[KATARIBE 14786] 「 WP01P]:EP: 終末の誕生日

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Date: Wed, 11 Aug 1999 15:18:14 +0900
From: ソード  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 14786] 「 WP01P]:EP:  終末の誕生日 
To: kataribe-ml@trpg.net
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99年08月11日:15時18分10秒
Sub:「WP01P]:EP:終末の誕生日:
From:ソード


こんにちは、ソードです。

誕生日EP2本立て第2弾。終末の住人偏です。


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エピソード  終末の誕生日
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登場人物
月島直人(つきしま・なおと)
    喫茶・月影の店長。8月11日が誕生日。物体の再生と崩壊が可能。
更雲優(さらくも・ゆう)
    月影でウェイトレスをしている終末の住人の一人。
更雲翔(さらくも・しょう)
    直人の高校時代からの友人で天才マッドエンジニア。更雲優の製作者。

8月10日、喫茶・月影
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 閉店間際、客は既に居なく、優が後かたずけと言って残ってくれていた。

 直人     :「優ちゃん、もうあがって良いよ」
 優      :「あ、はい……」

 最後のテーブルを拭き終わり、手を休める。
 いつもの、何か雰囲気の違う優。

 直人     :「?……あ、ごめん。お茶出そうか?」
 優      :「いえ……」
 直人     :「もう、後レジ締めて終わりだからさ、大丈夫だよ」
 優      :「はい……」

 なにか、引っかかる受け答え。依然として着替えに奥に戻ろうとしない。

 直人     :「どうしたの?」
 優      :「あの……もう少し……ここに居ても良いですか?」
 直人     :「いいけど……家に帰らなくて大丈夫?」
 優      :「はい……マスター……あ、翔さんが……『今日は帰って
        :こなくて良い』……って(赤面)」

 途切れ途切れに、耳まで真っ赤に染めながら言葉を出す。

 直人     :「え……?」
 優      :「だから……私……今日は……直人さんに……」
 直人     :「え……あの……いや……まずいよ……ねぇ、やっぱ。も
        :う少し自分を大切にだね……」

 途中で、言葉を遮られる。遮ったのは、涙で潤んだ優の瞳。

 優      :「……」
 直人     :「ゆう……ちゃん……」

 ゆっくりと、二人の距離が縮まる。

 SE     :カラカラン
 翔      :「お〜い。仕事終わったかぁ」
 直人     :「うわぁぁっ!……し……翔」
 優      :「あ……(赤面)」
 翔      :「ん?どうした?……よいしょっと」

 何か、大きな物をテーブルの上に載せながら、飄々とした表情を向ける翔。

 直人     :「な……なんで今ごろくるんだよ……」
 優      :「あの……『今日は帰ってこなくて良い』って……」
 翔      :「ん?……ああ、今日は夜通しだからな」
 直人     :「なんで……夜通し何をするんだ?」
 翔      :「何言ってるんだ、忘れてるのか?明日は何日だ?」
 優      :「あ……」
 直人     :「明日?8月11日……って、俺の誕生日か……」
 翔      :「そういう事だ。去年もやっただろう?」(がさがさ)

 持ってきた荷物の梱包を解く翔。

 翔      :「去年のと同じ看板使えるかららくだのぅ」
 直人     :「持ってたのかよ……」
 翔      :「うむ。『こんなこともあろうかと』な」
 直人     :「で、わざわざ持ってきたのか……」
 翔      :「若干改造されているんだぞ」

 そう言いつつ、看板はついにその全貌をあらわす。……と言うほど大袈裟な
ものではないが……。

 直人     :「どう変わったんだ?」
 翔      :「『祝:第○○回目1999年度なおとくんお誕生会』。○○
        :のぶぶんは電光掲示板だ。しかもちゃんと2ケタ表示だぞ」
 直人     :「10回以上もループさせるつもりはないっ」
 翔      :「念のためだ」

 念のため……にしては不謹慎ではある。

 直人     :「んなことしてたら、俺達三十路過ぎちまうんだぞっ」

 直人は直人で、全然別の危機感を抱いているらしい。

 翔      :「それは困るのぅ」
 直人     :「もっと真剣に困ってくれよ……」
 翔      :「まぁなんとかなるさ」
 直人     :「やれやれ……」

 溜め息をつきながらも、その表情に笑みが浮かぶ。
 翔のこの行動は、ちゃんと計算されているものだと知っている。去年のこの
日は、何かあるとノイローゼ気味であったのだ。
 方に力を入れすぎては、何も成功しないのは確かである。

 翔      :「さて……後数分だな」
 優      :「直人さん、今日もまた来ますかね?」
 直人     :「ああ……あれかぁ……」

 グランドクルスと関係があるかは不明なのだが、昨年のこの日、能力が飛躍
的に高まった事があるのだ。
 そのおかげで見つけた住人の仲間も居るくらいである。

 直人     :「今夜は、こないかもしれないし、一時的な力を当てにす
        :るわけには行かないよ」
 優      :「そう……ですね」
 翔      :「よし、始めるか」
 直人     :「ああ」
 優      :「直人さん、誕生日おめでとうございます」
 翔      :「またひとつ老いたな」
 直人     :「ありがとう。優ちゃん。お前も同い年だと言う事を忘れ
        :るなよ……翔」

 シャンパンをあけ、グラスを合わせる。

 直人     :「!」

 直人の動きが止まる。

 直人     :「結界?……それと……アルタの崩壊か?」

 感覚が研ぎ澄まされている。ここから新宿アルタまで、結構な距離がある。
結界を感知し、しかも、普段は出来ない物質が崩壊して行くのをも感知したの
だ。

 SE     :ジリリリッ

 電話が鳴る。

 直人     :「はい、月影です」
 珠希(電話) :「あ、直人くん?敵よ……場所は……」
 直人     :「アルタ前ですね?」
 珠希(電話) :「え……うん」
 直人     :「すぐ行きます」

 そのまま、電話を切る。

 優      :「直人さん……」
 直人     :「早く、2000年を迎えましょうね」
 翔      :「いくのか?」
 直人     :「ああ、今日の俺は普通じゃない。すぐに終わるさ」
 優      :「私も行きます。今夜は一緒に居るって決めたから……」
 直人     :「ありがとう。じゃあ、行って来る」
 翔      :「さっさと終わらせてこい」

 早く、まともに誕生日くらい祝える身分になりたい。
 終末の住人に、月影に、休息が与えられるのは、もう少し先の話だ。

 新宿の夜に、月の光は奇麗に差し込み、ビルは影を作っていた。

時系列
 1999年8月10日夜

**************************
 ってなかんじです。

 修正ありましたらお願いします。

 なお、今回の「敵」ってのは別に裏とかあるわけじゃない雑魚なので、
対した事ではありません(笑)

 ではまた





    

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