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Date: Wed, 21 Jul 1999 15:25:52 +0900
From: ソード <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 14408] [WP01P]: 『悪夢』仮まとめ
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199907210625.PAA04425@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 14408
99年07月21日:15時25分46秒
Sub:[WP01P]:『悪夢』仮まとめ:
From:ソード
こんにちは、ソードです。
とりあえず、今までの分をまとめて流します。
時系列
> とりあえず、「うしなわの後」で、次の「大事件」はまだ起きていない。
>というあたりにしましょうか。
うしなわ後、中野決戦(未定)前の予定ですね。
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「悪夢」
=======
発端
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夕方。山の手線の電車にて。
吹子 :「あ?」
座席に座って寝ている中年男性の髪が、不意に燃え上がったのを見て
思わず叫ぶ。
友人A :「どうしたの?」
吹子 :「みえ、ないの?」
友人B :「なにが?」
だが、まわりの友人達は、いやその本人も含めて自分以外の乗客全てが、
今も燃えている、その黒い炎に気付いていない。
吹子 :「だって……あ!?(黒い、炎!?)」
見直して、ようやく気付く。
黒い炎など自然に存在する筈が無い。
友人A :「……?(訝しげ)」
吹子 :「なんでも、ない……」
彼女は何とかそういった。
吹子 :「(錯覚、よね……)」
だが、その炎は自身の存在を誇示するかのように、
さらに烈しく燃えあがり……
吹子 :「(咲い、た……?)」
そう。まるで、蕾から花が咲くように、ゆっくりと
左右に広がって……
吹子 :「…………」
魅せられたように、片手をその炎へと伸ばす。
と、炎がふわりと舞い上がり、差し伸べられた
その手にとまる。
吹子 :「あつっ」
一瞬、蝶のように『羽ばたいた』その炎は、花に止まる蝶のように
吹子の手に止まると、そのまま消えてしまった。
一瞬の、焼けつくような痛みだけを残して……。
友人A :「ふうちゃん?(心配そう)」
吹子 :「な、なんでも、ない……(今の、一体……?)」
友人B :「ほんとに大丈夫?(こっちも心配そう)」
と、駅に着き、乗客の一部が、外に出て行く。
友人A :「あ、席空いたよ。座ろ」
と、促し、3人とも椅子に座る。
座ってしばらくして、右手に違和感が起きる。
不思議に思って、手を見ると……。
吹子 :「!!」
右手に黒い炎が纏わりついている。
ちらちらと透明感のある黒い舌が、その右手を舐めていく。
吹子 :「ひっ!!」
熱さは感じない。……いや、感覚そのものが、ない。
自然にはありえない黒い炎は、熱を感じさせる事もなく、その右手を焼き、
食い尽くしていく……。
吹子 :「いやぁっ!!!」
友人A :「ふうちゃん!?」
友人B :「ふうちゃん大丈夫?」
と、唐突に炎が消える。
焼かれた筈の右手も、元に戻っていた。
吹子 :「え……?」
友人A :「どうしたの? 随分うなされたけど……」
吹子 :「!?」
友人B :「もしかして、寝不足?」
吹子 :「そんな、だって……」
友人A・B :「???」
吹子 :「……なんでもない」
それからは何事もなく駅に着いた。
友人A :「今日ははやく帰って寝た方が良いよ?」
吹子 :「うん……(疲れてるのかな)」
友人B :「じゃ、また明日」
吹子 :「バイバイ」
友人A :「じゃあね」
半ばフラフラと、道を歩いていく吹子。
交差点に差し掛かり、赤信号に気付いて立ち止まる。
と、
吹子 :「!?」
赤信号なのに、脇を摺り抜けて歩いていく気配。
目を凝らすと……
吹子 :「ひっ」
「全ての信号が赤の時は、死者が通る時間」
そんな噂を聞いたのはいつの事だったろうか……。
後頭部がぱっくりと裂けた少女が横断歩道を渡っていく。
吹子 :「いや……」
顔の半分が欠け落ちた男性が道を渡ってくる。
吹子 :「いやあぁっ!!!」
叫ぶ吹子に気付いた死者達が、ゆっくりと振り返る。
