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Date: Fri, 02 Jul 1999 14:49:54 +0900
From: "gallows" <gallows@terra.dti.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 13995] Re: 『里見鏡介のアルバイト：宅配編』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199907020605.PAA24328@smtp.dti.ne.jp>
X-Mail-Count: 13995
どうも、gallowsです。
なんかずっと溜めてしまっていた課題をこなすぞ週間、第二弾。
（第一弾はWPの統和くんの話）
口調修正・加筆等お願いしまーす。＞無道邸のみなさま
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ＥＰ：『里見鏡介のアルバイト：宅配編』
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登場人物
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里見鏡介（さとみ・きょうすけ）：死者救済の死人使い。体が弱い。
遠野勇那（とおの・ゆな）：鏡介に憑いている元気な幽霊少女。
無道千影（むどう・ちかげ）：無道邸の主にしてバンパイアハーフの女子大生。
煌（こう）：無道邸のメイド
煖（なん）：無道邸のメイド
ビィ：無道邸に居着く電波怪獣
死人使いバイトを始める
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里見鏡介 ：「いきなり随分郊外の屋敷に行く羽目になったな」
宅配便のバイトを始めたのが、今日。生活に困っているわけではなかったが、
出来うる限り実家に頼らずに生活して行くべきかと考えて、始めたバイトだっ
た。
この宅配以前にも、コンビニエンスストアや、ファーストフードなどの面接
を受けに行ったのだが、どれも断られた。やはりこの赤っぽく染められた髪が
ネックになっているらしい。このバイトにつけたのも幸運なことだった。
そしてそのバイトの初日、書いてある住所通りの場所に向かうと、そこは市
街地から遠く離れた郊外の屋敷だった。受取人欄を見ると、ブラッドサッカー
とある。外国人の屋敷なのだろうか。
ＳＥ ：ギィィィッ
配達用のバイクから降り、荷物を片手に重く大きな鉄製の門を開け、屋敷の
玄関先まで歩く。扉の脇には古風な呼び鈴が備え付けてあり、屋敷の主のセン
スが伺える。今日は憑いてきていないが、勇那がいたら物珍しさに喜んだかも
しれない。
里見鏡介 ：（チリンチリン）「お届け物でーす」
なかなか反応がない。鏡介は一呼吸於いてさらに呼び鈴を鳴らした。
里見鏡介 ：（チリンチリン）「…どなたかいませんか？」
屋敷からの声 ：「はぁ〜い」
どたどたと中から誰かが駆けてくる音が聞こえる。中から出てきたのはこれ
また古風なメイド衣装に身を包んだ少女。この館の主はいったいどんな懐古趣
味を持っているのだろうか、鏡介はふと自分の育った屋敷を思い出す。
里見鏡介 ：「お届け物です」
煌 ：「はい、ご苦労様（笑）‥え〜と‥（宛名を見る）‥
：ふぅ（溜息）‥サインで良いですか？」
里見鏡介 ：「ええ、構いませんよ」
中身はよくわからないが、そんなに重さはなく、かつ割れ物らしい。自然と
手渡しする扱いも丁寧になる。メイドとおぼしき少女は少しあきれたような表
情でそれを受け取る。
煌 ：「（さらさら）‥ったく、あの爺さんも（ぶつぶつ） は
：い、ご苦労様（にこっ）」
里見鏡介 ：「いえ、それじゃ」
帽子を目深にかぶり、あまり表情も見えない鏡介に向けられた営業スマイル。
それを横目に次の配達場所のことを考えながら、鏡介は前からつんのめるよう
にして、倒れた。
煌 ：「へ？（￣▽￣）」
「宅配便殺人事件、メイドは見ていた」「妖精村殺人事件、腰蓑は見ていた」
煌の頭にワイドショウのテロップのような文字が次々と流れる。そんな最中も、
目の前の配達人は起きあがることもなく無言で伏したままだ。
煌 ：「はわわわわ〜‥なんだなんだ？！（￣▽￣;;;）」
里見鏡介 ：「………」
煌 ：「え〜っと、旦那ぁ〜！（あせあせ）」
目覚めれば邸内
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昔の夢を見ていた。祖父に死者救済のみを絶対なる使命として教えられ、
外の社会から隔絶され様々な知識と技術を詰め込まれたあの屋敷。
その夢から覚めると、あの屋敷とは似て非なる天井が見える。ソファに
寝かせられ、丁寧にタオルケットまでかけられている。
里見鏡介 ：「……ここは、どこだろう？」
煖 ：「気がつきましたか？（にこにこ）」
先程の少女と同じ衣装を纏いながらも、また違った印象の少女。
里見鏡介 ：「…あ、ええと、ここは？」
