[KATARIBE 12801] [HA06][EP] 「夢渡り〜風糸」

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Date: Mon, 26 Apr 1999 20:16:05 +0900
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 12801] [HA06][EP] 「夢渡り〜風糸」 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199904261116.UAA19912@www.mahoroba.ne.jp>
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99年04月26日:20時16分02秒
Sub:[HA06][EP]「夢渡り〜風糸」:
From:E.R
こんにちは、E.Rです。
週末一杯、そして今日にかけて、頭の中でエンドレス状態の、この曲を使って。

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EP「夢渡り〜風糸」
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 某日、昼休み。
 朝から降っていた雨が止んで、少し日の射してくる……

 祐司    :「……(欠伸)」

 昨日、一昨日と良く眠った筈なのだが……

 祐司    :(眠りすぎ、か……)

 論文は、詰めの段階までいっている。
 いっては、いるのだが………………

 祐司    :(最後の一歩が、なあ……)

 切羽詰っているだけに、夢にまで論文内容が出てくる始末である。
 溜息をつくしかない、状況では、ある。

 溜息をつく……………
 
 ……………………
 ……………
 ……


 祐司    :「?」

 穏やかな、波の音。潮の香り。
 その割に、奇妙にさらさらとした風の手触り。
 まだ少し、灰色がかった淡い蒼の空。
 人気の無い、不思議に明るい灰色を重ねた、街。
 
 ぱたぱた、と、足音。

 祐司    :「っと」
 少女    :「わあっ」

 角から飛び出してきた子供と正面衝突しかけたのを、慌てて支えてやる。
 五、六歳くらいの、ようやっと「幼女」から「少女」になりかかった子供。
 紺のワンピースと、黒い靴。

 少女    :「あ、すみませんっ」
 祐司    :「いや……」
 
 ぺこん、と元気良く頭を下げる。
 少し長めのおかっぱの髪が、はずみでぱさんと揺れた。
 
 少女    :「あの、こっちに電車来ませんでした?」
 祐司    :「電車?」
 少女    :「はいっ」
 祐司    :「さあ……見なかったね」
 少女    :「はあ…………(ちょっとしょんぼり)」

 改めて辺りを見まわすが、電車らしいものは、ない。
 そも、レールも何も見えてこない。

 少女    :「あの、そしたら……海、どっちか、ごぞんじですか?(にこにこ)」
 祐司    :「海……」

 波の音を追いかける。

 祐司    :「こっち、かなあ……」
 少女    :「こっち、ですね」

 ありがとうございますっ、と、また一つ礼をしてから、少女はぱたぱたと駆けて行く。
 何となく祐司もついて行く。

 と。
 不意に、ぽかりと左右が広がった。
 やはり明るい灰色のコンクリートの地面が、ひろびろと広がったまま、海へと突き出している。
 その向こうに。

 少女    :「あ、あった(嬉々)」
 祐司    :「……(汗)」

 緋色の帆は、けれども光に透けるほど薄く、海からの風に翻っている。
 それを掲げているのは……

 祐司    :(……摩天楼……まではいかんかもしれんが(汗))

 やはりどこか明るい色合いの、灰色の……
 窓硝子に、一面のあおが映っている。

 少女    :「よーし……あ、栢々君!」
 
 少女の高い声に応ずるように、ちゃぷん、と波が一つ跳ねる。
 緋の色と、蒼の色。そのどちらにも染まることの無い、白い……

 祐司    :「鯨?(汗)」

 呟いた祐司の横を、風が細い筋になって過ぎて行く。
 透明の、細い鋼を思わせる風の束。
 見えぬ筈のその風の束を、少女の手が掴む。
 それを、くるりと手に巻いて。

 と、たん、と、黒い靴が、軽い音を立てて。
 そのまま少女の体が、宙に飛ぶ。

 祐司    :「あ……危ないっ!」
 少女    :「大丈夫、ですっ(にこにこ)」

 くるり、と、まるで風が巻き付くように、少女の身体が祐司の頭上でさかしまになって。
 と。

 少女    :「…………あ、わかった!(ぽむ)」
 
 手を一つ打って。

 少女    :「堀川さんだ!」
 祐司    :「そうやけど?」
 少女    :「ああ、だから知ってたんだあ……あ、そうだ!」

 この少女を見たことがあるか……いや、ない。
 改めて記憶をひっくり返して、確認している祐司の頭上で、少女はまたくるり、と向きを変えた。

 少女    :「あの!『吹利史』、ありましたから!」
 祐司    :「吹利史?!」
 少女    :「探してらっしゃいましたよね?」
 
 不意に、一つの顔を思い出す。
 印象はそのまま、ただ、年を経た……
 少女はそのままどんどんと海のほうへと吹き飛ばされてゆく。

 少女    :「あのっ!兄が持て余してますから…………に……」

 ………………

 すとんっ。

 祐司    :「は?」

 がくん、と、手が滑ったはずみで目が醒めて……
 
 祐司    :「あ、夢か(汗)」

 時計を見る。まださほどの時間は過ぎてはいない。
 ……が。

 祐司    :「…………正夢?」

 もう一度時間を見、今日の予定を確認する。
 
 祐司    :「行ってみようか……瑞鶴」


 で、一方の瑞鶴では。

 店長    :「……おーまえはっ!」
 花澄    :「だからってそんな、殴らなくってもっ!」
 店長    :「レジの前で寝てる奴がいるかっ!」

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 てなもんで。
 そう。
 謎の『吹利史』……
 あれが、まだ、あるのです。

 いあ、恐らく店長としては、美都さんのことやらなんやらで読みたいところでしょうけど、
人様の頼んだ本ですから、まだ、「焦げたところを確認」くらいしかしてないと
思います。

 BGMは、「風をあつめて/矢野顕子」ですー。

 であであっ。  




    

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