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Date: Tue, 15 Jun 1999 23:13:11 +0900
From: 久志 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 13562] [WP01]EP: 『迷犬探し』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199906151413.XAA06787@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 13562
99年06月15日:23時13分05秒
Sub:[WP01]EP:『迷犬探し』:
From:久志
久志です。
先日流れた犬探しチャットログ、EPにしました〜
チェックよろしく〜おのもっち(^^)
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EP『迷犬探し』
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登場人物
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浅生睦美(あそう・むつみ):一般人、終末の住人碓氷奏雅の親友
藤田一弥(ふじた・かずや):終末の住人、藤田探偵事務所所長
本編
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新宿歌舞伎町、ネオンのきらめく通りから少し離れ、住宅街の近くにあたる
通りにその雑居ビルはあった。
睦美 :「……ここでいいのよね」
息を溜めて、睦美は藤田探偵事務所と書かれたドアを開けた。
部屋の中は狭かった、というよりあたり構わず書類やらファイルやらが雑多
に積まれ、奥まったところに小さなデスクがあり、椅子に座り両足を机にのせ
たという姿勢の男が見ている。
男と目が合う、お世辞にも優しいとはいえない鋭い目つき、オールバックに
まとめた髪に黒いジャケット姿。探偵というよりヤクザと言った方が近いかも
しれない。
一瞬、空気に飲まれていた睦美は気を取り直して、口を開いた。
睦美 :「……あの、すいません……依頼したいんですが」
一弥 :「依頼内容は?」
足を下ろして立ち上がり、手で脇にあるソファをすすめる。吸い寄せられる
ようにソファに座り、すがるように顔をあげた。
睦美 :「はい……あの、うちで飼ってたワンちゃんが……もう五
:日も帰ってきてないんです…」
良いところのお嬢さん、それもぽっとでの成り上がりでない資産家の生まれ
だろう。一弥のひととおりの観察から導き出した答えだ。
着ている服は少々地味ながら老舗の一点もの、立ち居振舞いのあいまあいま
には幼い頃に学んだと思われる作法…時々崩れているところからすると自然と
身についているものだろう。
一弥 :「ふむ、犬ですか。写真か何かお持ちですか?」
睦美 :「…はい、この子です」
そっとバックから一枚の写真を取り出す、レトリバーか何かの雑種と思われ
る長毛犬、一緒に写っている睦美と比較するとまるで狼か熊のような大型犬だ。
写真を受け取り子細に観察しながら声だけをだす。
一弥 :「……名前は?」
睦美 :「るーしーちゃんっていうんです、メスの三歳で…こない
:だお散歩に連れていったとき、うっかり紐を離しちゃって
:逃げちゃったんですっ」
黒表紙の手帳に日付を書き、話のメモを取る。
一弥 :「ルーシー、三歳、メス、と」
睦美 :「お願いです、るーしーちゃんを探して下さい」
無言でうなずき、ごっちゃになった本棚から地図を取り出す。
一弥 :「散歩のコースを教えていただけますが?」
睦美 :「はい、自宅から…ここの喫茶店月影の前を通って、公園
:までがいつもの散歩道なんです」
指差したルートに線を引く。
一弥 :「このルートですね?」
睦美 :「はい、月影にくるちょっと前あたりでうっかり…」
一弥 :「分かりました。この依頼受けましょう」
睦美 :「ほんとですか!ありがとうございますっ」
ぱっと笑顔を浮かべる睦美を見て、引き出しのなかからなんとか契約書の書
類を引っ張り出す。
一弥 :「分かりました。それで報酬のことなのですが……」
睦美 :「お礼はちゃんとさせてもらいます」
一弥 :「基本捜査期間は三日、報酬は手付けで一万、成功報酬が
:2万、これが契約書になります」
睦美 :「はい、わかりましたここに判子をおせばいいんですね」
一弥 :「はい」
書類に判を押し、じっと顔を見る。
睦美 :「るーしーちゃん…お願いしますね」
一弥 :「わかりました、おまかせください」
ぺこり、と頭を下げて彼女は事務所を後にした。
指先で書類をつまみ、深呼吸する。
仕事だ。
解説
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行方不明の愛犬探しを藤田一弥さんに依頼する睦美のお話です。
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