煖 ：「無道家のお屋敷です。配達に来られて倒れたんですよ」
里見鏡介 ：「なるほど。どうやら迷惑をかけてしまったようだ」
ＳＥ ：がちゃっ
煌 ：「お〜い、死人は生き返った〜？（￣▽￣）」
ビィ ：「あぎゃぎゃぎゃ？」
煖 ：「はい、気付かれましたよ（笑）」
その時、先程玄関先で応対していた方の少女と、以前ベーカリー楠と言うパ
ン屋で知り合った怪獣、ビィが入ってきた。
里見鏡介 ：「あ、ビィ君じゃないか」
ビィ ：「あぎゃ？」
煌 ：「じゃ、ちかちゃん呼んで来るね」
煌が入ってきた時同様元気よく部屋から飛び出す。また、どうやら鏡介はビィ
には覚えてもらえていないらしい。
ビィ ：「あぎゃ……（じーっ）……あぎゃ？」
里見鏡介 ：「それにしても助かったよ」
煖 ：「いえいえ。玄関前で死なれては片づけが大変ですから、
：当然の事ですよ（にこにこ）」
里見鏡介 ：「それはもっともだね」
理路整然と言う煖、普通の者ならここで気を悪くもするのかもしれないが、
鏡介はもっともな言い分だと納得していた。
鮮血の君
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煖 ：「ビィさん、お知り合いなんですの？」
ビィ ：「あぎゃぎゃ（ぶんぶん）」
里見鏡介 ：「一度あっただけだけどね」
ＳＥ ：…………ガチャ
そんな話をしていると、また人が入ってきた、煌と、それを従わせるように
して立つ髪の長い少女。足音もなく入ってくる。
無道千影 ：「もう起きて平気なんですか？」
里見鏡介 ：（ゆらりと立ち上がる）「ええ、色々お世話になって
：しまったようで…」（ペコリ）
その少女を見て鏡介は瞬間、言葉を失う。鏡介は一度彼女を見たことがあっ
たのだ、血の雨を降らせていた彼女を。それ以来鏡介は彼女に興味を持ってお
り、そしてこの場で再び相見えると言うことになったわけだ。
しばし、呆然と彼女の顔を見つめる鏡介。
煖 ：「お知り合いですか？」
無道千影 ：「…いえ、どこかでお会いしました？」
里見鏡介 ：「い、いやなんでもないんだ。お世話になってしまったね。
：僕は里見鏡介という。見ての通りの配達員だ（苦笑）」
無道千影 ：「この屋敷の主で、無道千影といいます、よろしく」
身に付いてるような付いてないようなお嬢様としての物腰、何れにしろ育ち
は良さそうな感じだな、と鏡介は考える。
煌 ：「ほら、ビィ。邪魔邪魔（よいしょ）」
ビィ ：「あぎゃ……（ごろん）」
そして、背後では煌がビィを転がし始めていた。
挙げ句、食事まで食べていく配達員
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倒れた原因はなんとなくわかっている。このところの食生活の乱れと、睡眠
不足は確かに酷いモノがあった。これは帰ったら相当勇那にどやされそうだ。
とりあえずの補給をするためにいつも持ち歩いている栄養剤を、何錠かポケッ
トから出す。
里見鏡介 ：「すいません、水をもらえませんか？」
無道千影 ：「煖、お水を差しあげて」
煖 ：「はい、ただいま（ガチャッ）」
煖 ：「失礼します‥‥水をお持ちいたしました」
里見鏡介 ：「ありがとう」
錠剤を一気に胃に流し込む、鏡介。
煖 ：「お薬だけでは、おからだに良くないのでは？」
無道千影 ：「うん、わたしもそう思う」
それを見た煖と千影が忠言する。
里見鏡介 ：「でもこの数週間、薬以外のものを摂取していないが、そ
：れでもちゃんと今生きているしな…」
…一瞬静まる場、この男、どうも食生活に無頓着なところがあるらしい。
無道千影 ：「…煖、食事の用意をお願い」
煖 ：「はい、畏まりました」
呆れたように指示を出す千影に、鏡介は少し恐縮する。バイトの途中で倒れ、
その挙げ句に食事まで御馳走になっては申し訳ないと思ったのだろう。
里見鏡介 ：「気持ちはありがたいけどそこまでして貰っちゃ…」
無道千影 ：「遠慮しないで今日はうちで食事していってください」
そう言って微かに微笑む千影に、結局御馳走になって帰っていった鏡介であっ
た。キミはバイトする気が本当にあるのかい？
後日談
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場所はうって変わって鏡介の住む風見アパート、非常に老朽化の進んれおり、
今にも崩れ落ちそうなおんぼろっぷりだ。仕送りの量からいってもっと綺麗な
マンションにでも住めそうなものなのだが、鏡介はあえて此処に居着いている。
遠野勇那 ：「で、そんなこんなでバイトもクビになったわけ？」
里見鏡介 ：「うん、そういうことになるかな」
当然の結果である。
遠野勇那 ：「だーからいっつもちゃんと食べろって言ってるのよー！」
里見鏡介 ：「そうだね」
と、いいつつコカ・コーラをごくごく飲んで昼飯と称している。
遠野勇那 ：「…（ふるふる）」
幽霊である身故にひっぱたくことも出来ず、ただ怒りに震える勇那であった。
解説
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鏡介が宅配便のアルバイトで最初に無道邸を訪れ、無道邸の面々と遭遇する
話。