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Date: Thu, 8 Jul 1999 12:44:09 +0900
From: ソード <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 14122] Re: [WP01P] 「悪夢」
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199907080344.MAA17160@www.mahoroba.ne.jp>
In-Reply-To: <199907072248.HAA14854@www.mahoroba.ne.jp>
References: <199907072248.HAA14854@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 14122
99年07月08日:12時44分00秒
Sub:Re: [WP01P] 「悪夢」 :
From:ソード
こんにちは、ソードです。
時系列はうしなわの直後という事で話を進めます。
なお、珠希さんがバイトをする話はIRCだけなので、今回は「月影」メン
バーとして扱います。
> 竜也 :「ここからならウチまで連れてってお医者さん呼んだ方が
> :早いよ、すぐ近所に住んでるんだ」
竜也 :「あ、たま姉ちゃん。ここからならウチまで連れてってお
:医者さん呼んだ方が早いよ」
で、修正も加えたまとめ版を流します。
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「悪夢」
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発端
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夕方。山の手線の電車にて。
吹子 :「あ?」
座席に座って寝ている中年男性の髪が、不意に燃え上がったのを見て
思わず叫ぶ。
友人A :「どうしたの?」
吹子 :「みえ、ないの?」
友人B :「なにが?」
だが、まわりの友人達は、いやその本人も含めて自分以外の乗客全てが、
今も燃えている、その黒い炎に気付いていない。
吹子 :「だって……あ!?(黒い、炎!?)」
見直して、ようやく気付く。
黒い炎など自然に存在する筈が無い。
友人A :「……?(訝しげ)」
吹子 :「なんでも、ない……」
彼女は何とかそういった。
吹子 :「(錯覚、よね……)」
だが、その炎は自身の存在を誇示するかのように、
さらに烈しく燃えあがり……
吹子 :「(咲い、た……?)」
そう。まるで、蕾から花が咲くように、ゆっくりと
左右に広がって……
吹子 :「…………」
魅せられたように、片手をその炎へと伸ばす。
と、炎がふわりと舞い上がり、差し伸べられた
その手にとまる。
吹子 :「あつっ」
一瞬、蝶のように『羽ばたいた』その炎は、花に止まる蝶のように
吹子の手に止まると、そのまま消えてしまった。
一瞬の、焼けつくような痛みだけを残して……。
友人A :「ふうちゃん?(心配そう)」
吹子 :「な、なんでも、ない……(今の、一体……?)」
友人B :「ほんとに大丈夫?(こっちも心配そう)」
と、駅に着き、乗客の一部が、外に出て行く。
友人A :「あ、席空いたよ。座ろ」
と、促し、3人とも椅子に座る。
座ってしばらくして、右手に違和感が起きる。
不思議に思って、手を見ると……。
吹子 :「!!」
右手に黒い炎が纏わりついている。
ちらちらと透明感のある黒い舌が、その右手を舐めていく。
吹子 :「ひっ!!」
熱さは感じない。……いや、感覚そのものが、ない。
自然にはありえない黒い炎は、熱を感じさせる事もなく、その右手を焼き、
食い尽くしていく……。
吹子 :「いやぁっ!!!」
友人A :「ふうちゃん!?」
友人B :「ふうちゃん大丈夫?」
と、唐突に炎が消える。
焼かれた筈の右手も、元に戻っていた。
吹子 :「え……?」
友人A :「どうしたの? 随分うなされたけど……」
吹子 :「!?」
友人B :「もしかして、寝不足?」
吹子 :「そんな、だって……」
友人A・B :「???」
吹子 :「……なんでもない」
それからは何事もなく駅に着いた。
友人A :「今日ははやく帰って寝た方が良いよ?」
吹子 :「うん……(疲れてるのかな)」
友人B :「じゃ、また明日」
吹子 :「バイバイ」
友人A :「じゃあね」
半ばフラフラと、道を歩いていく吹子。