失われた右目の空洞から涙のように黄色い液体を流している青年。
ちぎれた左腕を、右手で持っている女性。そして、つぶれた腹から
内臓がはみ出ている老婆……。
そんな死者達が、吹子を見つめ……にやりと笑みを浮かべる。
気がつくと、信号は青になっていて、怪訝そうな視線を送りながら
人々が道を渡っていく。
吹子 :「…………(怯え)」
吹子は逃げるように走っていった。
倒れる少女
---------
ふらふらと、憔悴しきった表情で歩いていた少女が、
不意にバランスを崩したように歩道で倒れた……。
新宿の雑踏が遠巻きになる。助け出す人はいない、それぞれが群集の顔をう
かがっている。
冷たい街……と呼ばれた事もある新宿である。その群集から吹子の元へ駆け
寄る人影が二つ。
竜也 :「おねぇちゃん、大丈夫?」
吹子 :「ん……」
竜也の呼びかけに、彼女は答えない。 珠希はその自分と同じ年頃の少女の額
に手を当て、様々な可能性を考えてみる。
珠希 :「うーん、そう大したことじゃないとは思うんだけど素人
:判断じゃわからないわよねえ。救急車呼んだ方がいいかな」
竜也 :「あ、たま姉ちゃん。ここからならウチまで連れてってお
:医者さん呼んだ方が早いよ」
竜也は少し前にインフルエンザで寝込んだときに、父親代わりの直人が医者
を呼んでくれたときのことを思い出した。
珠希 :「そう言うことなら話は早いわね。じゃあ私が荷物とかは
:持つから、竜也君お願いね」
竜也 :「………」
竜也は、そのままうなずいて彼女を背負う。30センチメートルの背丈の差は、
背におぶっても頭の上に頭が乗っかる。
しかし、足取りはしっかりしていて、ふらつくような事はない。
珠希 :「へえ……結構がんばるじゃない」
竜也 :「早く……いこう」
と、ゆっくりと歩き出す。さすがに普段の歩みと同じスピードを出す事は出
来ない。
珠希 :「よしよし、がんばれ」
珠希は、声をかけるだけである。
通りすがりのカップル
--------------------
SE :てってってっ
一人の少年が、白い犬を散歩させている。
少し普通でないのは、少年がまだ小学生らしく、白い犬が少年の身体を優に
しのぐ大きな犬であるという事だった。
SE :てってけてっ
やけにペースの速い散歩である。
かといって犬に振り回されている様子もない。少年と犬の息はぴったり合っ
ている。少年は犬の好きに走らせているし、犬は少年のリードに大人しく従っ
ている。
しかし、この散歩について行く人がいたら、おそらくあまりのペースの速さ
に音を上げているだろう。
SE :てってけてってってっ☆
少年・鞍馬と白犬・ルーシーは、こうして週に一二回は新宿界隈を散歩して
いる。碓氷奏雅の口利きで、ルーシーのお散歩役を鞍馬が引き受けることにな
ったのだった。
所要時間にすれば大したことはないが、ルートは新宿一帯に及ぶ。その日も、
あちこちを走り回った後に彼ら一人と一匹は駅前にさしかかった。
鞍馬 :「……? ルーシー、待って!」
ルーシー :「……ハッ、ハッ、ハッ……」
流れていく雑踏の間に、一つの異様な人影がのろのろと動くのが見える。
どうも、一人の女性がどこかへ担がれていく途中のようだ。その女性を担い
でいるのは……。
鞍馬 :「竜也くん?」
鞍馬はそう呼びかけながらルーシーをつれて駆け寄った。
竜也 :「あ……(はあはあ)」
既に吹子が倒れてから1区画程度は歩いている。さすがに、竜也の体力では
限界に近かったが、弱音を吐く事はしない。
竜也に続いて、珠希が傍らに付き添っているのにも気付く。
鞍馬 :「あ……お姉ちゃんだったんだ」
珠希 :「……あら、鞍馬君じゃないの。どうしてここに?」
鞍馬 :「犬の散歩だよ」
ルーシー :「ワンッ」
鞍馬 :「……どうしたの?」(吹子を見て)
珠希 :「行き倒れよ。とにかく、この子の知り合いの医者がいる
:って言うから、そこに連れて行くことにしたんだけど」
鞍馬 :「竜也君じゃつらいよね……僕が運ぶよ。
:珠希ちゃん、これをお願い」(と言って、散歩紐を渡す)
珠希 :「OK。……って、ちょっと!」
SE :ずるずるずる☆
鞍馬 :「ルーシーは力が強いから、気を付けてね」
珠希 :「先に言いなさいよ!」
鞍馬 :「よっ☆」
鞍馬は軽々と吹子の身体を抱え上げた。……軽くて柔らかくて、いい香りが
して、純情な鞍馬は思わず顔中が熱くなってくる。
珠希 :「……何を耳まで真っ赤にしてるのよ(ニヤニヤ)」
鞍馬 :「いいじゃないかっ」(赤面)
竜也 :「こっちだよ」
そのままスタスタと竜也の後を歩いて行く。
