろせい
じにーの友人らしい。ネット仲間かもしれない。

勇那
創作TRPG「語り部」のキャンペーンコード「狭間06」に登場する
キャラクターの一人。


混沌
----
 勇那……と僕は呼びかけた。勇那は居ない。僕が存在を否定したからだ

 「……」

 一度否定しておいて未練たらしく呼びかけるのだから、みじめなものだ

 「…………」

 それでも僕は呼びかけた。簡単なことだ。僕は都合よくキャラクターを利用
しようとしているのだった
 ……現実からの逃げ場所として。

問い掛け
--------
 「否定は死なのでしょうか」

 頭の中で声がした。僕はそれに応える

 じにー    :「いや、違う。勇那のコミュニティの中では勇那は生きて
        :いる。僕の世界にJOINしてこないだけだ」
 じにー    :「僕の世界にいなくても、勇那は生きてる」

 「あなたが見ていない時の私は、誰にとっての私でしょうか。私自身のため
の私なんて、誰かのための自分よりも意味がないことかもしれないのに」

 僕は僕の世界で絶対的な存在ではない。だが、僕という個にとっては、僕は
唯一絶対の存在だ。誰かが知っている僕が僕の全てではない筈だった。勇那は
違うのだろうか。
 勇那は……勇那自身の中でも相対的な存在なのだろうか。わからない

 僕はカップの中のぬるい麦茶を呷った。

 だが、そもそも僕はそこに惹かれたのではなかったのか。勇那というキャラ
クターの、その部分の設定に。

 「私の世界。誰かの世界の私。世界の中の誰かと私。……私には分かりませ
ん。誰かに与えられた役割通りに存在し生きる。だれかが呼びかけてくれるこ
とをひたすら待ち続ける……それが当たり前のように思えます」

 また声がした。勇那の声だった。
 僕は彼女を抱きしめたくなった。
 ……いじらしかった。彼女の言葉が哀しかった。

 じにー    :「誰がどう思おうと、君は君じゃないか」

 月並みな台詞だった。いつもの僕なら、鼻で笑いそうな台詞だった。
 だが、いざとなるとそんな言葉しかでてこない。

 僕は……文字の上にしか存在しない者に恋をした
 それは……僕の倫理観が許さない恋だった
 世界観と言い換えても良い、僕は目に見える世界以外を許容でない筈だった

 じにー    :「それでも、僕は君というキャラクターが好きだ」


まどろみの中で
--------------
 セミの声がする。僕は、また、誰かの真似をしてみる。

 じにー    :「勇那…… 頭がいたい。蟲がいる……」

 ろせい    :「痛くない頭はあるかないかさえも、判らないから。いた
        :いということは頭があるということだね」

 勇那     :「大丈夫、ここにいるから。恐くない、こわくない……」

 誰かの声が聞こえた。勇那の声のようだった。

 返事があるはずはなかった。彼女は文字の世界のじんぶつで、僕はこの現実
にそんざいしているのだった。
 それなのに、僕は、彼女の声を聞いたような気がした。
 ああ、これは、きっと……

 勇那     :「たしかにとどかない声だけど」
 勇那     :「あたしはずっとここにいる………」

 じにー    :「うん……いいんだ。きっとこれは夢なんだ。だから、
        :勇那……もう少し側に居てくれ」

 この微睡みのけだるい気分が続いている間だけでいいから。

 勇那     :「……いつまでも……あたしは……ここに……」

 ろせい    :「現実と非現実の区別。その境界すら、実はあいまいだか
        :ら……」
 ろせい    :「夢と現実は、幻想の神の前に跪き祈るしかないのさ」
 ろせい    :「きっとね」

 僕の目の前にはろせいくんが居た。

 ろせい    :「そうかな……別の夢かもしれない」


覚醒の後
--------
 勇那は……いない。行ってしまったのか、と思い、僕は徐々に現実に戻る。
 勇那の声のようなものが、まだ耳の奥に残っている。それは、夢が消えると
ともに薄れていくはずだった。

 ゆな     :あた……し……は……

 目の前には17インチのモニター。スクリーンセーバーが作動している。
 朝焼け。光帯。そして徹夜明けの室内に、夏の朝の蒸し暑い空気がどんより
と流れ込んでいる。
 扇風機は、寝る前の通りに、律儀にゆっくりと首を振っている。ぬるい空気
がかき混ぜられる。

