[KATARIBE 12516] HA06 : EP :「過去無き魂」深夜

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Date: Tue, 6 Apr 1999 21:57:04 +0900
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 12516] HA06 : EP :「過去無き魂」深夜 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199904061257.VAA09810@www.mahoroba.ne.jp>
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99年04月06日:21時56分59秒
Sub:HA06:EP:「過去無き魂」深夜:
From:E.R
こんにちは、E.Rです。
ソードさん、こんにちは。

> いちおう、美都を紫苑さんに渡した後、酒を飲む平塚兄弟を想定しています。
> その場面はE.Rさんにお願いしても良いでしょうか?

 とありましたので、そこんとこ。

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 柳に風(深夜、台所)
 -------
 
 襖が閉まる音がしてから、英一は台所に戻った。

 台所の棚から、黒い、丸っこい瓶を一つ取り出す。
 ついでに、隣に並んでいるグラスを一つ引っ張り出す。
 冷凍庫から氷をグラスに受ける。
 からん、と、ひどく乾いた音に聞こえた。

 英一     :「…………」

 黙ったまま、グラスの半分まで瓶の中身を注ぐ。
 強い匂いが一瞬こぼれる。

 と。

 花澄     :「お相伴していい?」
 英一     :「!?」

 不意をつかれて、英一の右肩が大きく跳ねる。傾きを保ったままの瓶から
危ういところで酒がこぼれ出すのを、慌てて彼は止めた。

 英一     :「おまいはっ」
 花澄     :「(小声で)美都さん起きるわよ」
 英一     :「…………(憮然)」

 黙ったまま、英一が瓶を左右に振る。心得て花澄がもう一つグラスを出し、
氷を落しこむ。
 半分まで琥珀色の液体が注がれたグラスを持って、兄妹は座り込んだ。
 
 英一     :「……起きてたのか」
 花澄     :「それは、起きるわよ」
 英一     :「…………聞いてたのか」
 花澄     :「聞こえてきたわね」

 はあ、と一つ溜息をついて、英一がグラスを一息に干す。
 それよりは流石にゆっくりとしたスピードで、花澄がグラスに口をつける。

 英一     :「で、お前どう思う?」
 花澄     :「美都さん?かわいいなあって」
 英一     :「……………………誰がそういうことを聞いとる」
 花澄     :「じゃ、何」
 英一     :「奥六郡郷土史保存協会……美都さんは、まだ狙われるか?」
 花澄     :「……と、思ってるみたいだけど」
 英一     :「危険か」
 花澄     :「今日程度のことは、あるかもね」

 一つ溜息をついて、英一がまたグラスに酒を注ぐ。

 花澄     :「でも、そういうのって、変だと思うし……そも、国津神がそれを
        :望んでいるとも思わない」
 英一     :「?」
 花澄     :「だって、卑しくも神と呼ばれた存在よ?呼ばれるからには……そして今に
        :至るまで復活させようとする人間が居るような存在よ?人にとって
        :少なくとも害になることを進んでやるかしら」
 英一     :「美都さんが、敵方の神の手先、くらいに思われたとしたら」
 花澄     :「それにしても。矢一本で傷つく存在を、恐れるわけないでしょ」
 英一     :「単純明快にして根拠皆無」
 花澄     :「……放っといて(憮然)」

 グラスをゆるりと空にしてから、花澄がテーブルにひじをついて身を乗り出した。

 花澄     :「……どうするの?美都さんのこと」
 英一     :「危険が無いなら……小滝さんの御好意に甘えたほうがいいな。ここは
        :基本として俺一人だから」
 花澄     :「そうじゃなくって」
 英一     :「じゃ、何だ」

 不機嫌そうな物言いに、くすり、と花澄は笑った。

 花澄     :「……頼って良いとは、言わないんだね、お兄ちゃんも」
 英一     :「………………」

 『私……頼っても……良いんですか?』

 頼りない声に、けれども良い、とは答えられない。
 裏切るのを、知っているから。
 頼られることに、いつも答えられるとは言いきれないから。
 人の心は移ろいやすいものであると、身に染みて知ってしまっているから。

 英一     :「……俺の役目じゃない」
 花澄     :「それは、美都さんが決めるこ」
 英一     :「くどい」

 花澄が口をつぐむ。
 英一はグラスを空にする。
 
 『私にだって、甘えたいときもあるんですよ……』

 甘えられてもどうしようもない、と、既に知っている筈であるのに。
 それを……どこかでもどかしく思う自分がいる。
 もどかしく思うことすら、僭越であると……既に知っていた筈ではなかったか。

 記憶が無い、という。
 その不安は、察するに余りある。
 多分……敵ではない、と、判断したところの相手に、甘えてしまうほどに。

 英一     :「……可哀想に」

 静かに、感情をすりかえる。得体の知れないものから、得体の知れた感情へと。
 
 花澄     :「……お兄ちゃん、呑みすぎ」
 英一     :「……まだ酔わない」
 花澄     :「明日、後悔するわよ」
 英一     :「したところで己のことだろ」
 
 一つ溜息をついて、花澄はふと真顔になった。

 花澄     :「お兄ちゃん、いいのね?」

 何が、と問い返しかけて、莫迦らしくなって口を閉じた。
 そのまま、黙ってまたグラスを空ける。
 一面霞がかかる中、けれどもどこか一点、ひどく醒めているような……

 英一はまた、瓶を傾けた。
 
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 てなもんで。

 ううむ……兄ちゃんって(汗)
 #多くを語らず(爆)

 で、そのまま適当に飲んで、で……まあそのうち眠るでしょう(笑)

 ではでは。




    

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