[KATARIBE 14050] [WP01] 「個展会場にて」

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Date: Mon, 5 Jul 1999 10:32:02 +0900
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 14050] [WP01] 「個展会場にて」 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199907050132.KAA31496@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 14050

99年07月05日:10時32分00秒
Sub:[WP01]「個展会場にて」:
From:E.R


 こんにちは、E.Rです。

 以前、一行やIRCで流れていた珠樹さんの個展ネタ、只今繋いでおります。
が、やはし足りない部分というのはあるもので。

 というわけで、足りない分、風音側。
 つまり……個展会場に行く動機と、辿りついて珠樹さんに会うまで、の場面です。

(その翌日をたったか書いた理由が、ここらへんにあるわけだな(滝汗)<己)

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個展会場にて・点景〜飴色の未来の断片
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 日光ごと作品の一部になっている気が、風音にはした。

 一枚の硝子を挟むだけで、街中の喧騒がすう、と吸い取られるように消える。
梅雨の時期だというのによく晴れた午後。日光は、けれども、硝子の前の和紙
で一旦遮られ、和らげられている。
 飴色の塊が、その光の中でやはり柔らかな艶を帯びている。

 三ッ木珠樹の個展会場は、練馬の一角にあった。
 住所は聞いていたものの、やはり少し道に迷って辿り着く。日中、少し汗ば
むほどの陽気だったが、会場に入った途端、その汗がすうと引いた。勿論冷房
のせいもあったろうし……また、会場のしんとした空気のせいもあったかもし
れない。

 志郎は、風音の後ろに黙ってついて来ている。

 珠樹の個展には、是非行きたいと思っていた。珠樹の作る不思議なかたち。
それはどこか、未来の破片を思わせた。それでいてそれらは崩れることの無い
まま、静かに存在し続ける。
 初めて、珠樹の作品を見た時から、そんな感覚はあった。めまぐるしく生成
され、砕けてゆく未来が、ふと、止まったような。
 静かな錯覚。
 すう、と一瞬、水面が鏡面になるような。
 木。悠々とした時の中を、人よりもゆるやかに過ぎてゆくもの。その中から
珠樹によって彫り出された作品群は、その周りに彼らの持つ緩やかな時間流を
保ち続けているのかもしれない。
 故に……風音は珠樹の作品に立っているのが好きだった。見る、というより、
見ることによって、それら作品群の時間を共有する感覚。

 とは、いえ。
 志郎を連れてくることについては、多少の不安がなかったとは言えない。が、
一人置いてくると考えると……こちらは多々不安が残るもので。
 騒ぎを起こすな、自分から離れるな、と、家を出る前に志郎に言った。その
言葉の通り、彼は今まで殆ど口も開かず、三歩と風音を離れない。
 やたらに長い髪を濃灰の布で纏めた少女めいた女と、その後ろからしんとし
てついてくる男。
 多少妙な取り合わせに見えるかもしれない……とは、風音の自覚である。
 大概にして、自覚は他覚より控えめなものである。

 若手の中では結構有名な彫刻家であるせいか、個展会場は平日の午後という
のに、案外人が入っていた。さわさわと小さな声、そして忍ばせるような足音。
 音を立てないように、風音もその人々の中に入ってゆく。一つ一つ、作品の
前を歩きながら。

 風音     :「……あ」

 ふと、足を止める。
 一つの作品。流れを連想させるオブジェに、やはり流れのように布が一枚絡
められている。
 その布に、覚えがある。

 風音     :(こんな風に、使って下さったんだ)

 以前、珠樹に渡した布。作品の下にでも敷いてもらえば、と思って織ったの
だが。
 
 風音     :「…………」

 使いかたが、見事である。
 自分が考えていた……予想していた以上に、彫刻と布が調和して見える。
 曲がりなりにも、織り手……創り手としては、それは本当に嬉しいことで。

 風音     :(お兄さん……いないかな)

 嬉しいから、お礼を言いたい。
 きょときょとと周囲を見まわしていると、

 志郎     :「誰を、探している」
 風音     :「……三ッ木の、お兄さん」

 少し、間。そしてすぐに志郎の視線が会場の隅に向かう。
 視線を、追う。と、すぐに珠樹が椅子に座っているのを、風音は認めた。
 
 風音     :「……ありがとう」
 志郎     :「…………」

 返事は、無い。
  風音も返事を待たなかった。

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 てなもんで。
 ここから、奏雅さんと珠樹さんのところに合流です。

 一応…木曜日を推定。(しろーちゃんの状態より(笑))

 奏雅さんと睦美さんのシーンは……流石に書けませんでした(^0^;)
 ので……久志さん宜しく(おいおいおいおい)

 一応、この後の部分も、地の文を粗く入れながらまとめつつあります。
 後程……出来たところまででも流そうかな、とか。

 であ。




    

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