[KATARIBE 14782] [WP01P] 『夕焼け小焼けで』

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Date: Wed, 11 Aug 1999 03:19:16 +0900
From: ICHIKAWA Takuaki <bobu@din.or.jp>
Subject: [KATARIBE 14782] [WP01P] 『夕焼け小焼けで』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199908101822.DAA21410@ms1.din.or.jp>
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ども、BOBUです。

1ヶ月ほど前のログをEP化しました。
gallowsさん、修正のほうおねがいします。

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エピソード 『夕焼け小焼けで』
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登場人物
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 桜居珠希(さくらい・たまき) :
 伊野辺荘司(いのべ・そうじ) :

時系列
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1999-2nd、5〜6月あたり…かな?


屋上
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 夕日に照らされる学園。
 屋上の扉が開いて珠希が出てくる。

 珠希     :「…また風邪引いたかしら、ちょっと頭痛いわね」
 珠希     :「やっぱり屋上は人が少なくて良いわね(ぼー)」

 屋上から正門の方を眺めている荘司。
 珠希、荘司を見つける。

 珠希     :「ゲホッ……居たの、荘ちゃん」
 荘司     :「(振り向いて)あ、珠希ちゃん。……風邪?」
 珠希     :「ちょっとね…」

 そのまま屋上に寝転がる珠希。冷えた床が気持ちいい。
 そんな珠希に近寄る荘司。

 荘司     :「なら、中にいた方がいいんじゃないの?」
 珠希     :「いいの、此処が気持ちいいから」

 空を見上げると、雲が流れていくのが見える。

 荘司     :「こんな所いたら余計ひどくなっちゃうよ?」
 珠希     :「いいのよ、別に」

 全てを視界から消すように目をつむる珠希。
 なんとなく、屋上から下を見やる荘司。
 と。

 珠希     :「…去年、美術科の教師が一人居なくなったの知ってる?」

 珠希がぽつ、と話しはじめた。

 珠希     :「その時、生徒も一人居なくなったんだけど、アレ私の姉
        :なのよね…」

 振り返った荘司に、眼をつむったまま話す珠希

 珠希     :「二人はもうこの世には居ないし、誰の記憶にも残ってい
        :ないけど…」
 珠希     :「姉にそうさせてしまった私の罪は…」
 珠希     :「(声のトーンが変わる)どうなるのかしら」

 荘司には、珠希が何を言おうとしていたのかわからなかった。
 ただ、珠希は「罪」を償うために何かしようとしている。
 そんな気がした。

 荘司     :「(うつむいて)……ごめん……僕には判らない……」
 荘司     :「でも……でもさ、珠希ちゃんがやろうとしてること、間
        :違ってないと思う」

 なんてつまらない言葉なのだろう。
 もうすこし気の利いた台詞が浮かんできても良いのに。

 荘司     :「気休めかも知れないけどさ……」

 なにも言ってあげられない。
 あるいは言うべきではないのかも知れない。
 だが、荘司はそんな自分が悔しかった。

 少しして、珠希はため息をつくと、

 珠希     :「真剣に悩んじゃって、バカみたい……他言無用よ」
 珠希     :「……でも、ありがと」

 その一言で、少し救われた気がした。
 と、咳き込む珠希。

 珠希     :「ゲホゲホ……ああ、なんかやたら「落ち」てるわね」
 荘司     :「……やっぱり中に入った方がいいよ」

 心配そうにいう荘司。
 だが、珠希は目をつむったまま微動だにしない。

 荘司     :「珠希ちゃん?」
 アナウンス  :「まもなく午後六時です、生徒は速やかに下校して下さい」
 珠希     :「……帰らないの?」
 荘司     :「珠希ちゃん、立てる?」

 と、手をさしだす荘司、だが。

 珠希     :「来ないで……こっち見ないでそのまま帰りなさい」

 珠希は無意識のうちに拳を握りしめていた。

 荘司     :「……わかった……」

 扉の閉じる音がした。

 珠希     :「……最低ね、私」

 それからしばらくして、ふたたび下校を促すアナウンスが流れた。
 立ち上がってフラフラと階段を降りていく珠希。
 その足音を聞きつけて荘司が立ち上がる。
 だが、珠希は何かを考え込んでいて、気づいた様子はなかった。

 荘司     :「珠希ちゃん」

 前を通り過ぎようとした珠希に、呼びかけた。

 珠希     :「あ、ああ、待っててくれたの……」
 荘司     :「うん、家まで送ろうと思って」


帰り道
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 夕陽はすでに沈んでいたが、まだ外は明るかった。

 珠希     :「…情けないところ見られちゃったわね」
 荘司     :「そんなことないよ。それに、僕は前に見られてるからこ
        :れでおあいこだよ」

 そういって荘司は笑った。

 珠希     :「…フン、私がアナタとあいこなわけないでしょ(カツカ
        :ツ)」
 荘司     :「あ、体調悪いんだから。もうちょっとゆっくり歩いた方
        :がいいよ」

 荘司も足を早めた。

 珠希     :「……(負けるモノかと歩き続ける)」
 荘司     :「もう、しょうがないなぁ」

 苦笑すると、追い抜かないように少し後ろに立って歩く荘司。
 珠希はそんな荘司を見て、ぼそっと言った。

 珠希     :「……優しいのも良いけど、少し強引に何か決めつけてく
        :れるくらいの男らしさがあると格好いいわよ」

 しかし、荘司にはよく聞こえなかったらしく。

 荘司     :「ん、何?」

 聞き返された。

 珠希     :「ま、今のままでも嫌いじゃないけどね」

 そう言うと珠希はすっ、と近寄って荘司の腕に自分の腕を絡ませた。

 荘司     :「(狼狽)珠希ちゃん?」
 珠希     :「黙ってなさい(微笑)」
 荘司     :「……(照)」


解説
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それでは。
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BOBU <Takuaki Ichikawa>
E-Mail   : bobu@din.or.jp
    

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