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Date: Wed, 14 Jul 1999 20:53:12 +0900
From: 球形弐型 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 14281] [ HA06 ] [Novel] 『11年目の真実』第一章
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199907141153.UAA26452@www.mahoroba.ne.jp>
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99年07月14日:20時53分09秒
Sub:[HA06][Novel] 『11年目の真実』第一章:
From:球形弐型
どーもー、何か最近急に話しを進めている球形弐型です。
今回は『11年目の真実』の第一章を流します。
この頃には、もう伊佐見教授と出会い、一緒に考古学の道を歩んでいる
感じとなってます。
と言うか、木原教授の方が、先生なんですけどね。
では、『11年目の真実』の続きです。
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[HA06][Novel] 『11年目の真実』
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第一章 『忘れられぬ約束』
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昭和59年 春…
私は研究室に居た…。
去年発掘作業をした、遺跡のレポートを書くために。
この頃の私は、東京の某大学の教授をしていた。
木原:「……まぁ、なんとも懐かしい夢だな。」
そう、私はさっきまで疲れて眠っていたのだ。
「夢」…そう、夢を見た…懐かしい…そして、忘れてはならないこと…。
『少女:「約束だよ…」』
少女は確かにそう言った。
木原:「しかし、何故今頃になってこんな夢を見たのだろう?」
私は多分疲れていたせいで、そんな夢を見たのだと思っていた。
…少女…それは、摩訶不思議な出会いであった…。
しかし、あれからその少女には一度も会っていない。
多分、親が帰ってきたのだ…そう私は、自分に言い聞かせ、少女の後を追うのを
止めた。
それから、40年ほどの年月が経ち、少女との約束など、当の昔に忘れていて
大人になり、そして考古学者となっていた。
私が考古学者になった理由は、これと言って無い。歴史に興味持った…ただ、
それだけのことだった。
SE:コン、コン。
生徒:「せんせー、居ますかー?」
木原:「ん?ああ、開いてるよ。」
静寂を破る様に、私の教え子が入ってきた。
*****
あの夢を見てから数日…私は、どうにも気になって仕方がなかった。
少女の『助けて欲しい』と言う言葉が、どうしても頭から離れなかったのだ。
少女は何を助けて欲しかったのだろう?
これと言って思い当たる節も無い。もっとも、それほど親しい間柄になった
わけでも無いので、彼女の素性については全く知らない。
木原:「助けて欲しい…か…。」
私は、大学の廊下を歩きながら、もう一度その言葉を繰り返してみた。
男:「やあ、木原先生。」
ふと、私の名を呼ぶ人が居る。
木原:「おぉ、伊佐見君じゃないかね。」
伊佐見:「お久しぶりですね、先生。」
伊佐見泰三…元は、私の教え子だった男だ。大学を卒業してからは、私と同じ
考古学の道を歩み、今では世界各国を周り遺跡の調査、発掘をしている。
木原:「どうしたのかね、こんなところに来るなんて…」
伊佐見:「いえね、丁度昨日イタリアから帰って来たところなんで、挨拶
:だけでもと。」
木原:「ほうほう、今はイタリアかね?」
伊佐見:「いや、来週から南米なんですよ。」
木原:「君も、忙しい身だねぇ…。」
伊佐見:「ええ、お陰様で。日本に居着くことすら出来ませんよ。(苦笑)」
この男、少々変わった所はあるが、なかなか優秀な考古学者である。
私と違い、日本国内に拘らず、主に国外の文明遺跡を調査しているのだ。
伊佐見:「先生は、今何の発掘をしているんですか?」
木原:「ん?…あぁ、今は去年発掘調査をした奴のレポートに追われてい
:るよ。」
伊佐見:「そうですか…大変ですねぇ。」
木原:「何を言っとる。君の方が、よっぽど大変じゃないか。(苦笑)」
伊佐見:「いやー、まぁ、机の上で書き物してるより、現場で動いている
:方が、楽ですよ。」
私も年を取った。そろそろ引退して、こういう若い世代に譲る時期に来ている。
そう実感せずにはいられなかった。
伊佐見:「先生もどうです?今度の南米の遺跡の調査に加わりませんか?」
木原:「いや…私は、もう国外の調査をやるには、年を取りすぎたよ。」
伊佐見:「何言ってるんですか。まだ先生は若いですよ。」
廊下を歩き、研究室へと入る。
確かに、国外の遺跡に興味が無い訳ではない。しかし、私は国内の遺跡に拘っている。
何故かと言うと……別にこれと言って無い。
多分、国外に出るのが嫌なのだろうか…。私は、やっぱり古い人間なのだ。
私は、彼にお茶を入れながら、ふと考えてみた。
木原:「そう言う伊佐見君は、国内には興味が無いのかね?」
伊佐見:「いえ、そう言うわけではありませんよ。ただ…」
木原:「ただ?」
伊佐見:「…ただ、老後の楽しみに取っておこうかと(笑)」
木原:「はっはっはっ…、なら、私は老後の楽しみで、国内の遺跡の調査をして
:いることにしておこうか。(苦笑)」
と、私はお茶を濁してみた。
伊佐見:「あ、そう言えば、先生って吹利の出身でしたよね?」
木原:「うむ、そうだが…確か、君もそうだったねぇ。それがどうかしたのかな?」
伊佐見:「いや…確か、吹利には色々興味深い、古代の文献や神社などがあったなぁ
:と思いましてね。」
木原:「ふむ…胡散臭い噂なら、色々知っているがね。(苦笑)」
伊佐見:「まぁ、考古学とは、そう言う所から、きっかけが出来るモノでしょう?」
木原:「ふふふ……興味が湧いたら、それとなく調べておくよ。」
吹利……私の故郷……そう言えば、もう何年も帰っていない。
木原:(久しぶりに里帰りでもしてみるか…)
私は、何故、少女の夢を今頃見たのか…多分、そろそろ里へ帰ってこいと言う暗示なの
だろう…そう考えてみる。と途端に故郷が恋しく思えた。
*****
……懐かしき故郷…そして、再会の予感…
昭和59年 夏…
木原:「…おぉ…この駅も久しぶりだな…。」
蝉の嘶く頃…私は、伊吹駅に降り立った。
しかし、久しぶりと言っても、私が知っている伊吹駅とは大分違っていた。
駅の駅舎も、町並みも…昔とはまるで違っていたのだ。
だが、私の懐かしき故郷であることは間違いない。それだけは分かっていた。
少女:「あ、あのー……」
木原:「ん?……私を呼んだかね?」
少女:「はい。」
其処には、私を呼び止める少女が居たのだった…。
つづく
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さて、呼び止めた「少女」の正体とは?
それは次回のお楽しみです。(笑)
次回は 第二章 『再会』です。
ではでは。
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球形弐型こと「伊沢英人」
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