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Date: Tue, 15 Jun 1999 02:47:30 +0900 (JST)
From: poetlabo@cap.bekkoame.ne.jp (T. Nagare)
Subject: [KATARIBE 13524] [HA06][EP][J] 九尾の狐
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199906141747.CAA11457@soda2.bekkoame.ne.jp>
X-Mail-Count: 13524
お久しぶり、流です。
寝る前にとメル箱開けたら、開けてびっくり玉手箱!
語り部きってのギャグメイカー、かわる君までが復帰しとるではないか。
しかもさっそくねーさんからは
> 書くのだ(笑)
と、愛ある突っ込みが…
(ここで自分のことかと思ってどきっとしたのは、全国に3人以上はある… と信じ
たい)
んでまあ、書きかけて放り出したEPの残骸でございます。
きっかけは、かのベーカリー騒動にて『あのとき店外に溢れ出たパンの山はどこに行
ったのだ?』という疑問が残ったのと、IRCのほうでそういうキャラの話をしたのが
元になっとります。
ちゃんと繋げようと思ったのに、どうしてもJだな、こりゃ。そのときのログもほと
んど読み返さず、キャラシートさえないまま書いてしまったので、Jにしても修正が
要りそうです。
実はこいつら、名前もまともについてません。万が一『欲しい!』という方があった
ら、名付け親になっていただくと有難いのですが。
EP(J): 九尾の狐
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第1場 狐の巣にて
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玉藻(仮) :ひゃあ、よく寝た。者ども、出てまいれ!(ぽむぽむ)
…静寂の時が流れた…
玉藻(仮) :者ども。出てまいれ! (ぽむぽむ)
…静寂の時が流れた…
玉藻(仮) :これ。出て… をを、そうじゃった。皆、儂より早くは起
:きてこぬようにしたのであったな。よっこらしょ。
:(おもむろに起き上がる)
玉藻(仮) :(傍白)まあ、いつもいつも十年も百年も眠るわけではな
:いから、もちっと考えたほうがよいかのう。しかし、寝す
:ごして下人どもを干からびさせると、後の掃除がおおごと
:だしのう。…
-- 下人どもが干からびるまで寝るのも辛そうだが… --
玉藻(仮) :(部屋の中央に進み出て)玉藻が許の下人ども、主のため
:に目覚め働け!(縛を解く)
下女 :(ぴょんと起き上がる)はい、ご用でございますか?
玉藻(仮) :うむ、腹が減った。飯炊け。
下女 :はい、ただいま。
玉藻(仮) :えい。(はっとして)暫く!
下女 :何でございましょう?
玉藻(仮) :…働く前に、服を着ておけ。
下女 :ええーっ、邪魔なのにい! どうせ誰も入ってきやしないし、
:狐に服なんか要らないでしょ?
玉藻(仮) :人を化かすには、常日頃からの心がけがなくてはの。第一、
:狐が料理なんぞするまい?
下女 :ええ、ええ、猫舌ですからねえ、おばば様も…
室内の気温が5度ほど低下した。
玉藻(仮) :(にっこり)何と申したかえ?
下女 :え? いえ、ただいま。何か、温かいものをと。
(傍白)うう、笑顔で怒らないでええ… だいたい、1,000
年前の時点で1,000歳超えてたくせに…
玉藻(仮) :いや、今日はいささか蒸すようじゃ。
:(傍白)そういえば此奴、儂の年を知っておったか。まだ
:生まれて200年にしかならぬのに、口答えするとは生意気
:千万な…
下女 :(にやり)では、狸でも召しますか?
玉藻(仮) :(にやり)うむ、狸でも食らおうか。
厨房に煙が立ち込める。包丁が走り、物音がして…
下女 :できましたぞえ。
玉藻(仮) :ひひひひ。いで食らおう。
二人が食べているのは… 冷やしたぬき。
下女 :玉藻様、これもそろそろ蓄えがございません。
玉藻(仮) :ふむ。托鉢に参るとするかのう。
下女 :では、参りますか?
玉藻(仮) :まずは着替えるか。
下女 :やっぱり、服着るんですかあ?
玉藻(仮) :ええ加減にせい。
:(立ち上がろうとして尻尾を踏んづける)ぎゃああ!
下女 :あ、またやってる。玉藻様、足元には気をつけませんと。
玉藻(仮) :(痛)わ、わかっておるわ。
:おのれ、呪わしきは人間どもめ!
下女 :(傍白)この調子で八つ当たりしてストレス解消してきた
:んだよな、昔から…
玉藻(仮) :(服を選ぼうとして歩き回る)ふむ、本日は何を着てゆこ
:うかのう…
下女 :(傍白)たく、いい年こいて。服ぐらいさっさと選べっつ
:ーのよ。
玉藻(仮) :(引きずっていた九尾で鉢植えを倒してしまう)
鉢植え :がこん!
玉藻(仮) :ひいい、丹精した鉢植えがああ!
下女 :(傍白)あーあ、また始まった…
玉藻(仮) :(狼狽してさっと振り向いた… ついでに、そこにあった
:置物を倒してしまう)
置物 :ぱりん!
