[KATARIBE 14185] Re:[HA06P] 『夜の西瓜』

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Date: Sun, 11 Jul 1999 23:08:45 +0900
From: ICHIKAWA Takuaki <bobu@din.or.jp>
Subject: [KATARIBE 14185] Re:[HA06P] 『夜の西瓜』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199907111411.XAA05427@ms1.din.or.jp>
In-Reply-To: Your message of "Sun, 11 Jul 1999 16:37:39 +0900" 	<199907110736.QAA07075@ns0.mahoroba.ne.jp>
References: <199907110736.QAA07075@ns0.mahoroba.ne.jp>
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ども、BOBUです。

いずみさんの修正をいれた完成版です。

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エピソード 『夜の西瓜』
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登場人物
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 佐久間拓巳(さくまたくみ) : 霊体化能力者。風見アパートの住人。
 遠野勇那(とおの・ゆな)  : 里見鏡介に憑いている、元気な幽霊。

本編
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 実家から、西瓜が送られてきた。
 大きさはそれほどでもないが、数が多い。
 とても一人では食べられそうにないので、隣人一同に配ることにする。

 佐久間     :「…で、お隣さんで最期っと。鏡介くん、いるかーい?」

 こんこん。

 ノックの音にひょい、と顔を出したのは勇那だった。

 勇那      :「あ、佐久間っち。鏡ちゃんなら出かけてるよ」
 佐久間     :「あ、そっか……まいったなぁ」
 勇那      :「どしたの?」
 佐久間     :「いや、実家から大量に西瓜を送ってきたからさ。みん
         :なに配ってたんだけどね」
 勇那      :「その袋?」
 佐久間     :「うん、ほら」

 手にしたビニール袋の中には、1/4に切った小さめの西瓜が2つ。

 佐久間     :「この季節だし、外に置いとくと駄目になっちゃうんだ
         :よね」
 勇那      :「食べちゃえばいいじゃない?」
 佐久間     :「いくらなんでも、一人で食べるには多すぎ……」

 と、そこで言葉を止めて勇那の方を見る佐久間。

 勇那      :「え? 何?」
 佐久間     :「勇那ちゃん。この西瓜、一個食べない?」

 おもわず吹き出す勇那。

 勇那      :「気持ちはうれしいけど、それは無理ってもんよ〜」
 佐久間     :「大丈夫、やればできるって。……そうだなぁ、屋根の
         :上で食べようか」

 霊体化して天井に消える佐久間。
 勇那がためらっていると、

 佐久間     :「ほらほら、いい月が出てるよ」

 と、上から呼ぶ声が聞こえた。

 勇那      :「ったく……なんでみんな人の話をきかないかなぁ」

 ため息をつきながらも佐久間に続いて屋根に上がる勇那。

 勇那      :「ちょっと、あんまり人をからかわないでよね……」

 と顔を出した勇那に、西瓜を差し出す佐久間。

 佐久間     :「はい、勇那ちゃんの分」

 手渡された西瓜を思わず受け取ってしまう。

 勇那      :「あ、ありがと……って、ええっ!?」

 (多少透けてはいたけれど)たしかにその西瓜はそこにあって。
 しかも、勇那はそれを手に持っていた。

 勇那      :「嘘……どうして?」
 佐久間     :「西瓜を霊体化したんだよ。ま、食べてみて」

 自分の分にかぶりつく佐久間。

 勇那      :「うん……」

 といったものの西瓜を見つめたまま、ぼうっとしている勇那。

 佐久間     :「もしかして西瓜、嫌いだった?」
 勇那      :「あ、いや、そんな事無い、けど……」
 佐久間     :「けど?」
 勇那      :「(くすっ)……ううん、なんでもない。ちょっと信じ
         :られなかっただけ」
 佐久間     :「?」
 勇那      :「あたしでも……って、まいっか。じゃ、遠慮なくもら
         :うね〜」
 佐久間     :「どうぞどうぞ」

 しばらくは2人の西瓜を食べる音だけが響く。
 やがて。

 勇那      :「ね、佐久間っち。またなにか頼んでもいい?」
 佐久間     :「ん? もちろん、いつでもどうぞ」
 勇那      :「ふふ、ありがと」

 西瓜を食べる音。虫の声。
 空には月。屋根では風見鶏がふらふらと揺れていた。

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それでは。
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BOBU <Takuaki Ichikawa>
E-Mail   : bobu@din.or.jp

    

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