Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage
Date: Thu, 13 May 1999 00:51:40 +0900
From: ソード <so_do@trpg.net>
Subject: [KATARIBE 12928] [WP]EP 『訓練』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199905121541.AAA21749@ns.trpg.net>
X-Mail-Count: 12928
こんにちは、ソードです。
月影の店主と、その居候の5歳の少年の異能訓練の話です。
*********************************
エピソード 『訓練』
======================
月島直人(つきしま・なおと)
喫茶店「月影」店長。物体操作能力者。
川島竜也(かわしま・りゅうや)
月島直人の元に居候中の5歳の少年。光の女性体召還能力者。
喫茶店「月影」店内
------------------
直人 :「じゃあ、竜也、いくよ」
竜也 :「う……うん」(身構える)
喫茶店の店内は、さほど広くはない。その中で二人が数メートル離れて対峙
する。
片方はこの喫茶店の店長。白いワイシャツに紺のベストを着込んでいる。
片方は、まだ小学生にもなっていない少年。Tシャツに半ズボンという、春
には少し寒い格好だが、本人はいたって元気である。
直人 :「大切なのは、イメージだと思う。しっかりと『彼女』を
:イメージするんだ」(眼鏡を外す)
眼鏡を外してすぐに、直人の左の瞳がが銀色に変色する。よく見ればコンタ
クトレンズだという事が分かるのだが、竜也にはその違いは判別できない。
彼の「鍵」である。これから力を引き出し、このコンタクトを通してみる物
体を操作するのが、彼の能力だ。
直人 :「さあ、『出して』ごらん」
竜也 :「……」(目をつぶって集中している)
竜也の傍らに、光のもやのようなものが生まれる。しかし、はっきりとした
形状を取る事はない。
直人 :「その程度かい?自分の力で出来るのは……もっとちゃん
:と具現させるんだ」
竜也 :「く……も……もう、無理だよ……」
直人 :「そうか、かわいそうに、じゃあ、彼女はあっという間に
:消えてしまうね」
そう言うと、カウンターにあったグラスを数個投げつける。竜也の上を通り
過ぎたときに、いきなり空中で破裂した。
竜也 :「うわっ!」
直人 :「彼女は消えるよ!そんな存在感ではこの世界には長く要
:られない!」
竜也 :「やだっ!消えちゃやだっ!」
直人 :「だったらしっかり召還するんだ!彼女の全てを!」
割れたガラスの破片は、そのまま重力に引かれて竜也に降り注ぐ。それを、
光のもやが竜也に覆い被さるようにして守るが、触れた側から削り取られ、霧
散して行く。
竜也 :「いやだっ!母さん!」
直人 :「戻れ、元ある姿にっ!」(指を鳴らす)
地面に降り注いだガラスの破片が、今度は一箇所に、もやの中心に向かって
集中して行く。その動きは重力の束縛を解かれ、弾丸のごとき速さを持ってい
る。無数と思われる破片の一つ一つが、鋭い弾丸のようなのだ。一度に受けれ
ば、人間なら即死は免れない。
SE :ぱきぃぃぃん
その破片が、すべてはじかれた。別の場所でグラスへと再生している。はじ
いたのは、光の壁。竜也と彼を抱くように座っている大人の女性の形状を持っ
た光の固まりの周囲を、薄い光の壁が包んでいる。
竜也 :「かあ……さん?」
直人 :「ようやく出来たか……」
少し息をつき、ほっとしたような表情を見せる直人。
光の女性は、立ち上がり、光の壁を消す。
直人 :「竜也、まだやれるね?」
竜也 :「うん。大丈夫だよ」
直人 :「じゃあ、続きだ。とりあえずは格闘戦だね」(身構える)
竜也 :「うんっ……母さん。おねがいっ」
竜也の答えを聞いてから、間合いを詰めようとする直人。しかし、それより
も早く光の女性が動く。
直人 :「げっ」
瞬時に間合いを詰められ、動揺する直人。女性は打ち込んで来ない。
直人 :「このっ!」(右拳を彼女に向かって放つ)
竜也 :「母さんっ」
光の女性 :(そのまま前進しつつ拳を避け、直人とのすれ違いざまに
