[KATARIBE 13993] [WP01P]:EP: 水の眷族

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Date: Fri, 2 Jul 1999 14:15:35 +0900
From: ソード  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 13993] [WP01P]:EP: 水の眷族 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199907020515.OAA06533@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 13993

99年07月02日:14時15分26秒
Sub:[WP01P]:EP:水の眷族:
From:ソード


こんにちは、ソードです。

IRCのログから、EPにしてみました。

ログの方は家に帰ってから流します。

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エピソード  『水の眷族』
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登場人物
葛城水稚(かつらぎ・みずち)
    新宿の情報屋。外見は20歳前後だが、実年齢は50を超える謎の女
   性。
月島直人(つきしま・なおと)
    新宿歌舞伎町にある喫茶店・月影のマスター。物体操者。

蛟、来訪
--------
 SE     :カラカラン
 直人     :「いらっしゃいませ」

 ドアベルの音に、作業の手を止めて応対する。現在、ウェイトレスの更雲優
は休憩で奥に引っ込んでいる。

 水稚     :「直ちゃんこんにちわ(にっこり)」

 なれなれしく話し掛けてきた客は、年の頃20代前半の美人。直人より年下
に見える。
 直人の始めてみる顔で、当然、”直ちゃん”などと呼ばれる間柄ではない。

 直人     :「え……あ、こんにちは。どこかでお会いしていましたっ
        :け?」
 水稚     :「あら、そういえば初めてでしたっけ(にこにこ)」
 直人     :「すみません、こういう仕事柄、顔は覚えるようにしてい
        :るんですが……」
 水稚     :「ごめんなさいね、どうも厚かましくって(くすっ)なんか、
        :初めてって感じがしないもので(くすくす)」
 直人     :「いえ、かまいませんよ(にこ)」

 すぐに、いつもの調子を取り戻して営業スマイルを取り戻す。
 水稚にしては、以前立ち寄ったときの、小さかった直人の姿の方が印象が強
く、今のかしこまった喫茶店のマスターを見ていると、おかしくて仕方が無い。

 水稚     :「コーヒー下さるかしら?」
 直人     :「はい。何になさいますか?」

 普通、「コーヒー」と注文されて、「何にするか?」とは聞かない。そこが、
月影の売りであり、直人の自慢する所であった。

 直人     :「アメリカン、ブレンド以外には、地名で大体そろえてあ
        :りますけど……」
 水稚     :「将人さんの得意だったものを(にこっ)」
 直人     :「オヤジを知ってるんですか……。解りました」

 わずかに、直人のと記憶を刺激し、覚醒の瞬間が蘇る。
 しかし、今更動揺するような事件ではない。
 もう、完全に自分の中で消化した記憶……思いでである。

 直人     :「(たしか……モカにブルマンを……)」(豆を取り分けてい
        :る)

 思い出しながら分量の調節をする。直人特性のブレンドとは違う、苦みの強
めの味。
 再現させようとした事もあったが、それ以後作っていない。

 直人     :「少し、時間がかかりますから、お待ちください」(手引き
        :のミルでごりごり)

 豆の選別。煎り方、砕き方。そして入れるときの温度まで、コーヒーの味に
影響する。

 直人     :「(一定の回転……早すぎず、遅すぎない……)」
 水稚     :(にこにこにこ)

 にこやかな笑みを浮かべて、静かに待つ水稚。彼女の中の、幼い時代の直人
の姿が重なる。
 しかし、その場に彼女はいなかった。それより前に、”死んで”しまったか
ら。
 この場所に、あしげく通えない理由があったから……。

 直人     :(サイフォンを用意)「もうすぐ出来ます。……オヤジには、
        :全部教わる前に継いでしまったので……」(粉を入れ、サイ
        :フォンに火をいれる)

 ガラス製のサイフォン。以前と同じ物を、新宿中探し回って買ってきた。一
度、水が上に上がり、火を止めると色が着いて下に降りてくる。
 直人の好きな情景の一つ。

 水稚     :「ふ〜〜ん……」
 直人     :「はい、できました。オヤジの味になってるかどうかはわ
        :かりませんが……」
 水稚     :「じゃ、頂きます……うん、良い香りね(にこっ)……(ズズ)
        :…(こくん)」
 水稚     :「……………」
 直人     :「(じー)どう……ですか?」

 固唾を飲んで……というのが正解。
 父親の背中を追いかけている彼にとって、父の味を知っている人間の評価は、
一つの試験のようなものである。
 自分を庇って死んだときから、追い越せない背中を追い続ける直人。
 目の前の背中は、追えば追うほど遠ざかっていくように見えた。

 水稚     :「直ちゃんも立派になったわね(にっこり)」
 直人     :「あ……ありがとうございます(照れ)」

 合格……と、かってに判断する。彼女の笑みを、正面から見る事が出来ずに、
目を伏せる。

 水稚     :(にこにこ)
 直人     :「あの……オヤジとどういう関係だったんですか?見たと
        :ころ、僕と変わらないくらいだと思うんですが……」
 水稚     :「さぁ…どういう関係なのかしらね(にこにこ)」
 直人     :「……」
 水稚     :「大丈夫よ、ただの友達だから(にこにこ)」
 直人     :「いやまあ、何か関係があるような年じゃないのは分かり
        :ますけど……」
 水稚     :「じゃあ、ご馳走様。直ちゃんも、大変だろうけど頑張っ
        :てね(にこっ)」
 直人     :「あ、ありがとうございました」

 そのまま、コーヒーを味わってから立ち上がる。
 この場所に、余り長居は出来ない。

 見守る人二人が集う、この場所に、いつか、自分が戻れる日は来るのだろう
か……。

 ふ……と、脳裏をかすめた想いは、ドアベルの音にかき消された。

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 はりさん、修正願います。

 水稚さんはつかめていないんで、がりがり直してやってください。

 では……また。





    

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