[KATARIBE 14535] [ HA06 ] [Novel]  『11年目の真実』 第五章『遺跡の向こうに…』

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Date: Fri, 30 Jul 1999 20:40:39 +0900
From: 球形弐型  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 14535] [ HA06 ] [Novel]  『11年目の真実』 第五章『遺跡の向こうに…』 
To: kataribe-ml@trpg.net
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99年07月30日:20時40分34秒
Sub:[HA06][Novel] 『11年目の真実』 第五章『遺跡の向こうに…』:
From:球形弐型


どーも、球形弐型です。

いよいよ、核心に迫る第五章です。
今回から、視点が伊佐見教授からとなります。

さあ、本当に『加由羅』を見つけることが出来るでしょうか?
では、続きです。
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[HA06][Novel] 『11年目の真実』
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第五章 『遺跡の向こうに…』
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 私は、伊佐見泰三…大学で助教授をしている。
 専攻は考古学…今では、世界中を飛び回って、あちらこちらの遺跡調査をしている。
 周りのみんなは、アクティブな研究者だと言っているが…何、要はじっとしている
のとデスクワークが嫌いなだけだ。

 こんな私を可愛がってくれる人が居る…。
 私は彼を師と仰いでいる。
 それが木原教授だ。
 そんな彼が取り憑かれた『加由羅』とは…。

             ******

昭和62年 冬…

 私は、東京に居た。
 その頃の私は、木原教授と同じ大学にいたのだ。
 それと言うもの、木原教授が私と共に研究したいと言ったらしいので、私は同じ大学
へと来ることとなった。誠に有り難い話だ…。
 そして私は、殺風景な研究室で、嫌なデスクワークをしていた…。

  伊佐見:「うーむ……あー、止めだ、止め…。」

 私は、デスクワークに嫌気がさし、その場で放り投げた。
 と言っても、誰かがやってくれる訳ではない。やっぱり私がやるしかないのだ。

  伊佐見:「はーっ…早くどこかの調査に行きたいものだ…。」

 私は、溜まった書類を憎々しげに眺めながら呟いた。

  SE:コン、コン…

 その時、研究室のドアと叩く音がした。私は、「はい」と言って答える。
 すると、ドアを開けて入ってきたのは、私の恩師、木原教授だった。

   木原:「あー、伊佐見君、ちょっといいかね?」
  伊佐見:「ああ、木原先生…いいですよ、今、書類整理が一段落した所なんで。」

 本当は、書類整理などほとんどやっていない。
 まぁ、木原先生と話をするもの、気分転換にはいいだろう…私は、そう自分を納得
させた。

   木原:「話と言うのは…実は、吹利である遺跡を調査したいのだよ。」
  伊佐見:「吹利に遺跡?……と言いますと?」
   木原:「ほら…前にも一回話しをしただろう?あれだよ。」
  伊佐見:「…もしかして…『加由羅』ですか?」
   木原:「ああ…その『加由羅』だよ。」

 加由羅…それは、木原先生が数年前から、吹利で探している遺跡のことだ。
 詳しいことは、私もよく分かっていないが、何でも歴史的発見の価値があるものだそ
うだ。

  伊佐見:「それって、伊吹山付近に作っている公園の工事中に見つけたと言う奴で
     :すかね?」
   木原:「ああ、その通りだよ。……とうとう、その『加由羅』の発掘調査の辞令
     :が降りたんだ。」
  伊佐見:「へー、それは、おめでとう御座います先生。」

 私は心から、先生に祝福の声をかけた。

   木原:「ついては、伊佐見君にお願いがあるのだよ。」

 木原先生は、急に真剣な顔立ちで、私に話しかけて来た。

  伊佐見:「そんな…改まってお願いだなんて…私は先生の為なら、何でも協力しま
     :すよ。」
   木原:「実は…二つお願いがあるのだ。」
  伊佐見:「二つ?……いやー、先生の頼みなら、二つでも三つでも好きなだけ構い
     :ませんが(笑)」
   木原:「一つは…今回の発掘調査に君も参加して欲しいんだよ。」
  伊佐見:「そりゃ、願っても無いことです。こちらからお願いしたいくらいですの
     :に……で、二つ目とは?」
   木原:「実は…誠に言いにくいこと何だが……資金のことなんだよ…。」
  伊佐見:「資金?」
   木原:「ああ…実は、辞令が降りたことは降りたんだが……経費が足りないかも
     :知れないのだよ。」
  伊佐見:「ほほう…しかし、大学もケチですなぁ…もっとぱーっと出してくれても
     :いいのに。」
   木原:「確か、伊佐見君の家は、資産家だったと聞いたんでな…。」
  伊佐見:「資産家だなんて……そんな大層なものじゃないですよ。」

 まぁ、確かに、私の家系は元々武家の家柄で、戦前はかなりの土地を所有していたと聞
いたけど、今では、その半分も無い。と言っても、普通の人から見れば、余裕があるだろ
うと思うが……。

  伊佐見:「うーん……まぁ、時と場合によっては、資金提供もしますが…そんなに予
     :算が足りないんですか?」
   木原:「いや、それほど深刻な問題でもない。ただ、今回の調査自体、まだはっき
     :りした歴史的根拠に基づく遺跡の調査では無いんでなぁ…。」
  伊佐見:「はぁ…。」
   木原:「歴史的価値が無いと分かれば、大学側も資金を削減してしまうことだろう
     :……が、今回ばかりは、中途半端に終わらせたく無いのだよ。」
  伊佐見:「そうですか…うーん…まぁ、そこまで言うなら、助力は惜しみませんが…」
   木原:「……理由を聞きたいかね?」
  伊佐見:「出来れば……あ、言いたくないなら、別に良いですよ。私は、そんなに心
     :の狭い男じゃないですから。(苦笑)」

