[KATARIBE 12557] [HA06]:EP: 「過去無き魂」翌日朝2

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Date: Thu, 8 Apr 1999 14:36:12 +0900
From: ソード  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 12557] [HA06]:EP: 「過去無き魂」翌日朝2 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199904080536.OAA20723@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 12557

99年04月08日:14時36分09秒
Sub:[HA06]:EP:「過去無き魂」翌日朝2:
From:ソード
こんにちは、ソードです。

とりあえずでバリバリ進めます。

「木蓮賦」を美都から見てみました。丸々カットでもつながるのですが、
入れたほうがいいのかなぁ……?

********************

> 英一     :「美都さん」 
> 美都     :「……はい」 

 食卓に、緊張が走る。美都も、これからの事を考え、若干の不安を表情に出
す。

 英一     :「これからのことだが……」
 美都     :「あれ?ここに置いてくださるんじゃないんですか?」
 英一     :「年頃の娘さんを、男の一人暮らしの家に置いとくわけに
        :はいかない」
 美都     :「……」
 英一     :「さほど危険が無いと判断した。小滝さんのところでも、
        :安全だと思う」
 美都     :「あの人のところだったら、英一さんは安心ですか?」
 英一     :「……まあね」
 美都     :「うー……わかりました」
 英一     :「納得いっていないようだね」
 美都     :「だってー。せっかく一緒に暮らせると思ったのに……
        :(にこっ)」
 英一     :「……」

 甘えるようないたずらっ子のような瞳をなげ、にこりと笑う。英一は、一瞬
言葉に詰まった。

 美都     :「なーんて、ね。そうだ!お布団片づけて来ます」(立ち
        :上がり、寝室へ向かう)
 紫苑     :「にゃ〜(とてとて)」(後について行く)
 花澄     :「かわいいこね(くすくす)」
 英一     :「……頭痛が……」
 花澄     :「飲みすぎよ(くすくす)」

 SE     :どさっ(隣の部屋より)

 花澄     :「なに?」
 英一     :「なんだ?」
 花澄     :「……大丈夫みたい」
 英一     :「そうか……」

 兄は、妹の情報に信頼をおいている。彼女が大丈夫というなら、大丈夫だろう。
 兄妹は、そのまま居間でお茶を飲んでいた。

寝室
----

 SE     :どさっ

 美都は、敷いてある布団にそのままうつ伏せに倒れ込む。顔はそのまま枕にうずめる。
 
 美都     :「……っ」

 声は、出さない。目からあふれる涙は、そのまま枕が吸い取り、頬をぬらすことはない。

 紫苑     :「にあ……(美都……)」
 美都     :「……」

 今、声は出せない。出せば、涙声であろうから。口を開かず、ただ、耐える。
喉の奥が、無意味な抵抗に拒否を示し、痛みを訴える。

 紫苑     :「……(ぺろぺろ)」
 美都     :「(紫苑ちゃん……)」(なでなで)

 頬をなめる舌が、手に触れる毛並みが。喉の痛みを和らげてくれた。最初か
ら傍らにいた。常に側にいた。素性の知れない、神秘的な猫。

 紫苑     :「にあ……(美都……)」
 美都     :「うん……大丈夫だよ。ありがと、紫苑ちゃん。だめだね、
        :涙もろくって……(苦笑)」
 紫苑     :「……(じー)」
 美都     :「あの人には、涙を見せないって決めたの。もっと、強く
        :ならなくちゃね」
 紫苑     :「(ぺろぺろ)」
 美都     :「(きゅっ)……さて、本当にお片づけしなくちゃ」


瑞鶴、玄関
----------

 花澄     :「じゃあ、私が店番してるから、酔い覚ましに散歩がてら
        :いってらっしゃい」
 英一     :「ああ」
 美都     :「じゃあ、花澄さん、本当にお世話になりました」
 花澄     :「ええ、私、何時もここにいるから、また来てくださいね」
 美都     :「はいっ」
 英一     :「じゃあ、行こうか……」
 美都     :「はい」

 そう言って、もう一度最後に瑞鶴を見上げる。昨夜来たときはすでに闇夜だっ
たからか、のしかかるような雰囲気があったが、朝日の下でそれはない。
 美都は、もう一度ぺこりとお辞儀をし、そのままくるりと背を向ける。もう、
振り返らないと、心に決めた。

 グリーングラスへの道。特に会話もなく歩く。美都の行く位置は、わずかに英一の背中が見える隣。

 英一     :「あ」(振り仰いで立ち止まる)
 美都     :「……あの?」
 英一     :「あ、悪い」
 美都     :「いえ」(英一の見ているほうを仰ぐ)

 見上げた先には、光を慕うように咲く、白い花。

 美都     :「(知らない花だ……きれいだな)」
 英一     :(見上げたままたたずんでいる)
 美都     :「何の花ですか?」
 英一     :「木蓮」
 美都     :「お好き、なんですか?」
 英一     :「うん」
 美都     :「(へえ……もくれん……か)」
 英一     :「隙だらけだからほっとする」 
 美都     :「ほっとする?」 

 彼は今、何を思っているのだろうか?美都には、彼の気持ちを見透かす術は
ない。もしかしたら、自分と同じように、居場所を探しているのかも……ふと、
そう思う。

 英一     :「……パラソルを振れば、中原中也か」 
 美都     :「はい?」 
 英一     :「いや……」 
 美都     :「……(パラソル?なんだろ?)」

 その知識は、記憶喪失の彼女には存在しない。存在しないものは、思い出し
もしないのだ。考えても無駄である。

 英一     :「……って、悪い。小滝さんが待ってる」 
 美都     :「……はい」

 二人は、再び歩き出した。英一は前を見て、美都は、その英一の背中を横目
でとらえながら。

********************

 時系列的には、あとはグリーングラスに到着するだけです。

 あとちょっとだ……がんばろう。

 修正、加筆お願いします。
 IRCや1行で指示くだされば、随時修正いたします。

 では……また。







    

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