交差点に差し掛かり、赤信号に気付いて立ち止まる。
と、
吹子 :「!?」
赤信号なのに、脇を摺り抜けて歩いていく気配。
目を凝らすと……
吹子 :「ひっ」
「全ての信号が赤の時は、死者が通る時間」
そんな噂を聞いたのはいつの事だったろうか……。
後頭部がぱっくりと裂けた少女が横断歩道を渡っていく。
吹子 :「いや……」
顔の半分が欠け落ちた男性が道を渡ってくる。
吹子 :「いやあぁっ!!!」
叫ぶ吹子に気付いた死者達が、ゆっくりと振り返る。
失われた右目の空洞から涙のように黄色い液体を流している青年。
ちぎれた左腕を、右手で持っている女性。そして、つぶれた腹から
内臓がはみ出ている老婆……。
そんな死者達が、吹子を見つめ……にやりと笑みを浮かべる。
気がつくと、信号は青になっていて、怪訝そうな視線を送りながら
人々が道を渡っていく。
吹子 :「…………(怯え)」
吹子は逃げるように走っていった。
倒れる少女
---------
ふらふらと、憔悴しきった表情で歩いていた少女が、
不意にバランスを崩したように歩道で倒れた……。
新宿の雑踏が遠巻きになる。助け出す人はいない、それぞれが群集の顔をう
かがっている。
冷たい街……と呼ばれた事もある新宿である。その群集から吹子の元へ駆け
寄る人影が二つ。
竜也 :「おねぇちゃん、大丈夫?」
吹子 :「ん……」
竜也の呼びかけに、彼女は答えない。 珠希はその自分と同じ年頃の少女の額
に手を当て、様々な可能性を考えてみる。
珠希 :「うーん、そう大したことじゃないとは思うんだけど素人
:判断じゃわからないわよねえ。救急車呼んだ方がいいかな」
竜也 :「あ、たま姉ちゃん。ここからならウチまで連れてってお
:医者さん呼んだ方が早いよ」
竜也は少し前にインフルエンザで寝込んだときに、父親代わりの直人が医者
を呼んでくれたときのことを思い出した。
珠希 :「そう言うことなら話は早いわね。じゃあ私が荷物とかは
:持つから、竜也君お願いね」
竜也 :「………」
竜也は、そのままうなずいて彼女を背負う。30センチメートルの背丈の差は、
背におぶっても頭の上に頭が乗っかる。
しかし、足取りはしっかりしていて、ふらつくような事はない。
珠希 :「へえ……結構がんばるじゃない」
竜也 :「早く……いこう」
と、ゆっくりと歩き出す。さすがに普段の歩みと同じスピードを出す事は出
来ない。
珠希 :「よしよし、がんばれ」
珠希は、声をかけるだけである。
通りすがりのカップル
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SE :てってってっ
一人の少年が、白い犬を散歩させている。
少し普通でないのは、少年がまだ小学生らしく、白い犬が少年の身体を優に
しのぐ大きな犬であるという事だった。
SE :てってけてっ
やけにペースの速い散歩である。
かといって犬に振り回されている様子もない。少年と犬の息はぴったり合っ
ている。少年は犬の好きに走らせているし、犬は少年のリードに大人しく従っ
ている。
しかし、この散歩について行く人がいたら、おそらくあまりのペースの速さ
に音を上げているだろう。
SE :てってけてってってっ☆
少年・鞍馬と白犬・ルーシーは、こうして週に一二回は新宿界隈を散歩して
いる。碓氷奏雅の口利きで、ルーシーのお散歩役を鞍馬が引き受けることにな
ったのだった。
所要時間にすれば大したことはないが、ルートは新宿一帯に及ぶ。その日も、
あちこちを走り回った後に彼ら一人と一匹は駅前にさしかかった。
鞍馬 :「……? ルーシー、待って!」
ルーシー :「……ハッ、ハッ、ハッ……」
雑踏が行き交う交差点の真ん中に、人が倒れている。
そのそばにいるのは……。
鞍馬 :「竜也くん?」
鞍馬はそう呼びかけながらルーシーをつれて駆け寄った。
竜也 :「あ……(はあはあ)」
既に吹子が倒れてから1区画程度は歩いている。さすがに、竜也の体力では
限界に近かったが、弱音を吐く事はしない。
珠希 :「えーと、この前会ったわね」
鞍馬 :「鞍馬です。どうしたんですか?」
珠希 :「行き倒れたんで、月影に連れてく所よ」
鞍馬 :「竜也君じゃつらいよね……僕が運びましょう」
ルーシーの散歩紐を竜也に渡し、蜉子を受け取って背負う。
そのままスタスタと歩いて行く。
彼の身体能力は、竜也の比ではない。
珠希 :「さすが……たいした物ねぇ……」
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ってな所まで。
この後、月影に連れて帰ってから、直人の見せて指示を仰ぐつもりです。
ではまた。