 木原先生の『加由羅』に対する思いは、かなりのものだ…私は、先生の話を聞いてて、
それがはっきりと分かっていた……いや、もしかしたら、私が、単なるお人好しなのかも
しれない……。

   木原:「すまないね、伊佐見君……。理由を言ってもいいのだが…これから言う話
     :を信じてくれるかね?」
  伊佐見:「……分かりました、心して聞きますよ。」

 木原先生は、『加由羅』に取り憑かれた経緯を、私に話し始めた…。
 幼い頃出会った少女のこと、少女から貰った「かけら」のこと、その他色々なことを、
私に話てくれた。
 確かに、先生の話だけを聞いたなら、馬鹿げてると言う人も多いだろう。
 だが、私は、先生ほどの人格者が、夢幻の出来事だけを鵜呑みのして、今回の調査をし
ている訳がない……やっぱり私は、ただのお人好しなのだろうか?

  伊佐見:「分かりましたよ、先生。要は、その遺跡を調査してみれば、全てが分かる
     :でしょう。それだけのことですよ。」
   木原:「すまない、伊佐見君…。」

 木原先生は、私に深々とお辞儀をして、謝っていた。
 私は、そんなことより、その『加由羅』の方の興味が湧いてきた……と言うより、今の
デスクワークから逃れたいだけかもしれないが…。

             *******

昭和63年 春…

 吹利県伊吹山……
 
 その頃、『加由羅』遺跡の発掘は既に行われていた。
 幾つかの出土品も出てきている。が、しかし…どうも、木原先生の言っていたものとは
違っていた様だ。
 私が見るに、この発掘した出土品は、恐らく縄文時代の物だろう。

   木原:「……違うな……こんな物じゃない…。」

 先生が、何かを噛みしめる様に呟いていた。

  伊佐見:「違うんですか……困りましたね。」
   木原:「うむ……まぁ、この吹利にも縄文時代に、集落が存在したと言う証明には
     :なったがな……。」

 先生は、腑に落ちない趣の様だった。先生の言っていたのは、もっと高度な文明の様に
聞こえた。とても、こんなありがちな遺跡ではないはずだ。
 と言っても、これだけでも十分歴史的価値はあるのだが…。

   木原:「やはり……長期戦になりそうだな…。」
  伊佐見:「そうですな……。」

 私は、先生の言っていた「中途半端に終わらせたくない」と言う言葉を思い出した。
 本当、このままでは、長期戦になりかねない…。遺跡はあるのだが、求めていたものと
違う……こんな例は、世界でも珍しく無いものだが…、少なくとも、私は今までのこんな
ことを味わったことが無かった。

  伊佐見:「まぁ、仕方ないですな。やれるだけのことはやりましょう。」

 私は、先生を励ます様に言ってみせた。遺跡調査とは、こんなにも難しいものだったの
だ…私は、改めてそう実感せずにはいられなかった。

               *******

昭和63年 初夏…

 まだ、『加由羅』の発掘調査は終わってない…。
 しかし、未だに先生の言っている文明に関する出土品はおろか、痕跡も発見出来ていない。
 やはり、先生の言っていたことは、夢幻のことだったのか…。いや、そんなことはないは
ずだ……とにかく、今はやれるだけのことをするだけだ。

  伊佐見:「先生……ちょっと休みましょうよ。」
   木原:「ん?……ああ、そうだな、少し休むか…。」

 私は、休憩所へと足を運んだ。

   木原:「うーむ……間違いだったのか…いやいや…。」

 先生は、何やら独り言を言っている様だ。私は、何とかして先生の願いを果たしたい…。
 しかし、こうも当てが外れると、何を言って励ましてあげればいいのか分からない…。

  伊佐見:「先生……場合によっては……。」
   木原:「……いや、私は諦めんぞ……諦める訳にはいかないのだ。」
  伊佐見:「しかし……」

 その時だった……調査隊の一人が、私たちを呼んでいたのだった。
 私たちは慌てて駆けつける……。

   三木:「教授!!こっちです、こっち。」

 教授の助手である、三木君が何かを発見した様だ。
 その場所は、実際に調査している場所より、更に伊吹神社よりの方だった。

   木原:「こ、これは!?……」

 そこには、ぽっかりと穴が空いていた。しかし、意外に大きな穴だ。人が入れるくらいは
あるだろう。

  伊佐見:「先生……もしかして、これが…。」
   木原:「ああ……かもしれん。」

 見た目でも、人工的に掘った穴だと言うことが、私たちには分かった。

   三木:「実は……出土品を掘り出してした時、随分大きな岩が出てきたので、邪魔だ
     :と思い退けてみたら、いきなりこんな穴がぽっかり空いていたんです。」

 そこは少しなだらかな、斜面になっていた。だが、その辺り一帯は、最低でも10m以上
掘っているはず……この辺り一帯で、10m以上の位置なら、多分、縄文期以前だろう。
 私は、掘り起こした岩を見てみる…、岩と言うより…何かの蓋の様にも感じる…。
 色々な角度から見てみる……うーむ…自然の岩だが…何か手を加えた感じがする。

   木原:「……やはり、私の探していた『加由羅』だよ…」

 そう言った先生の視線の先にある壁には……何かの模様が書かれていたのだった…。

                               つづく
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さて、『加由羅』は見つかりましたが…まだ、真実は見えません。

次で、ついにその『加由羅』の全貌が明らかに(爆)

次回、最終章『11年目の真実』前編です
では。
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球形弐型こと「伊沢英人」

hi-izawa@m1.interq.or.jp又はBallMk-2@trpg.net

http://www.interq.or.jp/www1/hi-izawa/swan.htm
<ひでSWANの暇つぶしに出来たHP>

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