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Date: Wed, 26 May 1999 21:48:07 +0900
From: 久志 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 13059] [HA06]EP: 『梅酒』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199905261248.VAA07627@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 13059
99年05月26日:21時48分03秒
Sub:[HA06]EP:『梅酒』:
From:久志
ども、久志です(^^)
葵さんに触発されてめーーちゃ久しぶりにEPかきました(笑)
斎藤瑞希:元気で酒好きなお姉さん。旧姓・富良名瑞希、フラナの姉。
『梅酒』
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母 :「瑞希、コーヒー飲むけどいる?」
瑞希:「ん、ちょーだい」
富良名家のリビング。瑞希は休日に実家に遊びにきていた。別に何かの用事
があったわけではないが、たまには顔を出せと何度となく言われてはいたので、
なんとなく顔を出してみただけなのだが。
瑞希:「ねぇ、なんか無い?」
答えを待たず、電子レンジの隣にあるかごをがさごそと漁る。実家にいた頃
から、このかごの中にお茶うけのおやつや菓子パンがいれてある。
瑞希:「プリングルス食べていい?」
母 :「裕也の分も残しておくのよ」
瑞希:「え、おかーさん、裕也は一人暮らしはじめたじゃない?」
母 :「あらそうね、忘れてたわ」
瑞希:「まだボケないでよぉ〜」
弟の裕也は大学に入ってから、アパートで一人暮らしをはじめていた。チビ
のがきんちょだど思っていたが、それでも18歳。家を出ていっちょ前に自分
で生活をはじめると言い出したのだ。
瑞希:「それにしても、おかーさんよく許したよね〜裕也の一人暮らし」
自分が一人暮らししたいと言い出した時には、頭に角を立てんばかりに反対
された。よくも悪くも心配性の母だ。
母 :「何言ってるの、女の子ならともかく、男の子なら心配しなくてすむ
:でしょう」
瑞希:「ふぅん」
母 :「それにしても…裕也も大学にはいってから手がかからなくなったわね」
こぽこぽと二つのカップにお湯を注ぐ。インスタントコーヒーの香りがする。
瑞希:「あいつもそうは見えないけど18だもんね」
はむっ、プリングルスを二枚口にほうり込み、湯気の立つカップを両手で持
って、コーヒーをちびちび飲む。一口飲んだ母があきらめたように口を開いた。
母 :「ほんっと…男の子ってつまらないわねぇ、一生懸命面倒みてあげて
:も、大人になったらなったで、すぐに一人でフイっとどっかへ行っち
:ゃうんだから」
それが息子ってもんなのかもしれない。
瑞希:「ふぅん……じゃ娘は?」
母 :「娘だって似たようなものよ。あ、そうだわあんたお酒飲むわよね」
瑞希:「飲むけど…なに?」
母 :「今年作った梅酒、持ってく?」
瑞希:「また飲みもしないのにつくってるのぉ?」
梅酒作り。母は自分では飲みもしないくせに毎年梅酒を作るのは欠かさない。
瑞希:「あるなら持ってくけど、流しの下だよね」
母 :「奥の方においてあるから」
流しの下の棚、使わない鍋やら醤油の瓶やらがごたごたとひしめいてる。奥
の方の寸胴な瓶が二つ。去年作ったものと今年作ったものだろう。
そのうち片方は半分ほど中身が減っていた。
瑞希:「よっと(持ち上げる)新しいほうだよね」
母 :「ええ、それが今年のよ」
瑞希:「ん、じゃ袋入れて持ってくね」
母 :「押し入れから袋だしとくわね」
梅酒の瓶を入れた袋を隅っこに置き、テーブルに残ったコーヒーを飲み干した。
瑞希:「おかーさん、梅酒飲んでるの?」
母 :「え?そうね、最近はちょっと寝る前にね」
瑞希:「ふぅん…じゃ、そろそろあたし帰るね。夕飯の買い物しなきゃいけ
:ないし」
母 :「ちゃんと栄養を考えて、偏らないものにするのよ」
瑞希:「はいはい、わかってるってば」
帰り道、梅酒の瓶を抱えて歩きながら。
娘が嫁にいって、息子が一人暮らしをはじめて…
それなりに寂しいんだろう。梅酒の瓶を半分空にするくらいには。
瑞希:「今度は、あたしがなんか持ってくかなー」
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切る。
うみ、ちょっとだけ実話(^^;)