[KATARIBE 13631] [WP01]EP: 『鼓動』

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Date: Thu, 17 Jun 1999 18:49:25 +0900
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 13631] [WP01]EP: 『鼓動』 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199906170949.SAA29435@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 13631

99年06月17日:18時49分23秒
Sub:[WP01]EP:『鼓動』:
From:久志
 久志です(^^;)
一日一EPまだ終わってないぜー(奇跡的)

 というわけで、奏雅の対であり狩人のまつろわくん(なまえぼしゅー中)
のミニストーリーです(^^;)
 とりあえず奏雅の覚醒後の話ということで…
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『鼓動』
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 何時、己は意志を持ったのだろう。

 暖かい。
 暗い。
 柔らかい。

 己は未熟な『もの』であり、非常に不安定な存在だった。
 未だ形ならぬ己はただ与えられた世界の中を漂う。

 世界は暖かく、暗く、満たされていた。

 どれだけの間……暖かな世界に満たされているのだろう。
 時を知るすべはなく、どれだけの時が過ぎているかもわからない。

 どくん…

 己の内より定期的に響く音。時折、響く音に己以外の音を聞く。

 とくん……とくん……とくん

 母の鼓動。それはいつも不安定な我が身におびえる己を落ち着かせた。

 たゆたう
 まどろむ

 穏やかな世界に溺れている。

”…ムツミ”

 くぐもった声が聞こえる。

”ムツミ、コンナトコロデネテタラダメヨ”
”アレ…ソウガ?”
”モウ…カゼデモヒイタラドウスルキ?コドモニヨクナイデショ”
”ゴメンゴメン、チョットボーットシテタラ、ネチャッテタミタイ”

 聞きなれた母の声と…もう一人…己に近い何かを感じる者。

 どくん…

 鼓動。
 彼女は己にとっても母にとっても近しい者。

”ア、ネェソウガ、イマコノコウゴイタヨ”
”フフ、ゲンキナコネ…オトコノコカナ?”

 触れる手。
 目に見えなくとも、声は届かなくとも、母の体を伝わって感じる彼女の手の感触。
 己は言葉を解し、思考する。
 遥か以前に、己自身の内側に刷り込まれた感覚。

 どくん

 この手の主を殺さねばならない。

 どくん

 何故、殺さねばならない?

”ア、ウゴイタ”
”ウン、ゲンキナコダトイイナ…”

 どくん
       どくん
             どくん
                   どくん

 鼓動。
 己の想いに反する得体の知れぬ念。

”コノコ………ブジニウマレルトイイネ”

”ナニ?マジメナカオシチャッテ”
”ウウン、ナンデモナイヨ…ホラ、ネルナラアッタカクシテナサイ”
”ハァイ”

 離れた手の感触、何度となく聞いた声……
 あの手の主。

 失いたくない。
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いじょ(^^;)





    

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