:膝を腹に叩き込む)
直人 :「速いっ?!……ぐっ……(服の再生っ……衝撃は緩和し
:きれないかっ)」
光の女性 :(膝を下ろそうとする瞬間に、前のめりになって無防備に
:なった直人の後頭部を肘で狙う)
竜也 :「あっ……母さん!ストップ!」
光の女性 :(肘を直人の後頭部の直前で止める)
光の女性は、そのまま直人の側から離れ、竜也の元に戻ってくる。
直人は、まだ前傾姿勢のままだ。骨にも内臓にも異常はないが、素人のパン
チを腹部に受けたくらいの衝撃は残っている。
竜也 :「おっちゃん、大丈夫か?」
直人 :「ああ……大丈夫だよ。まさかそんなに速く動かれるなん
:て思っても見なかったよ」
竜也 :「うん」
直人 :「服を瞬間で再生と崩壊を繰り返させて衝撃吸収したけど、
:普通だったら内臓破裂おこしてるね……」
竜也 :「うん……ごめん」
直人 :「謝る必要はないさ。手加減はこれから覚えていけば良い
:んだからね。でも、手加減が出来るまでは、普通の人に使っ
:ちゃだめだよ」
竜也 :「うん。大丈夫」
直人 :「さて、次の訓練にいこうか。さすがに僕が相手をすると
:もたないから、グラスを使おう」(グラスをカウンターに
:3つ並べる)
竜也 :「どうすれば良いの?」
直人 :「この位置から、この前出してた光弾であれを狙うんだ」
竜也 :「うん!分かった!」
光の女性 :(右手をカウンターの方に向け、竜也を見る)
竜也 :「うん……行くよっ」
光の女性 :(野球ボールくらいの光弾を3つ発射)
直人 :「でかいっ!」
彼女の放った光弾は、正確に3つのグラスに命中した。そのまま貫通し、背
後の棚に命中する。棚を崩壊しつつ、壁を貫いて爆発、店の半分を吹き飛ばし
た。
竜也 :「あ……」
光の女性 :(困った顔で竜也を見る)
直人 :「あらら。全く、ここが結界内じゃなかったら、大惨事に
:なる所だよ」
竜也 :「うん……ごめんなさい」
直人 :「まあ、そのための結界だけどね。でも、本当に使い方を
:間違えちゃだめだよ」
竜也 :「うん。もっと練習しなくちゃいけないね」
直人 :「今日はもう終わろう。そろそろ店も開けないといけない
:しね」
竜也 :「うん」
直人 :「じゃあ、結界を解くから、さよならしなさい」(眼鏡を
:かける)
竜也 :「あ……」(光の女性を見る)
光の女性 :(竜也に微笑むと、勝手に消えてゆく)
竜也 :「……またねっ!」
光の女性は消え、直人の左目の色も元に戻る。
直人 :「さて、最後の練習だ。僕の張った結界を解いてごらん」
竜也 :「え……」
直人 :「そんなに強く張ってないから、簡単だと思う」
竜也 :「うん」(目をつぶって集中を始める)
しばらくすると、外の雑踏が戻ってきた。破壊された店も元どおりになっている。
無事、結界が解かれたのだ。
竜也 :「ふうぅぅ」
直人 :「お疲れさま。よくがんばったね。じゃあ、お昼ご飯にし
:ようか」
竜也 :「うん!」
直人 :「じゃあ、特別にハンバーグでも作るかな」
竜也 :「うん!」
直人 :「玉ねぎも、たっぷり入れるからね」
竜也 :「え゛……」
直人 :「好き嫌いしちゃ、大きくなれないぞ。あと、僕の事は
:『お兄ちゃん』と呼ぶように」
竜也 :「うぅ……根に持ってる……」
直人 :「そんな事はないさ、君のためを思ってのことだよ」
そう言いながら、玉ねぎを切り出す直人。
竜也の目に光る涙は、玉ねぎのせいといえば、そうなのであろう。
月影の開店までは、あと数十分ある。
*************************************
{
〔-------------}〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜\
〔-------------}〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜/
{
Email so_do@trpg.net
name k.ohtsuka
:
/--------------------------------------:∨∨∨∨∨∨∨)
/========================================:∧∧∧∧∧∧∧)
: