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Date: Thu, 17 Jun 1999 19:06:30 +0900
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 13632] [HA06][novel] 「がくあじさい」
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199906171006.TAA32664@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 13632
99年06月17日:19時06分28秒
Sub:[HA06][novel]「がくあじさい」:
From:E.R
こんにちは、E.Rです。
前回のゆずの紫陽花話につづいて、今度は花澄ですね。
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「がくあじさい」
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一年中で一番長い筈の日が、流石に翳りはじめる時刻。
街路樹とくすんだ色合いの壁との間に、がくあじさいを見つけた。
白い、あじさい。
街路樹の間からちらつく夕光の色のせいか、それとも元々そういう色なのか、
あじさいの葉の色は、対照的に黒い。
黒い、もさりと塊になった葉のあちこちに、すこしいびつな円周を縁取る
白い、花。
曼荼羅。
ふと、そんな言葉を連想する。
何故だろう、と問い返してみて……
密教、という言葉の持つ、塗りこめられたような暗さ。その中で目を射るように
鮮やかな印象。
曼荼羅、という言葉の持つ、その印象が、この白いがくあじさいと似ているのだ……と。
そう考えれば、いびつな円が、確かに曼荼羅の絵に似ているような気もしてくる。
黒と白の上で、だんだんと赤みの強くなる木漏れ日が、ちらちらと揺れる。
金箔を散らすように……?
ふと。
視線を感じて振り返る。
若い、男性。背が高い……多分、会ったことの無い。
多分、私がしげしげと眺めていたせいで、その人もつられたのだろうな、と、理解。
目が合う。
相手が苦笑する。こちらも苦笑する。
そのまま、一つ会釈をして、向こうは立ち去ってゆく。
一度、背を伸ばして、もう一度花を見る。
闇から浮き出る、曼荼羅の花。
そう、一人合点して、歩き出す。
日はだんだん傾いてゆく。
そんな時間も、悪くない。
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解説
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平塚花澄の、一人称話です。
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とまあ、ふと思い出しまして。
この花を見たのは、国土地理院、だったな。
去年のこと、だったかと。
偶然会った男性、というのに、滝郁代氏指名(爆)。
……いあ、まずければ誰でもいいんですけど(苦笑)
ではでは。