彼の身体能力は、竜也の比ではない。
珠希 :「さすが……たいした物ねぇ……」
いまだ目覚めぬ…
----------------
喫茶店「月影」にはすぐに着いた。いつも通りの店内には丁度お客も一人も
おらず、鞍馬は迅速に意識不明の少女を奥の居間に寝かしつけ、竜也はすぐに
直人に事情を説明しにカウンターの方へ行く。残る珠希はというと荷物持ちと
ルーシーの散歩で既にへろへろだった。
珠希 :「はぁ結局私が一番疲れた気がするわね…っと、それどこ
:ろじゃないんだった。鞍馬君、様子はどう?」
鞍馬 :「駄目、みたい。なんだかうなされてるみたいだし」
そこに竜也と直人が入ってくる。
竜也 :「今お医者さん呼んだよ、すぐ来てくれるって」
珠希 :「まあ大したことじゃあないと思うんだけどね」
直人 :「ご苦労様、まあ紅茶でも飲んで少し休んで下さい」
医者が来るまでには五分とかからなかった、本当に店の近所に住んでいるの
だろう。竜也の判断は正しかったようだ。
店の方から豪快な大声が響いてくる、およそ知的なイメージからはほど遠い。
医者の声 :「よう、坊主。大きくなったなぁ」
直人 :「こないだ会ったばかりじゃありませんか(苦笑)」
医者の声 :「で、患者はどこなんだ」
直人 :「奥で寝かしてあります」
そうして入ってきたのは中肉中背の大入道という感じの男だった。顔中に傷
跡があり、ご丁寧に眼帯まで付けている。その男はのしのしと眠ったままの少
女の方に近づき、ゆっくりと腰を下ろす。
一方、その医者の異様な風体に、初めて見た鞍馬と珠希は不安になってきて
いた。珠希が直人に耳打ちする。
珠希 :「…ちょっと、何よこの人?」
直人 :「大丈夫ですよ、昔からの知り合いで腕は確かです。しか
:も彼も住人なんですよ、芦屋団十郎さんと言います」
鞍馬 :「え?」
団十郎 :「おいおい、坊主達は出てってくれ。嬢ちゃんは手伝いだ」
直人と鞍馬と竜也は追い出され、店の方に戻る。
それからしばらくして、診療を終えた団十郎と珠希も店の方に来てカウンター
に座る。
直人 :「で、どうでしたか?」
団十郎 :「おう、別に身体の問題じゃなさそうだな。おつむの問題
:なのかもしれねーが、まあうなされてたしそう大した問題
:じゃあねえんじゃねえか? ただ眠り病とかだったらちょ
:いと問題だな」
珠希 :「まあね、起きたときにでも聞きましょ」
竜也 :「はあ、大したことじゃなさそうなんだね」
鞍馬 :「よかったね」
しばらくしてその医者、団十郎は帰っていった。一応鎮静薬を数錠だけ置い
ていったが、必要はないだろうと言っていた。
午後六時、今日はこんな事になってしまったので早めに店を閉めた。店内に
は直人と竜也、先程まで買い出しに行っていた優。珠希と鞍馬も一度ルーシー
を帰しに行きはしたが、今はまた戻ってきている。
直人 :「それにしても、人助けなんて珍しいですね」
珠希 :「別に、竜也君が騒ぐから付き合ってあげただけよ」
鞍馬 :「ねぇ……荷物とか、調べなくていいのかな」
珠希 :「何を考えてるのかしら? この少年はっ」(ぐりぐり)
鞍馬 :「痛いなぁ、そんなんじゃないってばっ」
直人 :「確かに……調べる必要はあるでしょうね。お家の人も心
:配するかも知れませんし」
結局、珠希の一応の立ち会いのもと、直人が手荷物を開けてみる。
竜也 :「…………何だかいっぱい入ってるなぁ……」
鞍馬 :「……ほんとだね」
珠希 :「女の子にはね、大切なものがいっぱいあるものなのよ。
:(偉そう) ほら、あまり見ないの!」
中から出てきたのは……
まずノートや教科書。ペンケースに下敷き。
そして生徒手帳。
珠希 :「あ、あったあった。
:これで住所が解るわ(^^)」
手にとって住所を見てみる。
珠希 :「ここ、か。電話借りるわね」
直人 :「どうぞ」
SE :「プルルル……、プルルル……。プルルルル……ガチャ。
:はい東風です。ただいま留守にしております。ピーと言う
:発信音がしたら御用件を……」
珠希 :「あれ?」
鞍馬 :「どうしたの?」
珠希 :「留守電になってる」
手帳をぱらぱらとめくってみる。
珠希 :「あ、こっちかな?」
SE :「プルルル……、プルルル……。ガチャ。
女の子 :「はい、南風原(はいばら)です。どちら様でしょうか」
珠希 :「東風吹子さん、ご存じですよね」
南風原 :「ええ、吹子は従姉妹ですが…なにか?」
1時間後、東風吹子の従姉妹という人物が月影まで彼女を引き取りに来る。
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