[KATARIBE 13050] [WP01]:EP :『失われれしは我が想い』

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Date: Tue, 25 May 1999 23:21:26 +0900
From: ソード <so_do@trpg.net>
Subject: [KATARIBE 13050] [WP01]:EP :『失われれしは我が想い』
To: kataribe-ml@trpg.net
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こんにちは、ソードです。

不観樹さんにDMを出して、加筆してもらってから流します。



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エピソード03『失われしは我が想い』
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新宿、昼間
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 小春日和というのが似合う5月のある日。
 新入生や新入社員が常連となるのに大切なこの期間に、喫茶店
「月影」は店を閉じていた。

 直人     :「じゃあ、行って来る」
 竜也     :「うん。いってらっしゃい」
 直人     :「ああ、電話は留守電になってるから、知っている人だっ
        :たらとってもいいからね」
 竜也     :「大丈夫!俺、ちゃんと留守番出来るよ!」
 直人     :「うん。まかせた」

 年の割にはしっかりとした少年に見送られながら、店の二階から
新宿の町へと出かけてゆく。

 直人     :「……(今日こそは、見つけられるといいなぁ)」


夕暮を描く情景
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 朱理     :「もしもこの腕が………私の本当の……腕だったなら」

 口に出して、呟く。儀式めいた、呟き。
 左手をそっと添えていた右の二の腕が、ゆっくりと力を持つ。
 力無く垂れ下がっていた手首がほんのわずかだけ重力に逆らって
反り返る。指の関節がわずかに角度を取る。それだけで、手は命を
吹き返す。

 朱理     :「…………」

 そして、世界が凍り付く。朱理の右腕が生き返るその代償の様に。

 朱理     :「…………………」

 腕は、ほんの僅かだけ、微光を帯びて。
 凍り付いたまま、落ちない夕日。
 凍り付いたまま、動かない風景。

 朱理     :「…………………………」

 さっきまで力を持っていなかった掌に握られた筆が、キャンバス
に張られた画布に色素を乗せていく。
 窓の外の風景と微妙に交錯しながら、ほぼ完成に近いと見える絵
はその色合いを鮮やかに一筆ごとに変化させていく。

 朱理     :「…………………………………」

 完全な沈黙の中、朱理の腕と、絵の中の風景だけが動き続ける。

 朱理     :「?」

 どれほどの時間がたったのだろう?
 どれほどの。いや、時を止める結界の中では時間はさして意味を
持たない。

 誰かが、来ていた。


雑居ビル
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 直人     :「見つけた!」

 今日は、見つけるつもりで来ている。いつもよりも集中している
ため、見つけるのも反応も早い。

 直人     :「(この中で人に見つかるとまずいな……)」

 結界を先ほど作られた物と隣り合わせになるように張る。重ねて
作成できないことは、既に竜也と実験済みである。
 結界のそばまで行って、人目に付かないように結界内に進入する
つもりだった。

 直人     :「ここか、周りに人は……いない。よし!」

 すばやく結界を解き、一歩前へ。同時に結界の侵入を試みる。集
中的に訓練したのだ。戦闘用や、あらかじめ結界術者用に強めに張
っていない限り、簡単に入り込める。

 直人     :「侵入成功。術者はこの扉の先か……」

 そのまま入ろうとして考え直し、ノックをする。

 SE     :こんこん

 しばらくの間。内側で、僅かな反応。

 直人     :「失礼します」

 なるべく友好的に聞こえる様な声音、態度。
 そして、ゆっくりとドアを開ける。

 朱理     :「……………」

 油絵の具に随所が汚れたやや大きめのスモッグ。
 キャンバス。油絵の具の匂い。右腕に握られたままの絵筆。
 無言のまま、まっすぐ見つめ返す、強い視線。
 そして、頬に隠しきれない緊張感。

 直人     :「こんにちは、初めまして」

 緊張感を読みとる。
 扉を開けた位置から一歩も踏み出さないようにしたまま、一礼。

 朱理     :「……………初めまして。どちら様ですか?」

 じれるような、しばらくの無言の後。朱理の方から尋ね返す。

 直人     :「多分、あなたの仲間です」

 朱理     :「…………え?」

 その応えは、予想の他にあったのだろう。その意味を問う疑問符。

 直人     :「えーと、話すと長くなるんですが、今大丈夫ですか?」

 その問いに、朱理は画布と直人とを見比べる。

 朱理     :「あ………あと、もう少し………」

 まだ、納得の行く出来にはなっていない。まだ、今日の作業をお
仕舞いと言ってしまえるまでにはなっていない。

 朱理     :「そちらに座って、待っていて頂けますか?」

 背もたれのない、丸椅子を指し示す。
 直人はそれに腰掛けて、朱理が再びキャンバスに向かう様子をじ
っと観察する。

 直人     :「(あの右腕が鍵なのか?義手だけど自由に動いている……)」

 しばしの静寂。結界内には、朱理の筆を走らす音だけが聞こえる。
 油の匂いだけが、ゆっくりと満ちていく。
 永い時間かけて、何かが彼女を満足させたのだろう。
 朱理は筆を油を入れた容器の中に、静かに沈めた。

 朱理     :「で、何のご用でしょう?」

 背もたれのない椅子。それを回転させる。直人の方に向きなおる。

 直人     :「あ、終わりました?お疲れさまです。えーと、とりあえ
        :ず自己紹介しますね。月島直人といいます。喫茶店月影の
        :マスターでして、あなたと同様に、結界を張ることが可能
        :です」
 朱理     :「はい……」
 直人     :「これ、名刺です」

 名刺を渡す。朱理は、左手でそれを受け取る。僅かに緊張が走り、
消える。

 朱理     :「…………」

 朱理が、名刺の内容を読みとり終えるのを待ち、直人は話を再開
する。

 直人     :「僕は、2年ほど前に、終末の住人に目覚めました。あな
        :たは、どれくらいになるのですか?」
 朱理     :「終末の………住人?」
 直人     :「あ、僕が勝手につけたんですがね……結界を張り、災厄
        :と立ち向かえる能力者を総称して、終末の住人と呼んでい
        :るんです」
 朱理     :「災厄…………ですか?」
 直人     :「あなたは、気づいておられませんか?今年は1999年
        :ですよね」
 朱理     :「……えぇ」
 直人     :「じゃあ、去年は西暦何年でしたか?」

 朱理は口を閉ざしたまま、その問いに答える。

 直人     :「僕は、今年は2度目の1999年だと思っています。他
        :の人は違和感を覚えていないようですがね。でも、僕だけ
        :がそう思っているわけじゃない」

 朱理が同意の意味の沈黙を返す。

 直人     :「あなたは、そんな疑問を持ったことはありませんか?」

 朱理     :「何が………起こっているの?」

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 私がどこを書いたか丸分かりですね(笑)

 とりあえず、次を書こうと思いますので、しばしお待ちを……。

 では……また。


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