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Date: Mon, 21 Jun 1999 16:52:29 +0900
From: ごんべ <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 13723] [WP01]EP: 『雨宿りの友』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199906210752.QAA13317@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 13723
99年06月21日:16時52分26秒
Sub:[WP01]EP:『雨宿りの友』:
From:ごんべ
どうも、ごんべです。
鞍馬の、日常EPを書いてみました。放浪中の一コマ、です。
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[WP01]EP:『雨宿りの友』
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本文
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降りしきる雨。
SE :ザアアアアアアアアアアアアアアアアアア
緑の広がる田園風景。その真ん中にぽつんとたたずむ一本杉の足元。
SE :ザアアアアアアアアアアアアアアアアアア
鞍馬は、急な驟雨に降り込められて雨宿りをしていた。
いつもは雨の中でも気にせず走るところだが、にわか雨ほど、逆に濡れるの
が億劫になるものである。そう思って始めた雨宿り、しかし雨は一向に止む気
配はない。しかし今更雨の中を出ていく気にはならない。
鞍馬 :「…………にゃあ…………」
水煙にしっとりと濡れそぼってうずくまっている姿は、名実ともにまるで猫
である(笑)。
鞍馬 :「……くしゃんっ …………(ごそごそ)」
脇に置いたディパックから、乾いたタオルを取り出し、懐に突っ込む。そう
しておいてから、鞍馬は両膝を抱えて膝頭に頬を挟んだ。
身体の暖かみが戻ってくる。心細さも紛れる。
SE :バシャバシャ
:カタカタカタカタ
鞍馬 :「…………?」
鞍馬はふと顔を上げた。
一つの小さな影が灰色の空を背に駆けてくる。人だ。胸元にタオルを入れて
いるのは、恥ずかしいので取り出す。
近付いて来たのを見ると、それは鞍馬と同じくらいの年頃の少年だった。
少年 :「はあ、はあ……くそっ…………あ」
木の下に飛び込んでから先客がいるのに気付いたが、戻るわけにもいかない。
全身濡れみずくの少年は、鞍馬の座る位置から微妙な角度を取って、一本杉の
大きな根っこの一つに座り込んだ。
鞍馬はちらと少年を見やった。ランドセルを背負っているのを見ると、おそ
らく小学校の帰りなのだろう。もう少し様子をうかがおうとして……鞍馬と少
年の目が正面から合ってしまった。
鞍馬 :「………………」(視線を逸らして前を向く)
少年 :「………………」(視線を逸らして前を向く)
並んで座るわけにもいかない。幹の反対側に座るのも白々しい。
……どうにも厄介な角度である(笑)。
少年 :「……………………なあ」
口を開いたのは、ランドセルの少年の方であった。
鞍馬 :「…………え?」
少年 :「お前…………何年生だ?」
鞍馬 :「…………5年生だよ?」
少年 :「うそつけっ」
鞍馬 :「……ほんとだよっ」
鞍馬は、一応、小学5年生である。
思わずムキになりかけたが、返ってきた反応は鞍馬の感想とは関係なかった。
少年 :「お前なんか学年で見たことないぞ!」
鞍馬 :「……当然だよ、学校が違うんだから」
少年 :「……へえ?!」
少年は身をひねって鞍馬の方をのぞき込んできた。興味津々のその顔は、
いかにもな悪ガキではある。女の子のような鞍馬とは対照的だ。
少年 :「じゃあ、どこの学校なんだ?」
鞍馬 :「高井戸」
少年 :「たかいど?」
鞍馬 :「……東京だよ」
少年 :「東京?!」
少年は素っ頓狂な声を上げた。
少年 :「なんで東京のヤツがこんな処にいるんだよ!」
鞍馬 :「……いいじゃないか」
少年 :「サボりだな! わぁるいヤツぅ!」
:(急に口調が変わって調子づく)
鞍馬 :(むかっ)「旅行なんだよっ」
少年 :「何で学校サボって旅行なんか来れるんだよ!」
鞍馬 :「……」
少年 :「ひぃっでえ、言ってやろぉ」(既に嵩にかかっている)
鞍馬 :(遮るように)「いいじゃないかっ!」
SE :バンッ
少年のなじる声にたまりかねて、鞍馬は幹を叩いた。
……高い高い一本杉が一瞬震えて。
SE :…………ザンッ!
一本杉の梢の一つ一つが蓄えていた無数のしずくが、一斉に落ちてきて二人
を叩き伏せた。……二人ともびしょぬれである。
しばし無言でしずくを拭いていた二人は、やがてすごすごと、大人しく元の
通りに座った。
少年 :「………………悪かったよ」
鞍馬 :「……いいよ」
少年 :「なあ……東京って、どんなところなんだ?」
鞍馬 :「狭いところだよ。
:邪魔なビルとか車とかが、いっぱいでさ。
:……ここら辺はいいよね。広くて気持ちよくて」
少年 :「でも、何にもないじゃんか!
:……東京っていいよなぁ、いろんな店とかあって、毎日
:楽しいんだろ?」
ふと、鞍馬はちょっと真剣な顔になる。
鞍馬 :「……替わってみる?」
少年 :「え…………」(急に深刻になる)
鞍馬 :「…………」
少年 :「…………」
鞍馬 :「…………」
少年 :「…………やっぱり、いいや」
鞍馬 :「………………(くす)」
少年 :「…………へへっ」
鞍馬 :「……あ、やんだ」
少年 :「ほんとだ」
雨雲が流れていく。灰色の空。しかし風が雲を運び、雨を運び去っていく。
しばらくは、雨は降らないだろう。
鞍馬 :「……じゃあね」
少年 :「……行っちゃうのか?」
鞍馬 :「うん、……別に、通りがかっただけだから」
少年 :「そう……っかぁ」
ちょっと、名残惜しそうな少年。
少年 :「また、来るか?」
鞍馬 :「……わからないけど……こっちに来るときは、寄るよ」
少年 :「そっか」
にかっと笑う。いかにもな悪ガキの、だけど気分のいい笑顔。
少年 :「元気でな」
鞍馬 :「元気でね」
別れ際に手を振り合い、お互いに、特別な出会いを胸にしまう。それぞれの
家路をたどる。
そして、鞍馬は再び走り出した。
(終)
登場人物
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岡崎鞍馬 :無敵の身体を持つ少年。小学生だが、放浪癖があり、不登校。
解説
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岡崎鞍馬の放浪中の日常の一コマを描写した、外伝的なエピソードです。
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以上です。
しかしふと思ったのが……SPEEDのヒロコ(島袋寛子)って、デビュー当時
が鞍馬と同じくらいの年頃、なんですねぇ。しみじみ。
それでは。
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ごんべ
gombe@osk3.3web.ne.jp