 じにー    :「ろせいくんは……きょうはFさんの家だったか」

 僕はチャットにそう書き込む。ややあって、ろせいくんのメッセージが表示
される。

 ろせい    :「そうだね………………」

 じにー    :「変な夢を見てたよ。キャラチャットでお気に入りのキャ
        :ラクターが出てくる夢だ。僕ももう相当なもんだな」

 猫の毛が、わずかに絡んだキーボードに、指はまだ踊り続ける。

 ろせい    :「キャラクターはキャラクターだよ。そう、僕も。君も。
        :なら、誰が夢に出てきても……不思議でもなんでもない」

 じにー    :「そうだよな……でも、僕と彼女とはこの世界では逢えな
        :い運命にもある……」

 そんなことを言っても仕方がないのはわかっていた。
 徹夜明けで疲労した僕の目に涙が盛り上がる。
 猫が起きる。自分の身体を舐めている。雀の断続声が窓の外から聞こえる。

 ろせい    :「そうかもしれない。そうでないかもしれない。現実と非
        :現実が等価なのならば。この世界は非現実をも包含して
        :いるのだから」
 じにー    :「ああ、きっと……そうなんだ。どちらが現実かなんて
        :……考えてもなにが出てくる訳でもない」

 ろせい    :「そうだね。……どこまでも、ころがる。
        :それでいいのかもしれない」

 ろせいくんは僕ではない誰かへの返事を書き込んだ。彼の現実にはその相手
が存在しているのだ。だが、キーボードの前の僕の現実には、その人はいない。

 僕の現実に勇那は居ないのだろうか……?

勇那
----
 勇那     :「どうして欲しいの?」
 勇那     :「居て欲しいの?いないで欲しいの?」

 そんなことは決まっている。居て欲しい。居てくれたら、居てくれるだけで
僕はきっと幸せな気分になれる

 勇那     :「じゃあ、なぜいないと思うの? 居ると望めば、あたし
        :はいるのに」

 馬鹿を言ってはいけない。現実はそんなに甘くないのだ。
 どこかの誰かが作って動かしているキャラクターに、そんなことを望んでは
いけないのだ。

 勇那     :「そう……じゃあ私ももうそばにいられない……」

 現実は甘くはない。なぜならば、甘くない現実を現実として認識しようと
しているから。……ろせいくんの言葉が頭に浮ぶ。

 ろせい    :「君は君の認識の中にいるのさ…………」

 僕はそっと微笑む。

 じにー    :「そんなものかもしれないな」

 勇那     :「いないあたしはどこにいるのだろう……」

 勇那。君は、確かにそこにいる。いきづいている。

 じにー    :「君は語り部//狭間06というゲームの中の1キャラク
        :ター」

 言いながら、涙が零れる。疲れた目を潤すためだけの涙だ。冷たい涙だ。

 勇那     :「……そうね。どう望んでもそれ以上にはなれず、誰が
        :望んでも誰の現実もうけとめることができない」

 ろせい    :「僕は現実//日本国というゲームの中の一キャラクター」
 ろせい    :「メタゲームもまたゲームなんだよ…………………」

 そうだ。そのとおりだ。それはまちがってなんかいない。

 急に、世界がひどくシンプルに思えてきた。

 どれもこれもそれぞれの世界なら、別に
 それらがつながったせかいがあったっていい
 なにがあったっていいんだ……

 ろせい    :「何があっても良い。何が無くても良い。それは、きっと
        :全て許される」

 僕は、急に、ごく間近に勇那の存在を感じた。

ここへおいで
------------
 じにー    :「佐久間君達に悪いかな? 勇那」
 勇那     :「佐久間君達?」
 じにー    :「うん。僕は、彼らを呼んでやらないからさ」

 僕はにやっと笑った。

 じにー    :「僕が一緒に居て欲しいのは、君だけだから。僕の世界に
        :は、この世界のほかに君だけしか必要じゃないから」

 勇那はまだ渋っている。

 勇那     :「そう。そうね。でも……あなたにとって私はほんとうに
        :必要だったかしら? なにも変えてあげられないあたしを」
 じにー    :「なにも変えられないなんて、どうして思うんだい。
        :それは、これから確かめればいいことじゃないか」

 勇那は言った。強く願えば現れると。
 僕は、願った。
 勇那、君と一緒に居たい。姿を現しておくれ、と。
 君が欲しいんだ。他の誰かじゃない。


$$

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 追伸

 私は確かに勇那というキャラが好きですが、今の所勇那の幻聴や幻覚を見る
には至っていません。いずみみさん及び勇那ファンの皆さん、ご安心ください。


 それでは失礼します。


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 Djinny(ランプの魔物)
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