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Date: Tue, 20 Jul 1999 18:31:49 +0900
From: 球形弐型 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 14388] [ HA06 ] [Novel] 『11年目の真実』第二章 『再会』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199907200931.SAA08163@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 14388
99年07月20日:18時31分46秒
Sub:[HA06][Novel] 『11年目の真実』第二章 『再会』:
From:球形弐型
どーも、球形弐型です。
やっと第二章が完成しました。
今回は私の「似非関西弁」を入れる予定だったんですが(爆)
sfさんの協力を得て、修正してもらいました。(笑)
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[HA06][Novel] 『11年目の真実』
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第二章 『再会』
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昭和59年 夏…
木原:「おお、由依ちゃんじゃないかね」
由依:「こんにちは、木原のおじちゃん」
私を呼び止めたのは、私の従弟の娘の「由依」だった。
私は一人っ子なので、両親も既に他界したこの吹利に自分の家は無い。
だから私は、ここ十数年、里帰りなどしなかったのだった。
だが、今回は何かが私を里帰りさせたいと心を駆り立てる。
それは、あの「少女」のせいだろう。
*****
その夜から暫くの間、私は従弟の家に厄介となることとなった。
次の日、昔の幼なじみ達と出会って、宴会をしようと言う話になった。さな
がら同窓会と言ったところだろう。
ただ、私は数年前に肝臓を悪くして、酒を止めてしまった。
でも、昔の仲間と語り合えると言うのは、酒が無くても私は嬉しかった。
男:「いやー、けんちゃん久しぶりやのう」
木原:「おぉ、懐かしい、会うのは何年ぶりかな〜……」
などと、お決まりの文句を言う。そして、子供の頃の話に華を咲かせた。
川で遊んだこと、山で木登りをしたこと、近所の小うるさい爺さんの家に悪
戯したこと…全て懐かしい思い出だった。
男:「そういや、けんちゃん、昔よう伊吹山に登っとったなぁ」
木原:「お? そうだったか?」
男:「子供の頃……せやな、確か小学校の頃やったと思うんやが……親
:に黙って伊吹山によう登っとったって、自慢しとったやないかい」
木原:「そうだったかなぁ……もう忘れたよ……」
私は、苦笑しながら曖昧に答えた。戻ってきた理由が「その伊吹山での話」
なんて言えるわけもない。
確かに、私は伊吹山に登っていたのは自慢していた記憶はあった。
がしかし、少女については誰にも言ってない。
当時は、恥ずかしくて少女のことなど人に言えるはずもない。もっとも今と
なっては、誰も信じてくれないだろうし……。
男:「伊吹山っつーたら、なんや公園を作る話が出てるそうやで」
木原:「ほほう、あんな山の中に公園かね?」
男:「よう知らんけど、学園都市化事業の一環やいうて、あちこち工事しと
:るんやわ」
幼なじみ達との思い出話…私は、やはり伊吹山に登ってみたくなった。
年のことを考えると、普段ならそんなことは思いもつかないだろう…。
がしかし、登ってみたい…そして、会えるなら会ってみたいものだ…あの「少女」
に…。
******
暫く経ったある日の夜、私は又あの「夢」を見た。
夢の中で少女は、ひたすらあの「言葉」を繰り返していた。
『少女:「約束だよ…」』
どうして、少女は私に助けを求めたのか…。
腑に落ちず、何度も何度も考えていた。だか、答えは見つからない…。
私は、焦りと苛立ちにも似た感覚に襲われていた。
どうしても答えを見つけたい。何故、そんなに考えるのか?…
それは、今の私にも分からない…、が、少女の言葉だけが耳から離れることは無
かった。
木原:「…良し、伊吹山に登ってみるか…」
私はそう決心する。
もっとも、伊吹山に登ったからと言って、答えが見つかるとは限らない。
だが、心の取っ掛かりくらいは取れるだろう。そう私は考えた。
******
次の日、私は先祖の墓参りの後、伊吹山へと向かう。
今では、道も整備され、登るのには楽だ…と言っても山道は年寄りには堪えるも
のだ。
木原:「ふぅ〜…しかし、良くこの山を登ったものだなぁ…」
私は、流れる汗を拭いながら、ふとぼやく…。
子供の頃とは言え、子供の体力で良くこの山に登れたものだと、子供の頃の自分
に関心していた。
都会に慣れた、初老の私には、流石に山道は辛いものだ。
しかし、心の蟠りを晴らすには、この伊吹山を登るしかなかった。
歩くこと2時間…私は、とうとう伊吹の頂に登ることが出来た。
其処には、相変わらず「伊吹神社」がそびえ立っていた。
と言っても、子供の頃見た伊吹神社では無い。
その社は、数年前にでも新しく立て直したのだろか。
そこから見える景色も、変わらないのは山並みだけ…伊吹山の頂から見える吹利
は、子供の頃見た景色とは大分違いを見せていた。
吹利の中心街は、ビルが建ち並び、あちらこちらに空き地も目立っている。
そして、私の目指す「頂」これからもう少し奥に行ったところにあるのだった。
更に奥に進む…暫くして、こそに「何かを祭っているモノ」が見えた。
一体何を祭っているのかは、未だに私にも分からない。
木原:「はぁ、はぁ…ここだ、ここだ。」
私は息を整え、其処へしゃがみ込んで、見える景色を眺めた…。
そして、変わらない眺め…社も山並みも…そして、少女も…。
……少女も?
私は目を疑った…。
そう、其処には昔と変わらないままの、あの少女が立っていたのだった。
少女:「こんにちは、賢治君…」
木原:「き、君は?……」
そして、私は少女と再会することが出来たのだった…。
だが、この歳にになっては、その現状を理解することが出来ない
子供の頃に会った少女…そして、今見ている少女…
この少女は同じ娘なのか…だが、私のことを「賢治君」と呼んだぞ…。
一体、何が起こっているのか…私は堅くなった思考を、張り巡らし考えに考えた。
少女:「賢治君……変わらないね。」
その一言で、私は考えるのを止めた。
ふと、周りの景色が更に輝いて見えてくる…。
まるで、子供の頃にタイムスリップしたかの様に思えた。
賢治:「や、やあ、又会えたね。」
少女:「ふふふ…約束だらね。」
確かあの時、少女は私に約束した。
『少女:「また会おうね。」』
そう言ったことを思い出した。
少女:「私との約束覚えてる?」
賢治:「うん、覚えているよ。」
少女:「そう、良かった…。」
そう言うと少女は、嬉しそうに微笑んだ後、私の手を取りこう言った。
少女:「お願い、助けて欲しいの…」
賢治:「…うん、助けるよ。…絶対にね。」
少女は、事実を語ることは無かった…が、しかし、私には少女が何故助けて
欲しいのか…そして、何処に居るのか…何となく分かった様な気がした。
******
私は不意に目が覚めた。其処は、伊吹神社の前だった。
日は暮れ、既に辺りは夕刻となっていた。
その後、私は「頂」へと向かったが…其処には何も無かった…。
やはりあれは「夢」だったのだろうか?
……いや、そんなことは無い。確かに少女は居た。
そして、私の手には、模様の書かれた、何かの「かけら」があったのだった。
つづく
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はてさて、とうとう「少女」に再会した木原教授ですが、
これからどう「加由羅遺跡」にたどり着くのでしょうか?
次回 第三章『約束は果たす為に…』です。
では。
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球形弐型こと「伊沢英人」
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