玉藻(仮) :ぎゃああ、家宝の津屋崎人形がああ! おのれおのれ、人間
:どもめ人間どもめ人間どもめええ!(地団太を踏む)
下女 :(傍白)あらら。壊す前に私にくれればいいのに…
玉藻(仮) :(残骸を抱きしめて)くく、あれほど可愛がっておったも
:のを… これに代わるものなどあるものか…
下女 :ふう。玉藻様、最近はやりの『ふいぎや』人形とやらをお
:験しになれば?
玉藻(仮) :『吹戯屋』? 何奴ぢゃ、それは?
下女 :生けるがごとく歩める人形ですことよ。
-- …何かの間違いだと思う。 --
玉藻(仮) :人の形をして動くものなら、珍しくもないわ。愚かにもあ
:の西行まで手を出して、結局作り損ねておったがのう。
下女 :玉藻様もお験し遊ばされまして?
玉藻(仮) :ふん、生身の人間どもを騙くらかすほうがずっと趣がある
:わい。
-- だから、違うって! --
玉藻(仮) :これ、作者。たかが作者のくせに、出しゃばるでない!
:(正拳突きっ)
作者 :ぎゃああ…(昇天)
下女 :はて、玉藻様。人間どもがお好きなので?
玉藻(仮) :馬鹿もの。たれか左様なことを申した? あれはよい金蔓と
:いうまでじゃ。
下女 :でも、人間どもを滅ぼしてしまえば、もう津屋崎人形も手
:に入りませんことよ。
玉藻(仮) :ふん、奴隷どものみ生かしておいて作らせればよいではな
:いか。あれたちには死あるのみっっ!
下女 :(傍白)まあ、気持ちは判らなくもないが。誰がその奴隷
:の世話をするんだって?
玉藻(仮) :という次第にて、出立するぞ。まづは手近の街を滅ぼして、
:冷やしたぬきの在庫を手に入れるのぢゃ。
下女 :御意。
玉藻(仮) :えい。(と玄関まで出ていって、引き返す)
: …着替えがまだじゃった。
下女 :あのー、服を召しませんとなりませんかー?
玉藻(仮) :何度言わすかー!
第二場 ベーカリー前
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かくて市井に出てきた尼僧が二匹。
下女 :玉藻様、はかどりませんわねえ。
玉藻(仮) :むむむ、人間どもめ馬鹿にしくさって。人が下手に出てお
:れば…
下女 :私たち、人ではございませんことよ。
玉藻(仮) :うむ、狐が下手に出ておれば… って、かようなことを申
:す人は居らぬではないか。その方、化け狐の心得が足りぬぞ。
下女 :心得ましてございます。
玉藻(仮) :(傍白)ち、いちいち口答えしおって… 人が親切に教え
:てやっとるのに。
下女 :ところで。この街は、滅ぼすはずでは?
玉藻(仮) :お布施が集まってからぢゃ。
下女 :(傍白)ったく、このくそばばあ。肝心なとこをケチりや
:がって…
その頃、店内では。
観楠 :食パン・ぶれえどオオ!
店外から見ると。
ベーカリーの扉:ぐももも、むりむりむりむり!
下女 :(ベーカリーを指さして)あの扉、何か変ではございませ
:んこと?
玉藻(仮) :うむ、なにか中で… 待て、あの女は何者?
竜胆 :(扉に近づく)
下女 :あの扉に近づいている娘でございますか? 見境なく人間を
:お召しになるのはいかがなものかと…
玉藻(仮) :いや、あれは人間の娘ではないかもしれぬ。隠れよ。
:(姿を隠す)
下女 :んな、大げさな。(といいつつも姿を隠す)
竜胆 :(扉を開ける)
ベーカリーの扉:ぱん!
パンの山 :ずどどどどどどどどどどどどどど!
:(ベーカリーから洪水のよーに溢れ出す)
竜胆 :きゃああ!(パンの波状攻撃の前になす術なし)
:何だっつーのよ、一体?
玉藻 & 下女 :をを、これは!(喜)
:何と美味そうな!(見境なく拾い集める)
下女 :玉藻様、これで当分は持ちますぞえ。
玉藻(仮) :ううむ、かようなパン屋があったとは。また来よう。
下女 :玉藻様、パンがお好きですからねえ。
:(傍白)年のくせにハイカラぶるんだから、こいつ…
玉藻(仮) :ほほほ、ぬしとて変わらぬではないか。
:(傍白)こやつも純日本産のくせに、どこで間違うたか…
下女 :玉藻様、この街を滅ぼすと、『また来る』のは無意味です
:けど。
玉藻(仮) :パンが食えなくなると困るから、この街はこのまま取って
:おこう。
下女 :(傍白)すぐ気が変わるんだから… ま、いっか。
:では、集めたものを取りこみましょうかね。
玉藻(仮) :うむ、おまえは先に帰れ。儂がここから転送するから、向
:こうで受け取るのじゃぞ。
下女 :かしこまりました。(しゅたっ)
かくて店長は、それとは知らずに吹利の平和を守ったのであった。
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